« 製造業のDXを推進する部門をITコーポレート部門に割り当てるとなぜ失敗するのか | トップページ | 製造業におけるPLM製品とMES製品の違いは何か? »

2026/02/07

日本の半導体産業はなぜ凋落したのか

日本の半導体産業はなぜ凋落したのか?
エヌビディア 半導体の覇者が作り出す2040年の世界を読んで理解できた。

【参考】
エヌビディア 半導体の覇者が作り出す2040年の世界 | 津田 建二 |本 | 通販 | Amazon

教養としての「半導体」 | 菊地 正典 |本 | 通販 | Amazon

図解即戦力 半導体プロセスのしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書 | 先端テクノロジー業界研究同好会 |本 | 通販 | Amazon

Amazon.co.jp: 電子立国は、なぜ凋落したか : 西村 吉雄: 本

「電子立国は、なぜ凋落したか」の感想~日本の技術者は減価償却のコスト意識が低い: プログラマの思索

これでよいのか?日本の半導体市場シェアが単調下落し続けついに5%台まで下落 - セミコンポータル

【0】日本の半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性は、経済産業省の下記レポートが分かりやすい。

第14回 半導体・デジタル産業戦略検討会議 (METI/経済産業省)


半導体・デジタル産業戦略の現状と今後


【1】半導体は2026年の今、製造業の中で最重要な製品になる。
半導体があるから、スマホ、PC、自動車、家電製品、制御装置など、ありとあらゆる製造物には半導体が埋め込まれている。
半導体があれば、プログラム制御できるし、プログラムを自由に書き換えることにより、高機能化しやすい。
さらに、現代では、AIがGPUを大量に消費するので、半導体の重要性はさらに高まっている。
特に、AIデータセンター建築のために、半導体を浪費しまくっている。
そのために2026年後半から半導体不足に陥る予想が出ているほどだ。

【2】1980年代の日本は家電立国だった。
半導体のシェアは、日本が殆どを占めていた。
しかし、90年代から右肩下がりとなり、今やシェアは5%くらいに過ぎない。
米国はもちろん、台湾、韓国、中国に圧倒的に負けている。

日本の半導体業界の技術者は優秀だ。
僕も優れた知り合いを知っている。
実際、東芝、NEC、日立など。
フラッシュメモリを生み出したのも東芝だった。
しかし、2026年の日本では、ルネサスとか、TSMCやサムスンに比べるとあまりパッとしない企業しか存在しない。

【3】なぜ、日本の半導体産業は凋落したのか?

エヌビディア 半導体の覇者が作り出す2040年の世界では、こんなストーリーだ。

家電メーカーの経営者が半導体業界の環境変化を認識できず、事業戦略を間違えた。
家電メーカーは、白物家電、公共インフラ、車載機器、半導体などたくさんの事業部門を抱えているので、どの事業に注力すべきか、選択と集中がやりにくいし、カニバリゼーションになりやすい。
図体だけ大きくて、意思決定も遅い。
欧米の独裁者のようなCEO、中国韓国のアジア圏にいる家父長制のCEOに比べて、経営者の意思決定が遅すぎる。

【4】半導体製造は元々、日本の家電メーカーが垂直統合でやってきた。
しかし、90年代以降、設計や露光・エッチング・洗浄などの製造、品質評価など後工程のように、各工程ごとにバラバラに水平分業のサプライチェーンに変わった。

なぜ、半導体製造は垂直統合から水平分業に変わったのか?
理由は簡単だ。
半導体製造の設備投資額は膨大なので、1社がすべての工程を抱えることはほぼ不可能になったからだ。
ポーカーゲームのような賭金で設備投資をどんどん積み上げていくスピードについていけなかった

つまり、設計だけ行うファブレス、TSMCのような製造を行ってに引き受けるファウンドリ、後工程だけを請け負う専業メーカーに細かく分かれて、一つのサプライチェーンをなす構造に業界そのものが急激に変化した。
この環境変化に結局、日本の家電メーカーは追随できなかった。

【5】また、各工程ごとに半導体製造装置を納入する製造装置メーカー、原材料や特殊薬品を納入する化学用品メーカーが多数あり、それらメーカーの規模もかなり大きい。
つまり、半導体製造業界は、非常に専門化されて分業化された流通構造、サプライチェーンを形成している。

今の日本企業は、半導体製造や設計は弱いが、特定の工程に特化した半導体製造装置メーカーや化学用品メーカーは、その工程ではシェアが高いケースが多い。
結局、iPhone製造のサプライチェーンにおける日本企業の立ち位置と同じように、一品物の専門製造メーカーのみ生き残っている感じだ。

【6】さらに、日本の半導体メーカーは、歩溜まり向上に囚われすぎて、出荷スピード感がない。
日本の半導体メーカーは、半導体製造装置メーカーから納入された製造装置を生産ラインで稼働させて正常動作するまで検収を続けて、歩溜まりが上がるまで検収完了とせず、支払いを半年以上待たされたという。
つまり、納入して検収が終わるまでの半年間も、日本の半導体メーカーは半導体製造装置メーカーにお金を支払わなかったのだ。
こんな状況では、日本の半導体製造装置メーカーも資金繰りが悪くなり、やってられない。

一方、台湾や韓国の半導体メーカーは、半導体製造装置の納入時に7~8割は前払いし、生産ラインで実稼働させながら、歩溜まりを向上させて、どんどん売上を増やす施策を取った。
半導体製造装置は1台数億円もする装置なので、非常に高価であるが、彼らはそれらを使い捨てにしてでも、早く元を取るために、減価償却の期間を短くする施策を取ったわけだ。

この事象は、「電子立国は、なぜ凋落したか」の感想~日本の技術者は減価償却のコスト意識が低い: プログラマの思索に書いたし、Amazon.co.jp: 電子立国は、なぜ凋落したか : 西村 吉雄: 本に詳しく書かれている。

【7】さらに、日本の半導体メーカーは、半導体の設計製造に関わる優秀なエンジニアを大切にしなかった。
技術者ならば常に最先端の技術を追いかけたいのに、日本の半導体メーカーは、彼らのモチベーションを下げるような施策をやっていた。
なぜなのか?

たぶん、半導体製造の設備投資は非常に膨大であり、シリコンサイクルと言われる好況不況の波が激しいので、いつもリスクを取れるわけではない。
よって、日本の半導体メーカーは、自分たちの身の丈に会う程度で設備投資できる範囲内で、半導体事業をコントロールしたかったからではないか。
しかし、それは裏目になったと言えるだろう。

だから、「電子立国は、なぜ凋落したか」の感想~日本の技術者は減価償却のコスト意識が低い: プログラマの思索に書いたし、Amazon.co.jp: 電子立国は、なぜ凋落したか : 西村 吉雄: 本にもあるように、優秀な半導体エンジニアは、日本メーカーを退職して韓国、台湾企業へ転職したり、土日にアルバイト出張して、技術流出させていた。
そんな事象を見ると、日本の半導体メーカーはもちろん、日本の製造メーカーは、エンジニアを育てる環境を作っていないなと思ってしまう。

【6】半導体は、現代では全ての製造業の基盤だ。
AIブームにより、半導体の設計製造の重要性は非常に高まっている。
しかも、昨今の中国・米国の政治的対立を見れば、半導体の重要性はさらに高まっていると言えるだろう。

日本がどのような施策を取って挽回していくのか、探ってみたいと思う。

|

« 製造業のDXを推進する部門をITコーポレート部門に割り当てるとなぜ失敗するのか | トップページ | 製造業におけるPLM製品とMES製品の違いは何か? »

ビジネス・歴史・経営・法律」カテゴリの記事

経済学・ERP・財務会計」カテゴリの記事

製造業」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 製造業のDXを推進する部門をITコーポレート部門に割り当てるとなぜ失敗するのか | トップページ | 製造業におけるPLM製品とMES製品の違いは何か? »