すり合わせの優位性は健在か?日本の製造業が直面するPLM活用とMBSEソフトウェア運用の理想と現実
石油危機は再び日本の自動車産業を塗り替えるのか。
現場で感じた「すり合わせ」の限界、PLMによる設計資産のデジタル化、そしてMBSE導入に立ちはだかる高価な壁。製造業DXの理想と過酷な現実を深く考察してみる。
【参考】
Xユーザーのブルームバーグニュースさん: 「石油危機が自動車市場を変える、かつての勝ち組日本車劣勢 https://t.co/NoIbkcR5k0」 / X
PLMツールとは部品表の構成管理ツールでありGitHubである: プログラマの思索
いまこそ知りたいDX戦略 自社のコアを再定義し、デジタル化する
図解 DX時代のPLM/BOMプロセス改善入門 デジタル化 段階別課題解決のアイデア100 | 三河 進 |本 | 通販 | Amazon
システムズエンジニアリングに基づく製品開発の実践的アプローチ
システムズエンジニアリングの探求 | ジョン・ホルト, Jon Holt, 伊藤 侑太郎, 河野 文昭 |本 | 通販 | Amazon
システムズエンジニアリングハンドブック 第5版 | デイビッド・D・ウォルデン, 西村秀和 |本 | 通販 | Amazon
実践に活かす モデルベースシステムズエンジニアリングの基礎 | 西村 秀和, 西村 秀和, 河野 文昭 |本 | 通販 | Amazon
5つの問題解決パターンから学ぶ実践メソッド BOM(部品表)再構築の技術 | 三河 進 |本 | 通販 | Amazon
BOM/部品表入門: マテリアル・マネジメント改革の基本技術 (図解でわかる生産の実務) | 佐藤 知一, 山崎 誠 |本 | 通販 | Amazon
【1】50年前の石油危機が日本の低燃費自動車普及のきっかけと同様に、今回の石油危機がEV化、SDVを加速させるだろう。
日本メーカーはITに弱いのでこの波に乗れないように見えるのが辛い。
Xユーザーのブルームバーグニュースさん: 「石油危機が自動車市場を変える、かつての勝ち組日本車劣勢 https://t.co/NoIbkcR5k0」 / X

【2】日本の製造業の現場を1年ほど見てきて、疑問に思う点は2つある。
【3】1つ目は、日本の製造業が得意とする「すり合わせ」とは一体何だろうか?
現代では「すり合わせ」の技術に優位性はあるのか?
50年前なら、ソフトウェアはハードのおまけであり、ハードウェアのすり合わせ技術が品質保証に繋がっていたのだろう。
しかし、現代では、自動車であれ、機械製品であれ、部品点数は数万点、10万点以上に及ぶ。
そんな大量の部品を組み合わせて量産するのは、人間の脳みそによる管理限界を超えている。
また、市場環境の変化、国際政治の変化によるサプライチェーンへの影響により、次から次へと多品種少量生産を強いられる。
そんな状況で、すり合わせをいちいち実施していて、環境変化の速度についていけるのだろうか?
「すり合わせ」の優位性は今でもあるのか、正直疑問に思う。
【4】もう一つは、日本の製造業のDX戦略のあるべき姿はどこにあるのか?
いまこそ知りたいDX戦略 自社のコアを再定義し、デジタル化するでは、DX成熟度というべき段階レベルがある。
具体的には、DX成熟度には、デジタル化→デジタル改革→デジタル変革 の3つがある。
現在、日本の製造業のDX成熟度は、まだデジタル化の段階にある。
彼らの現場では、職人技術者の頭にノウハウが染み付いていて、OJTという名で技能継承してきた。
いまだに2D-CADが主流であり、つい最近まで紙ベースの製図が割とあった。
製品設計図がデジタル化されていると言っても、Excelやパワポで散在していて、一元管理もできていない。
だからこそ、PLMツールを使って、製品設計図をデジタル化して一元管理しようと試みている企業が多い。
この流れは正しい道筋と思う。
しかし、彼ら日本の製造業は、今後、デジタル化された資産をどのように戦略策定に使おうとしているのか?
本来は、PLMツールに格納された設計資産を、FMEAのような品質保証と結びつけたり、見積もりや原価計算などのコスト管理に結びつけたり、MESやERPを連携させて工程管理で使うことで、設計工程や製造工程の業務プロセスを改善したい。
だが、日本の製造業の設計・製造プロセスは過去の長い歴史の経緯もあって、非常に複雑で例外フローが多く、属人的なフローが多すぎる。
まずは整理整頓する段階で留まっている。
PLMツールとは部品表の構成管理ツールでありGitHubであるならば、設計資産を有効活用して、QCD向上につながる業務プロセス改革に使いたい。
そういう戦略策定が必要になるだろう。
今は試行錯誤しているように見える。
【5】PLMツールで設計資産を一元管理できたとして、MBSEとどのように関係づけて、より高度な製品開発にもっていくか、という課題もある。
実際の物理構造である設計図面ではなく、論理的なあるべき機能からモデルを構成して、モデルベースで製品開発していくべき。
それがMBSEになろうだろう。
【6】しかし、僕は、MBSEは巷で言われているように本当に有効なのか、疑問に思っている。
理由はいくつかある。
1つ目は、新製品開発の期間が短く、多品種少量生産を強いられる環境の中で、いちいちモデルを新規作成するのは、時間もコストも掛かりすぎる。
せっかく作ったモデルもすぐに陳腐化しやすい。
また、一度作成したモデルも、設計後に量産化する前の検証段階で、何度も手が加えられて変更される。
つまり、モデルの構成管理が必要になる。
しかし、モデル作成専用のソフトウェアがなければ、構成管理は難しいだろう。
たいてい、MBSE専用のソフトウェアは非常に高価であり、大量の設計者が同時使用できる代物ではない。
モデル作成のコスト、モデルの構成管理のコストは、想像以上に高く、ハードルが高い。
MBSEソフトウェアとして、カメオシリーズが有名。
Cameo Systems Modeler | カメオ システムズ モデラー | SysMLモデリングツール | アイコクアルファ株式会社
【7】2つ目は、モデルを作成できたとして、何が嬉しいのか、効果が見えづらいことだ。
確かに、論理的なモデルにより、ハードウェアの制約や過去開発の思い込みをゼロベースから検討できるのはメリットの一つだが、それだけでは弱すぎる。
僕の直感では、ハードで実現した試作品を作る前に、MBSEで作成したモデルをソフトウェア上で何度もシミュレーションで何度でも検証できることが最大のメリットではないか、と考える。
なぜならば、ハードの試作品を作っては検証して、何度も作り直すのは、仕損費が膨れ上がり、設計コストが耐えられないからだ。
むしろ、ソフトウェア上で何度も作っては検証して、機能だけでなく性能や非機能要件まで細部の仕様を詰められれば、試作品の仕損費を劇的に減らせる。
量産に持ってくまでの試作期間を短縮することも可能だ。
つまり、Simulinkでシミュレーション検証する、CAEで検証する、と言った検証作業をソフトウェア上で何度も試せる点が重要だろうと考える。
そして、ここでも、MBSEベースのモデル検証にはMBSE専用ソフトウェアが必要であり、MBSE専用ソフトウェアが非常に高価である点がボトルネックになってくる。
すなわち、MBSEベースのモデル駆動開発とは、MBSE専用ソフトウェアによるモデル開発とモデル検証であって、我々IT技術者が思い描くGitHubベースのソフトウェア開発ではない。
よって、MBSEベースのモデル開発は非常にハードルが高いと言えるだろう。
この考え方が正しいのかどうか、今後も思索していく。
















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