「世界一流エンジニアの思考法」の感想
「世界一流エンジニアの思考法」を読んでみた。
気づきをラフなメモ書き。
【1】試行錯誤は悪であること。
本番障害の原因調査でも、手当たり次第、ログから調べて探すのは生産性が悪い。
事実から仮説を1つずつ立てて、その仮説を1つずつ検証して可能性を潰していく。
試行錯誤が良くない理由は、後で得られる経験知がないからだ。
やみくもにモグラ叩きのように潰して、ああ終わったというだけ。
障害解決した一つの経験が後で活用できない。
事実から推測して、起きそうな仮説を複数パターンで立ててみる。
そこから1つずつ潰していくことで、自分のロジックを検証していることにもなる。
どこに原因があったのか、後で振り返るときにも役立つ。
すぐに手を動かさない。まず仮説を立ててアプローチを選択して一つずつ動かす。
分かっていれば当たり前なのだろうが、納期に迫られて焦っているときほど忘れやすい気はする。
【2】コードリーディングのコツは極力コードを読まないこと。
すべての実装ロジックを理解しようとすると、脳みそのメモリが浪費されて余裕がなくなる。
空きメモリがなくなる。
動くものと仮定して、中身のロジックよりも、インターフェイスの役割やパラメータを調べて、関係性や動作を構造化することに注力する。
全体像を把握することと同じだろう。
この辺りは、コンポーネント図やシーケンス図、ステートマシン図、クラス図などを書きながら、構造を理解する方法もあるだろう。
コードリーディングは重要だが、いかに自分の脳みその負担を減らすか、に注力する。
自分にとって難しすぎると感じるときは、脳の使い方が間違っているというメッセージになる。
頑張る人、完璧主義の人、焦っている人ほど、脳みその空き容量がなく、脳みそを有効活用できていない。
そういうマインドセットを持つことも大事だと思う。
【3】日本独特の批判文化はソフトウェア開発と相性が悪いこと。
日本人は完璧主義すぎて、機能の網羅性や機能の品質を重視しすぎるために、ソフトウェアを漸進的に開発して品質を改善するやり方に馴染めていない。
最初に出したバージョンからソフトウェアに完璧を求める。
日本人は責任の所在や完璧を過剰に求めることで、開発者の心を砕いてしまう。
ソフトウェア開発者が先陣を切って何かにトライする行動に足かせを作らせる。
嫉妬、批判、冷笑、嘲笑が新しいことへのチャレンジ精神を阻害する。
人に何かを期待するのではなく、まず自分がどういう貢献ができるかという公共性をベースに考える。
これにより、互いにありがとうという感謝の精神が生まれる。
しかし、日本では理不尽なカスタマーハラスメントが起こりやすい潜在的な土壌が多い。
つまり、日本ではアジャイルなソフトウェア開発をやりにくい精神的土壌がたぶんあるのだろう。
従来からずっと言われているように、日本でソフトウェア開発がなかなか上手くいかない理由の一つは、国民性や文化的な側面もかなりあるのかもしれない。
また、日本の産業界ではハードウェア文化が強すぎて、ソフトウェアを甘く見てきている節もある。
どうしてもプログラマよりもマネージャ職の方が待遇面もキャリアも良いように制度も文化も作られてきた。
よって、アジャイル開発のように、現場の開発チームのメンバーが自分で実際に作って動かして、ソフトウェアを使って組織や世界を変えていくという方向性を実現しづらい。
現代のイノベーションは素人が集まっても作れるわけではなく、技術やクリエイティビティを持つ専門家集団がリードする必要があるだろう。
マイナンバーカードやデジタル庁、標準の公共システム開発にしても、色々頑張ろうとしているが、乗り越えるべきハードルは大きい。
【4】牛尾さんの本は過去にもたくさん読んできたが、「世界一流エンジニアの思考法」も同様に、文章は丁寧で読みやすく、内容は新たな価値に気づかせてくれる内容が多い。
アジャイル開発に慣れていれば当たり前の話だろうが、日本人がこれから乗り越えるべきハードルが書かれているので、非常に示唆に富む本ではないかと思う。
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