astahによるUMLモデリング

2023/07/02

テストアーキテクチャ設計モデルとJSTQB概念モデルの比較

平鍋さんのテストアーキテクチャ設計モデルと、自分が書いてみたJSTQB概念モデルを比較してみた。
気づきをラフなメモ。

【参考】
JaSSTで話題になったテスト設計をモデル化してみた - Qiita

JSTQBのテストプロセスの概念モデルを描いてみた: プログラマの思索


テストアーキテクチャ設計モデルはかなり抽象化されたモデルと思う。
テスト評価層、テストアーキテクチャ設計層、テスト種別層、テストケース層に分かれている。

テストアーキテクチャは、システムアーキテクチャに基づくテスト設計かな?
たとえば、システム特性ごとにテストアーキテクチャは全く異なる。
組み込みソフトウェアであれば生命に関わるようなリスクは極力避ける必要があるから、安全性の観点のテスト設計が多くなるだろう。
一方、マイナンバーカードシステムのようなBtoCの基幹系システムであれば、個人情報保護が非常に重要だから、セキュリティの観点のテスト設計が多くなるだろう。
つまり、テストアーキテクチャはシステム特性に大きく依存しているはず。

テストアーキテクチャはテスト評価層で評価される観点が興味深い。
テストアーキテクチャ記述とステークホルダーが結びついている。
つまり、マネージャ、利用ユーザ、プロダクトオーナー、品質保証部門などの観点でテストアーキテクチャ記述はレビューされて評価される。
ステークホルダーごとにレビュー観点は異なるから、そういう視点が反映されている。
この点は非常に重要だ。
「このテストは誰のためにあるのか」という問いにつながるからだ。

テストコンテナという概念でテスト種別を表す点も興味深い。
最初に見た時、テストコンテナとは何だろう?と思った。
テストコンテナは、コンテナ分割方針によってグループ化されており、コンテナ分割方針はテストレベル、テストサイクル、テストタイプなどがある。
つまり、テストコンテナは、工程や品質特性、テスト期間の観点で組み立てられたテスト方針のように思えた。
おそらく、システム特性に応じたテストアーキテクチャを具体的に実装する場合、具体的にどんなテストが必要になるのか、というテスト内容が含まれていると考える。
すなわち、システムやプロジェクトごとにテスト方針がテーラリングされていることを示しているのだろう。

テストタイプにソフトウェア品質特性が関連付けられているのもミソだ。
つまり、8つのソフトウェア品質特性の観点に対応付けられた非機能テストがあることを示している。
たとえば、性能テスト、負荷テスト、耐障害性テスト、セキュリティテスト、移植性テストなど。
この考え方は「ソフトウェアテスト教科書 JSTQB Foundation 第4版 シラバス2018対応」にもあったから、自分のJSTQB概念モデルに取り入れさせてもらった。

テストケース層でテストスクリプトが中核にあるのは、自動テストを意識されているからだろうと思う。


一方、自分のJSTQB_テストプロセスの概念モデルはかなり具体的だ。
テストプロセス層とテスト成果物層で分けている。

テストプロセス層では、テストプロセスを中核として、テストプロセスを分析する観点が盛り込まれている。
テストプロセスとは、テスト計画~テスト完了までの一連のテスト活動から成り立つ。

そのテストプロセスは、テストレベルという工程ごとにコンポーネントテスト、統合テスト、システムテストなどで具体化される。
また、テストタイプというテスト種類ごとに、性能テスト、負荷テスト、使用性テストなどの品質特性ごとのテストプロセスもある。
一方、テストプロセスはテスト戦略で規定される。
テストアプローチはPJごとのテスト戦略のインスタンスとみなすから、テスト戦略とテストアプローチは継承関係にした。

テスト成果物層は、主にテスト項目書から成り立つテスト成果物だ。
テスト項目書、つまりテスト仕様書は、下記の観点で分解してみた。

テストアイテムとは何か?概要や定義、現場での使われ方について解説

テストケースを各要素ごとにばらす。
・テスト対象=対象画面・帳票
・テストアイテム=画面・帳票項目
・テストスイート=特定のテストサイクルで実行されるテストケースやテスト手順のセット
・テストサイクル=テストの開始日時、終了日時

ソフトウェアテスト教科書 JSTQB Foundation 第4版 シラバス2018対応」では細かい内容が多く、現場で使われる用語と違うので、概念モデルを書かないと理解しにくい。

たぶん、自分のJSTQB_テストプロセスの概念モデルをもっと抽象化して洗練させれば、テストアーキテクチャ設計モデルとマッピングできるだろうと直感している。
この辺りは気づきを残していく。

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2023/05/28

統計学の考え方をastahでまとめた

統計学の考え方を自分なりにastahでまとめた。
初心者のラフなメモ書き。

【参考】
計量経済学における統計上の根本問題: プログラマの思索

「推計学のすすめ」「経済数学の直観的方法~確率統計編」の感想: プログラマの思索

データ分析の課題はどこにあるのか: プログラマの思索

データ分析の面白さはどこにあるのか: プログラマの思索

経済学や心理学の実験で得られた理論は再現性があるのか?~内的妥当性と外的妥当性の問題点がある: プログラマの思索

経済学は信頼性革命や構造推定により大きく変貌している: プログラマの思索

統計学の考え方に関する感想: プログラマの思索

ランダム化比較試験はなぜ注目されて利用されるようになったのか: プログラマの思索

【1】統計学はいつも習得したいと思うのに、習得にすごく時間がかかる気がするのはなぜだろうか?
その理由は、統計学の考え方は独特な世界観があるからではないかと思う。

なぜ正規分布がそんなに重要なのか?
なぜならば、世界の物事のばらつきは最終的に正規分布に収まるから。
だから、観測や測定でデータを採取したら、まず正規分布を書いて、測定値がどこにプロットされるかイメージたらいい。

最小二乗法の基本思想は何か?
観測や調査で得られた測定値の誤差は正規分布に従う。
ゆえに、測定値のデータの背後にある正規分布の中心線を予測すること。
ガウスが誤差論から生み出した。

統計的仮説検定とは結局何なのか?
そのロジックは確率的な背理法。
だから、ややこしく感じる。

従来の数学や物理の理論や哲学と、昨今のビッグデータやAIなどの違いは何なのか?
従来の理論は演繹的にトップダウンで、世界を説明しようとする。
一方、昨今では、統計理論と強力なコンピューティングパワーで、ビジネスの副産物で得られた大量データを元に因果関係まで帰納的に推測してしまう。

【2】推測統計学の考え方

母集団のデータを全て調査できればよいが、実際はその中の一部のサンプルしか集められない場合が多い。
調査には時間もコストも掛かるから。

では、集めた測定値から母集団はどのような構造になるのか?
大数の定理より、サンプルから推測される母集団の背後にある正規分布を予測する。
そのためにt検定など色んなツールがある。

サンプルデータの抽出方法が上手くないと母集団のデータ構造を推測しにくい。
複数の標本を独立に選ぶことが大事。
つまり、マーケティングのセグメンテーションと同じ考え方。

母集団の平均・分散を既に知っているか、全く知らないか、で推測方法が変わってくる
母集団の平均・分散を既に知っていれば、推測する正規分布の精度は高くなるだろう。
しかし、一般には母集団の平均・分散は全く知らない場合が多いので、推測してもその分誤差は出る。

母集団が1個なのか、2つなのか、で推測方法が変わってくる。
母集団が1つなら、母集団の構造を知ることが重要。
測定したサンプルは母集団のどこにプロットされるのか、が重要なテーマになるだろう。
つまり、内的妥当性の問題になるだろう。

一方、母集団が2つなら、2つの母集団を比べて、優劣や評価を比較することになるだろう。
たとえば、補助金を与えた集団と、補助金なしの集団ではどんな行動の差があるのか、とか。
すると、その行動の差から得られた知見は、その他の母集団に適用できるか、という問題に発展するだろう。
たとえば、米国で得られた統計結果は、日本でも当てはまるのか?とか。
つまり、外的妥当性の問題になるだろう。

【3】正規分布ファミリーの全体像

正規分布には色んな種類がある。
Z分布、t分布、F分布、χ2乗分布とか。

これらの分布は、母集団の平均値や標準偏差を知っているかどうかで変わってくる。

【4】統計的仮説検定の9パターン

統計的仮説検定が理解しにくいと思う理由は、2つあると思う。
1つは、仮説的統計検定の基本思想が確率的背理法であること。
背理法の考え方でつまずきやすいのではないか。

もう一つは、推測したい母集団の平均値や標準偏差が既知なのか未知なのか、で手法が変わってくること。
たくさんの検定手法があって名前から手法の中身を推測しにくい。
前提条件をIF文で分岐処理して検定手法が確定するので、そのパターンをイメージしておかないといけない。

【5】統計検定2級は6年前に取得した。
その時に上記の考え方を自分のastahの中で色々書き込んでいた。
その時のメモを残しておいた。

これらをベースに機械学習がある。
分類(classification)、回帰(regression)、クラスタリング(clustering)、次元圧縮(dimensionality reduction)とか。
PythonのScikit-Learn のチートシートも公開されているので、またまとめておく。

Pandas Cheat Sheetのリンク: プログラマの思索

scikit-learn「アルゴリズム・チートシート」のリンク: プログラマの思索

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2023/05/26

JSTQBのテストプロセスの概念モデルを描いてみた

JSTQB Fondation試験を勉強した時に、JSTQBのテストプロセスの概念モデルを描いてみた。
気づきを書き残す。
まだ理解があやふやなので、間違えていたら後で直す。

【参考】
テストアイテムとは何か?概要や定義、現場での使われ方について解説

【1】JSTQBのテストの専門用語は、普段使っている言葉と意味が違っていたり、別の言葉で置き換えられる時があると分かった。
たとえば、テストレベルはテスト工程のテストプロセス、テストタイプはテストの種類に相当するだろう。

テストオラクル、テストベースなどはJSTQBで初めて知った。
たぶん、テストケースの発生源や出処となる概念を明確に区別すべきという考え方があるのではないか。

テストオラクルの用語定義: プログラマの思索

また、テストプロセスの概念モデルを描いてみて気づいたのは、JSTQBにたくさん出てくるテストの専門用語は、テスト管理ツールやテスト支援ツール、テスト自動化ツールなどのツールで使う場面をかなり意識しているのではないか、と直感している。

たとえば、テストスイートは、一般にテスト自動化ツールに読み込ませるテストケースやテストデータをイメージできる。
テストハーネスはドライバやスタブみたいなものだし、テスト環境そのものも今ならDockerで最初から環境構築を自動化できる。

【2】エラー(誤り) error、欠陥 defect、故障 failureは明確に区別される。

エラー・欠陥・故障の用語定義: プログラマの思索

一般に不具合と言われる事象は故障に相当するだろう。
不具合をバグ、障害と断定しない理由は、実際に調査してみたら、仕様通りで問題ないとか、テスト手順ミスやテスト環境の不備が原因だった、という場合があるからだろう。
不具合は、故障、不正の事象も包み込む曖昧な現象を指す場合が多いと思う。

欠陥があったからといって、故障が発生するわけではない。
欠陥のあるプログラムが実行されて初めて故障が発生する。
欠陥がプログラムに埋め込まれても、テストで発覚せず、運用していても発生しなければ、システムは問題なく動く。
しかし、欠陥そのものは存在しているわけだから、いつかは故障として発生する。
いわゆる潜在バグに相当するのだろう。

欠陥の根本原因の分析はなぜなぜ分析がよく使われるだろう。
しかし、なぜなぜ分析を現場で実際に使ってみると、なかなか効果を出すのが難しい。
メンバの力量にかなり依存するので、原因があらぬ方向に行ってしまいがち。

【3】JSTQBでは、テストチームの役割には、テストマネージャとテスト担当者の2つが少なくとも定義されている。
テストマネージャはテスト計画フェーズで中心的役割を果たす。
テスト実行フェーズ以後の具体的な作業はテスト担当者に任せるようだ。
つまり、テストマネージャはプロジェクトマネージャやストラテジストに近いイメージを持った。

JSTQBのAdvancedLevelはテストマネージャ試験がある。
ただし、業務経験が必須らしい。

【4】テスト管理や品質管理については、TestLinkを試していた頃に随分色々考えていた。

TestLink: プログラマの思索

プログラミングやシステム設計とは異なる考え方を知ったり、試したりするのが面白かった。
残念なのは、テスト管理ツールはほとんどが有償であり、OSSのTestLinkしか試せなかったことだった。

テスト管理ツールTestRail、CAT、QualityForwardの感想: プログラマの思索

テスト管理ツールCAT、TestRail、QualityForwardのオンラインのマニュアルのリンク: プログラマの思索

今持っている問題意識は、2023年の現在、ソフトウェアテストを支援するテストツールはどんな方向に進化しようとしているのか、ということ。
上記の記事にも書いたが、日本のIT企業やユーザ企業が考える品質と、欧米企業が考える品質は異なる。
日本人は機能の細かい品質までこだわるが、現代はアジャイル開発が普及して一般的になっていて、その考え方が時代に合わない部分もある。
アジャイル開発に適した品質とは何なのか?
そして、AIなどを使ってもっとテストそのものを進化させることはできるのか?

この辺りは色々考えてみたいと思っている。

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2023/05/13

第85回IT勉強宴会の感想~概念データモデルからビジネスモデルを構築すべきという考え方

土曜に開かれた第85回IT勉強宴会で、真野さんがデータモデリングの観点でエンタープライズシステム設計を講演されたのでオンラインで聞いた。
講演内容を知った前提で、感想をラフなメモ書き。

【参考】
概念モデルの効用を知ろう - connpass

概念モデルの効用を知ろう(第88回IT勉強宴会inZOOM/大阪サテライト) | IT勉強宴会blog

第39回IT勉強宴会の感想~花束を作る花屋の業務モデルをT字形ERと三要素分析法で比較する: プログラマの思索

第62回IT勉強宴会のメモ~2人の方法論者によるデータモデリング激レア対談: プログラマの思索

「データモデリング入門-astah*を使って、TMの手法を使う-」はとても良いモデリング資料: プログラマの思索

業務ロジックをデータモデリングはどこまで表現できるか?: プログラマの思索

リソース数がビジネスの可能性に関係する理由: プログラマの思索

【1】講演のメッセージは、DXで新規ビジネスを創出したいなら、概念データモデルを描くことから出発しよう、ということ。

メッセージの背景にある課題は、昨今、IOTやSaaSなどのSoE、既存の業務システムのSoRなど色んなところから数多くのデータがビジネスの副産物として簡単に入手して蓄積できるようになった
そのデータをAIや機械学習に食わせて分析するようにしたい。
しかし、色んな入り口から源泉データが発生し、途中で加工されて雪だるま式に派生データが積み重なり、複雑なトランザクションデータになっている。
そのためにそのデータを利活用しようとすると、派生データを取り除き、源泉データを区別して本来のデータを抽出する仕組みが必要だ、という問題意識。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「我々が扱おうとしているのは、大半が加工・集約された派生データである。データがどこで加工されたのか、出処はどこなのかを探ることが重要。源泉データを突き止めるためにデータの系統図、データの変遷をたどるのが必要。イベントを時系列に並べてリソースを抽出する、ということかな? #benkyoenkai」 / Twitter

そこで、SoE領域、SoR領域などの源泉データからどのように加工されてデータ連携基盤ハブにたどり着くのか、をデータモデルの観点から整理分類し、データクレンジングしたきれいなデータをデータ活用基盤へ連携してAIや機械学習に使ってもらうという仕組みにする。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「源泉データがレガシーなSoRだったり、SaaSのSoEだったり、データレイクからだったり色々ある。そういう風にデータが時系列で加工されていく過程が見える。 #benkyoenkai」 / Twitter

講演では、製造業のサプライチェーン全てをデータモデル化し、コスト最適化の観点でシミュレーションとして使う事例が紹介されていた。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「取引先や原材料、中間加工品の調達関係を描いたデータモデルが必要となる。制約条件は、取引先や原材料、中間加工品の調達関係を描いたデータモデルが必要となること。事業部間のデータ統合ができていることが前提。プロセスの再現だけではデジタルツインは実現できない。 #benkyoenkai」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています: 「デジタルツインでは、データ連携基盤Hubが重要。SoRが源泉データ。SoRからデータ連携基盤Hubを経てデータ活用基盤へデータが流れることになる。 #benkyoenkai」 / Twitter

僕の感覚では、雪だるま式に加工されて複雑化したトランザクションデータを時系列に並べて、マスタ(リソース)をトランザクション(イベント)と区別して抽出し、イベントやリソースをそれぞれ管理する仕組みを作る、というように捉えた。
実際の分析手法では、データモデルの正規化も使うし、クラスとインスタンスを区別することでクラスを抽出しロールとしてポリモルフィックに振る舞わせるように整理する。

講演では、顧客というクラスは、顧客、消費者、代理店、法人客というロールがある例が紹介されていた。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「データモデリングは分類学である、とデータ総研の方は言っておられた、と。顧客、消費者、代理店、法人客などのロールを分類して、特化・汎化のER図で描く。IDEF1Xなのでオブジェクト指向設計と同じ。パーティモデルの概念と同じ。 #benkyoenkai」 / Twitter

【2】データモデルを作る目的は3つ。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「データモデルを作る目的。3つある。ビジネス構成要素や業務ルールを把握する。保有するデータをAI機械学習の入力源にする。新規ITシステム構築に活用する。 #benkyoenkai」 / Twitter

【3】概念データモデルを描くメリットは何か?
メリットは2つある。

1つ目は、ビジネス構成要素を資源(リソース)と活動(イベント)の2種類に整理統合することによって、今後新たなビジネスモデルを生み出す材料として扱えること。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「ビジネスの構成要素は資源(リソース)と活動(イベント)からなる。リソースは普通のマスタ、イベントは普通のトランザクションとみなせるね。羽生さんの本ではイベントに注目するとデータモデルを作りやすいと言っていたなあ。時系列に並べれば自然にDFDみたいなER図が描けるから #benkyoenkai」 / Twitter

データモデルのエンティティをイベントとリソースの2種類に整理するアイデアは、T字型ER(旧)や羽生さんのデータモデリング手法でも出てくる。
羽生さん本では、イベントは必ず日付があること、そこからイベントとリソースを区別しましょう、と言っていた。

「データモデリング入門-astah*を使って、TMの手法を使う-」はとても良いモデリング資料: プログラマの思索

業務ロジックをデータモデリングはどこまで表現できるか?: プログラマの思索

ここで、イベントの数とリソースの数を数えて、もしイベントの数がリソースよりも少ないならば、リソースを組み合わせて新たなイベント(トランザクション)を生み出すことで、新たなビジネスモデルを考える切っ掛けの一つになりうる。

リソース数がビジネスの可能性に関係する理由: プログラマの思索

第39回IT勉強宴会の感想~花束を作る花屋の業務モデルをT字形ERと三要素分析法で比較する: プログラマの思索
(引用開始)
リソースの数よりもイベントの数が少ない場合、リソースの組合せで発生する可能性のある対照表というイベントは、その会社の業務として存在していない事実がある。
すなわち、新しい業務を生成することで、新規ビジネスを作り出す根拠になりうる。
(引用修了)

2つ目は、講演では、プロセス指向設計で使われる業務フロー図では、既存の業務フローで業務を入れ替え・削除したり、担当組織を入れ替える程度であって、BPRや業務改善しかできない。
DXで本来やりたい新規ビジネスモデルを生み出すことは、業務フロー図からでは発想できない弱点がある。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「データモデルの活用例の1つはDXへの適用。経営者、業務部門、IT部門のコミュニケーションツールとして使う。ビジネス創出のためには業務フローアプローチではBPRや業務改善に留まり、新規ビジネス抽出につながらない。順序入れ替え、組織分担変更のレベルにすぎない #benkyoenkai」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています: 「都度受注モデルからサブリスクプション契約モデルへビジネスを変更する。エンティティの置き換えだけでなく、新規イベント、新規リソースの追加が必要になることが明確に分かる。すると、新規イベント、新規リソースを保守管理する組織も必要になるだろう。 #benkyoenkai」 / Twitter

概念データモデルでAsIsモデルを描き、そこからエンティティを出し入れすることで、新規ビジネスモデルを生み出せるはず、と講演では説明されていた。

この部分については、なるほどと納得できる部分もあるが、本当にそうなのかという疑問も生じる。
確かに、講演で例に出た、AsIsの受注契約モデルとToBeのサブスクリプション契約モデルでは、業務フロー図でAsIsからToBeは出てこないだろう。
なぜなら、サブスクリプション契約モデルは誰も知らない初めてのビジネスモデルなので、業務フローをそもそも描くことすら難しい。
どんな業務が必要で、どの組織が業務のどのプロセスを担当して回すのか、そういう具体的な細かい粒度まで落とし込むのは至難の業だ。

しかし、AsIsの受注契約モデルとToBeのサブスクリプション契約モデルでは、概念データモデルを描いてみると構造はかなり違う。
契約エンティティなどの一部のエンティティは同じだが、AsIsモデルでリレーションシップや新たなエンティティをちょっとだけECRSでいじればToBeが出てくる、というのはちょっと無理があると思う。
実際、QAタイムでは、既存のAsIsモデルの概念データモデルでエンティティをECRSで出し入れする程度でToBeモデルが作れるのか、という質問もあった。

概念データモデルで新規ビジネスモデルを描く重要性は理解できるが、具体的なデータモデルを整合性が取れるように生み出すことは、別次元の作業なのだろうと思う。

【4】概念データモデルとオブジェクト指向設計、ドメイン駆動設計の違いは何なのか?

講演で紹介された概念データモデルはIDEF1Xで描かれていた。

ER図 (Entity-relatonship Diagram) | astah* 機能ガイド

IDEF1Xのエンティティ同士の関連線はクラス図と異なるが、多重度を書いたりロールを書いたりするのでクラス図に似ている。
オブジェクト指向設計やドメイン駆動設計が好きな人は、たぶん違和感なくIDEF1Xの概念データモデルを理解できるだろうと思う。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「受注出荷のデータモデルをIDEF1XのER図、DFDで描かれた事例。クラス図に読み替えやすい。 #benkyoenkai」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています: 「受注出荷モデルの例。受注と出荷の関係が1対1、1対多では何が違うか?受注単位の出荷、一括受注して分割出荷。IDEF1XのER図はクラス図に似てるのでドメイン駆動設計が好きな人は読みやすいと思う  #benkyoenkai」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています: 「抽象化したエンティティはロール概念を用いて関連付けることができる。真野さんが説明されるデータモデルはクラス図にそのまま置き換えられるね。 #benkyoenkai」 / Twitter

データモデリングがなかなか普及しない原因の一つは、ドメイン駆動設計が好きな人はデータモデルを読み解きにくい現象が多いのではないか、と推測するので、この辺りは1つのきっかけになるかもしれない。

【4】渡辺さん式データモデルと真野さんの講演で出てくる概念データモデルの違いは何なのか?

真野さんの講演で出てくるデータモデルは概念モデルレベルなので、エンティティ名しか書かれていない例が多い。
一方、渡辺さん式データモデルは、すべての属性を書き出し、関係従属性の意図まで明確に表していて、実際のデータの例も書いているので、より具体的だ。
実装モデルそのものと言っていい。

だから、渡辺さん式データモデルではテーブル仕様書をそのまま出力できるレベルであり、Railsのようなフレームワークを使えばすぐにCRUD画面も作れる。
つまり、どんな画面や帳票が必要で、どんな業務や画面操作でデータが生成されて更新されていくか、というレベルまで全て把握できている。
だから、ローコード開発やノーコード開発と相性がいい。
たぶん、SalesforceやKintoneのようなローコード開発ツールと相性が良いと思う。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「真野さんのデータモデルはIDEF1Xで描かれてるので、渡辺さんのER図とは見た目は違う。個人的には、渡辺さんは関係従属性の意図まで明確にしインスタンスも例示するので、より実装モデルに近いと思う。だからローコード開発と相性がいい。 #benkyoenkai」 / Twitter

しかし、関数従属性やキーの種類の理解が深くないと、データモデルを読み解くのは難しいと思う。

再入門:「正規化崩し」としてのサロゲートキー - connpass

(引用開始)
・候補キー(candidate key):レコードを一意に特定するキー。1テーブルに複数存在することがある
・主キー(primary key):代表として定めた候補キー。項目値の変更は許されない
・単独主キー(single primary key):1項目で出来ている主キー
・複合主キー(composite primary key):2つ以上の項目で出来ている主キー
・自然キー(natural key):業務上意識されている候補キー。単独主キーか複合主キーかは問わない
・サロゲートキー(surrogate key):業務上意識されていない単独主キー。代理キーともいう
(引用修了)

サロゲート単独主キー vs 複合主キーの話、予習編 - たなかこういちの開発ノート

アーキテクトは、データモデルから業務フロー図、画面帳票、組織構成までイメージできる能力を求められる。
たとえば、渡辺さんの本を読めば、ほとんどデータモデルばかりでDFDは少しだけしか紹介されていないので、実際にどんな業務フローが必要になってくるのか、は自力で考えなければならない。
渡辺さんの本に出てくるデータモデルでは、複合主キーや外部キー、特に2次識別子(Alternative Key)が巧妙に使われていて、業務ルールや制約条件を表しているので、注意深く読まなければ割と読み落としやすい。

【5】概念データモデルはどの工程で使われて、どんな役割の人が担当すべきなのか?

講演では明示的な説明がなかったように思うが、常識で考えると、企画フェーズや要件定義で概念データモデルが作られる。
担当者はアーキテクトのレベルの人になるだろう。

作られた概念データモデルの粒度は、講演で紹介された粒度ならば、エンティティ名だけでかなり曖昧。
渡辺さん式データモデルの粒度なら、論理モデルまで落とし込む必要がある。
その場合、そこからすぐに実装モデルに置き換えられるから、ローコード開発ツールを使うことを前提にしているだろう

最近はデータモデリングから離れていたので、講演を聞いてすごくワクワクしながら聞いていた。
改めて、データモデリングのテクニックを自分なりに整理してみたいと思う。

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2023/04/15

令和4年度春期試験のITストラテジスト試験第4問をastahでモデル化してみた

令和4年度春期試験のITストラテジスト試験第4問について、問題文の構造をastahで図式化してみた。
自分のメモ用に残しておく。

【参考】
ITストラテジスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

令和4年度春期試験のITストラテジスト試験

【1】ストラテジスト試験第4問は必ず組込みソフトウェア開発企業のテーマになる。
今回のテーマは「電力自由化や再生エネルギー切り替えの環境変化に対し、電力会社の子会社が局地的な気象予測システムを開発し、親会社と連携することで新規顧客開拓を狙う」事例。

SDGsや二酸化炭素排出削減、環境意識の流れ、EV化などの最近の事情を考えると、よく考えられたテーマと思う。

【2】ストラテジスト試験第4問の特徴はいくつかある。

【2-1】1つ目は、登場人物が非常に多いこと。
今回の事例を3C分析で書いてみるとすごくよく分かる。

St_r4_pm1_4_3c

【2-2】特に、協力者が重要な要素になる。
なぜならば、組込みソフトウェア開発企業は特定のアプリケーションソフトウェア開発には強いが、ハードウェア製品の開発は弱かったり、GISや気象データ、特殊技術を持つソフトウェア企業と連携する必要があるからだ。
自社にない経営資源は、外部企業と提携することで解決するためだ。

この事例では、GISデータを持つ企業、気象測器を製品販売する企業が協力者になる。

【2-3】2つ目は、脅威として法規制や政治情勢、社会ニーズなどのPEST分析が必要になること。
特に、法規制が多い。
人命にかかわるソフトウェアやハードウェアであればなおさらだ。
法規制の要件により、ハードウェア機器もソフトウェアも制限を受けるし、その分、コストがかかったり、ソフトウェア開発の難易度が上がる。

一般に、法規制は国が定めるので、政府や国という登場人物が出たら、法規制に必ず関わることになる。

【2-4】3つ目は、事業戦略の方向性は、新規顧客開拓が基本である点だ。
一般に、今までの既存顧客だけでは売上が減少気味だったり、SSGsなどの環境変化で新たなニーズが生まれている背景があるから、新たな市場へ乗り出さないといけない、という方向性になりやすい。

では、新規顧客開拓に必要な経営資源は何か?
一般には、地域に根ざした営業力、特定の分野に特化した技術力があげられる。
技術力の例には、ソフトウェア開発力もあるし、保守サービス、AIやハードに特化したソフトウェア技術などがある。

すると成長戦略として、今までに培った技術力で新製品や新サービスを開発し、営業力を活かして新たなニーズを持つ顧客へ販売する、という方向性になる。
つまり、かなり積極的な経営戦略になるだろうと思う。

【3】今回の事例をSWOT分析してみたモデルを描いてみた。
モデルを描いて気づいた点は、いくつかある。

St_r4_pm1_4_

【3-1】1つ目は、協力企業と連携する箇所は必ずシステムの機能追加が必要になること。
例えば、気象予測システムに「電力の融通量を計算する情報システム」と外部連携する機能が必要になる。
この外部連携機能により、他の電力会社に局地的な気象情報に基づく情報を連携し、電力の大きな変動に対応して、全国規模の効率化を図ることになる。

たとえば、気象予測システムにGISデータを取り込む機能が必要になる。
局所的な気象は土地の起伏や構成要素に密接に関係するので、GISと連動させる必要があるからだ。
よって、GISの地図データを扱う企業と連携する必要がある。

まあ考えてみれば、協力企業と情報連携するわけだから、外部連携機能は必須になるのは当たり前。

【3-2】2つ目は、政府の方針や法規制にかかわる要件は、システムの機能に埋め込まれていること。
たとえば、気象業務法により、定められた人数以上の気象予報士を雇用する必要がある。
よって、気象予測システムでAI分析したデータは、必ず気象予報士がチェックして、顧客へ広報するという業務がシステムに埋め込まれることになる。

たとえば、政府は電力自由化を促進する必要があり、電力不足を防ぐ必要があるので、電力会社間で電力を融通してほしい思惑がある。
よって、気象予測システムと電力会社が持つ電力量算出システムが連携して対応する必要がある。

つまり、法規制や政府方針に関わる要件は、システムのどの機能で実現するのか、を必ずチェックしておく必要がある。

【3-3】3つ目は、課題の解決や経営資源がシステムの機能と密接に関係していること。
たとえば、局地気象予測システムでは、気象測器を高密度に多数設置する必要があるので通信手段が必要になる。
そこで、親会社の電力会社が持つ通信インフラである有線・無線ネットワークを利用することで解決する。
つまり、経営資源を活用することで、システムに足りない機能や環境を補充することになる。

たとえば、局地気象予測システムでは、気象測器は修理対応や交換を伴う定期保守が必要になる。
しかし、観測成果を発表するには、気象測器は基本は検定合格品を使用しなければならないが、高価であり、製品販売する企業も少ない。
そこで、観測成果の発表を止める代わりに、検定合格しない安めの製品を利用すること、親会社D社の強みである災害時を想定した保守体制を活用して、検定合格しない製品販売のZ社と提携し、予備機の追加や製品修理だけの保守を契約することで対応する。
つまり、投資効果のバランスを取っているわけだ。

【4】ストラテジストの他の問題もastahでモデル化してみると、販路開拓を目指す新規事業とそれを実現するシステム要件がうまく関連していることがよく分かって面白い。
ベンチャー企業も、新規事業を起こしたい大企業も、こういう発想でシステムを開発しようとしているのだろう。
他にも試してみたいと思う。

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2023/02/18

ストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いは何なのかpart2~プロセスのレイヤと達成目標のレイヤが異なる

ストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いは何なのか?
ITコーディネータ研修を経験して、IPAが定義するストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いを自分なりに理解したことをメモ。
ラフなメモ書き。

【参考】
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:制度の概要:ITストラテジスト試験

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:制度の概要:プロジェクトマネージャ試験

【1】ストラテジストとプロジェクトマネージャでは、担当するプロセスのレイヤが異なる。

プロジェクトマネージャの担当領域は、個別プロジェクトのキックオフからリリースまでが一般的だ。
たとえば、SIerのプロジェクトマネージャであれば、請負契約でシステム開発を請け負っているはずだ。

一方、ストラテジストの担当領域は、複数のプロジェクトの内容が固まってRFPやプロジェクト計画書が完成するまでの企画フェーズと、プロジェクトが完了してリリースしたシステムが稼働した後の効果検証フェーズの2つだ。

たとえば、ユーザ企業の事業戦略に基づき、その事業を成功するためのシステムを構築したり、事業を支える業務を支援するシステムが必要になったとする。
事業の規模や業務の規模が大きければ、複数のシステムを構築する必要があるから、複数プロジェクトを並行で走らせる計画を作る。
そういう複数のプロジェクトではそれぞれ、どんなシステムが必要なのか、いつまでにシステムをリリースする必要があるか、を決める。
一般に企画フェーズで、事業戦略に基づくシステム化構想が練られることになる。

さらに、そのシステムをリリースした後、当初想定していた投資対効果が得られているか検証し、さらに改善していく必要がある。
それがリリース後の効果検証フェーズになる。

すなわち、ストラテジストの役割は、プロジェクトマネージャにプロジェクト計画書をお膳立てすることと、プロジェクトマネージャがリリースしたシステムが経営戦略の目標に合致しているか検証することになる。

ストラテジストはシステム化計画とシステムの効果測定だけであり、プロジェクトの実行フェーズはプロジェクトマネージャに委ねる。
よって、ストラテジストとプロジェクトマネージャの担当領域は明確に異なる。

【2】ストラテジストとプロジェクトマネージャでは、彼らの評価指標が明確に異なる。

プロジェクトマネージャは既に決められたQCDを元にリリースする責務がある。
たとえば、SIerのプロジェクトマネージャならば、ユーザ企業と握ったRFPを元に、初期投資予算、マスタスケジュール、体制図、システム要件が基本は確定した範囲内で、それを具体化してシステムとしてリリースする責務がある。
つまり、プロジェクトマネージャの評価指標は、当初決められたプロジェクトのQCDとの差異分析で決まる。

一方、ストラテジストは事業戦略に基づくシステムを構想したからには、そのシステムが事業に貢献したという投資対効果、つまりROIがストラテジストの評価指標になる。

たとえば、ユーザ企業が新規顧客を開拓するような新規事業を実行しようと決めて、ECサイトが必要になったと検討したとする。
ストラテジストは、そのECサイトは5カ年計画でどれだけの売上と営業利益を確保できるか、初期投資で数千万円や数億円をかけて投資してどれだけ売上を確保できるか、売上と営業利益のシミュレーションを計画する。
その売上を確保するには、ECサイトにはどんなシステム要件、業務用券が必要なのか、洗い出して確定する。
そして、そのECサイトの構築をプロジェクトマネージャに委ねてリリースしてもらった後、数ヶ月や数年をかけて、ECサイトの売上や利益を計測していく。
当初の計画と5カ年の実績の差異分析、つまり投資対効果がストラテジストの評価指標になる。

プロジェクトマネージャの評価指標がプロジェクトのQCDである事実より、プロジェクトマネージャへのプレッシャーはとても大きい。
しかし、ストラテジストの評価指標がシステムの投資対効果である事実を考えると、ストラテジストへのプレッシャーの方がはるかに大きいと思う。
なぜならば、プロジェクトマネージャの担当範囲は所詮、個別プロジェクトだけだが、ストラテジストの担当範囲は事業目標を達成するために平行に走らせるように計画された複数プロジェクトなのでとても広いからだ。

【3】ストラテジストとプロジェクトマネージャでは、利用するモデルや管理手法が明確に異なる。

プロジェクトマネージャは当初定められたプロジェクトのQCDを守るために、WBSとガントチャートによる進捗管理と課題管理が必須だろう。
もちろんそれ以外にも変更管理、品質管理など色々あるが、PJ管理手法のベースにはWBSとガントチャートがある。

一方、ストラテジストは、事業目標よりブレイクダウンされたシステムの投資対効果を達成するために、CSFとKGI、KPIのPDCA管理が必要になる。
事業目標を達成するために、BSCのように財務・顧客・業務・組織と人材の観点での中間目標(CSF)に分解したり、事業部内の各部署に業務分掌となる達成目標(CSF)が定められることになるだろう。

このCSFの考え方は、WBSみたいなものだ。

ストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いは何なのかpart1~CSFはWBSみたいなものと捉える: プログラマの思索

そして、CSFという中間目標を達成できたか否かを定量的に判断するために、KGI/KPIが必要になる。

たとえば、売上や利益の確保という財務レイヤの最終目標に対し、売上高や営業利益率というKGIが出てくる。
そのKGIを達成するには、顧客や市場の観点で、新規顧客獲得数や購買単価、顧客満足度などのKPIが出てくる。
たとえば、BtoCビジネスのECサイトで出てくるAARRRも該当するだろう。

それらを実現するためにさらに業務レイヤで、顧客訪問回数、受注獲得率、顧客提案回数、業務効率化につながる工数削減の度合い、作業時間の短縮度合いなどのKPIも出てくるだろう。
さらに、それらの業務を実行する人材や組織の観点で、有能な人材を示す専門資格者数、研修回数、社内教育、従業員エンゲージメント率などのKPIも出てくるだろう。

つまり、ストラテジストが計画した諸々のシステムは計画時点でそれらKGI/KPIの目標値が設定されて、リリースされたシステムが稼働している間、KGI/KPIをシステムで自動的に測定して、投資対効果を評価することになる。

【4】自分がJavaアプリ開発者だった頃、プロジェクトマネージャの仕事ぶりは実際に見ることができたから、彼らの役割や責務は想像することができた。
しかし、ストラテジストを実際に見かける機会はなかったから、彼の役割や責務を想像することは難しかった。

ストラテジストはユーザ企業の経営戦略や事業戦略をベースにシステム化構想を検討するので、MBAで出てくるような経営戦略ツールを使って、外部環境・内部環境分析を行い、経営課題やCSFを洗い出す技法が必要になる。
つまり、ストラテジストに求められるスキルには、経営課題を解決するためのシステムの骨格を生み出すためにシステムアーキテクトのスキルは必要な前提の上で、外部環境・内部環境分析と経営課題・CSFを確定するための経営戦略ツールも必要になってくる。

たとえば、外部環境分析なら5Fs, PEST分析、内部環境分析ならVRIO分析やバリューチェーンなどのフレームワークを使う。
たとえば、経営課題の抽出であれば、SWOT分析で各要素を洗い出した後、経営戦略の方向性や企業の制約条件を元にクロスSWOT分析から、あるべき姿という経営課題を洗い出す。
その経営課題をCSFへ置き換えたり因果関係にまとめてBSCに当てはめて、各レイヤや各部署のCSFとKGI/KPIに落とし込む。
そこから、どんなシステムが必要になるか、複数個のシステムを洗い出して、具体的なシステム化計画を策定していく。
たぶんそういう流れ。

よって、ストラテジストの所在はユーザ企業の経営層や経営企画部、事業企画部、情報システム部門の領域にある。
つまり、SIerの中の一人の開発者から見れば、ストラテジストははるか遠くのところに位置しているので、彼らの目に止まりにくい。

【5】しかし、アプリ開発の専門技術者とプロジェクトマネージャ、ストラテジストは役割が異なるだけであって、そこに優劣があるわけではない。

実際にシステムを構築するために、システムアーキテクト、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドスペシャリスト、セキュリティスペシャリストなどの各専門技術者も必要だ。
色んな専門スキルを持つ人達が集まって、彼らが一つのチームとして形成して初めて、一つのシステムのリリース、さらには事業目標が達成される。

現代のシステム開発は色んな領域の専門家集団が必要であり、彼らがチームとして成り立ち、協働することが必要になっているわけだ。

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2022/11/14

astahとExcelの間でマインドマップをやり取りする方法はコピペだけ

astahとExcelの間でマインドマップをやり取りする方法はコピペだけと分かったのでメモ。

【参考】
マインドマップのExcel出力 | astah in 5 min

マインドマップは個人的にはよく使う。
1日のタスクの洗い出す。
1日のToDo管理は、マインドマップ上でアイコンを付けて、完了、進行中、作業順番、重要度、優先度などを付ける。
提案資料のアウトラインを書き出して、内容を肉付けしていく。
問題分析するときは、問題の症状からロジックツリーのように分解する。
構想を練っている時は、とにかくアイデアを書き出して、枝葉にアイデアを移動したり、つなげたり、まとめたりして、整理していく。
テスト仕様書を作るときは、テスト観点をざっくり洗い出して、機能ごとにばらして細かく書いていく。

そんな内容がまとまったら、やっぱりSIの現場ではExcel仕様書が幅を利かせているので、Excelと行き来できるのは便利。

astahのマインドマップをコピーしてExcelに貼り付けるだけ。
一方、Excelでインデントを付けたテキストをastahに貼り付けるだけ。

このあたりも色々試せるのはいい。

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2022/11/06

Go言語でできることは何なのか

Go言語でできることは何なのか、について考えたことをメモ。
全くのGo初心者がいろいろ考えたことのメモ。
間違えていたら後で直す。

【参考】
とほほのGo言語入門 - とほほのWWW入門

Go言語(golang)とは? 特徴・できること・将来性を徹底解説 | 【テックストックMAGAZINE】エンジニア向けスキル・キャリア情報

Go言語にできることってなに?人気の理由をくわしく解説 | 株式会社パソナ(旧パソナテック)|ITエンジニア・ものづくりエンジニアの求人情報・転職情報

Go言語の強みと得意分野を探る(上) - Go言語の強みと得意分野を探る:Computerworld

Go言語の強みと得意分野を探る(中)1 - Go言語の強みと得意分野を探る:Computerworld

Go言語の強みと得意分野を探る(中)2 - Go言語の強みと得意分野を探る:Computerworld

Go言語の強みと得意分野を探る(下) - Go言語の強みと得意分野を探る:Computerworld

Go言語でできることとは?Go言語で作れるアプリの事例を紹介 | プログラミング大陸

Ruby->Go->Scalaという習得順序がエンジニアの爆速の成長に最適である理由 - Qiita

Go言語の書籍を色々読んでみて色々気づきはあった。

Go言語は、マイクロサービスアーキテクチャを実装するプログラミング言語であるらしい。
色々記事を読んでみて、Go言語は、CLIやAPIを作るのに最適な言語であると感じた。

他システムがWebサーバーからデータを取得したり更新しようとする時、APIという公開IFを設けて疎結合な設計にしたい。
Go言語であれば簡単にHTTPでやり取りできるのでWebサーバを立ち上げる必要もなく、普通のクライアントアプリケーションみたいに作ればいい。
また、Go言語では並行プロセスの実装も割と簡単なので、負荷に応じてプロセスを増やせば良く、クラウド上でAPIを公開するためのアプリとして最適。

Go言語でCLIを作るイメージは、Unixコマンドを作るイメージだろうか。
Unixであれば、/binの中に各種コマンドがexeで配置されている。
別システムがバッチ処理をキックしてシステム連携したい場合、CLIという公開IFを叩けば良い。

そんなことを考えると、Go言語はかなり特殊な状況で使うもののように思う。
業務ロジックを実装するレイヤではなく、OSやアプリの間で処理するためのミドルウェア、ないしフレームワークみたいな役割を持つレイヤで実装すべき。

また、Go言語はクラウドと相性がいい。
Go言語はクロスプラットフォームでバイナリファイルを作れるので、CLIやAPIに向く。
また、Go言語で作ったバイナリファイルのサイズを小さくできれば、クラウドのリソースを少なく押さえられる。
また、メソッド呼び出し時のアプリ起動時間を短くでき、並行プロセスで走るアプリの起動時間(ロード時間)も短くできる

クラウド上の開発がJavaに与えた影響は何なのか: プログラマの思索

Javaのモジュールシステムの考え方をまとめてみた: プログラマの思索

つまり、Go言語はクラウド上でCLIやAPIを実装したプログラムに特化した言語なのだろう。
だから、マイクロサービスアーキテクチャと相性が良いと言われているのだろう。
そして、マイクロサービスアーキテクチャはドメインごとの境界で使われるので、ドメイン駆動設計とも相性がよく、それらの設計技法と密接に絡む。

そんなことを考えると、一昔前のオンプレ環境でのWebシステム構築で経験されて蓄積されたアーキテクチャ設計技法は古くなっており、クラウドに特化したアーキテクチャ設計技法をもっと探究していくべきだ、という方向性が出てくるのだろう。
このあたりの考え方もいろいろ調べている。

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2022/10/21

astah* Mermaid Pluginが公開された

astah* Mermaid Pluginがあるらしいのでメモ。

【参考】
astah* Mermaid Pluginをリリースしました! | astah in 5 min

Mermaid記法の書き方(Markdownテキストでチャート・グラフが描ける) - NotePM

Markdownでシーケンス図とかが書けるMermaid記法で業務フローを書いたら意外とイケたので自分なりのコツを紹介してみる | DevelopersIO

mermaid - Markdownish syntax for generating flowcharts, sequence diagrams, class diagrams, gantt charts and git graphs.

astahにMermaidプラグインを入れてみたら、既存のクラス図やシーケンス図から簡単にMermaid のソースを抽出できた。
Mermaid のソースはPlantUMLみたいに簡単。
直感的に読める。

Mermaid はUMLだけでなく、ER図やガントチャートも書ける。
つまり、設計書の図はMermaid で代用できるし、ガントチャートもMermaid で書いてしまえばいい。

なぜならば、Excel設計書は重たいし、修正に手間取るし、共有しにくいからだ。
設計書はMarkdownとPlantUMLやMermaidだけで、全てテキスト化すべきだろう。
そうすれば、Githubにソースコードと一緒に放り込んで、いつでもマニュアルとしてビルドして納品することも可能だ。
以前、そのようなアイデアも書いた。

PlantUMLを使ってExcel設計書をテキスト化するアイデア: プログラマの思索

仕様書にもExcel脱却が求められている: プログラマの思索

astahには、PlantUMLプラグインも既にある。
Mermaidも一緒に使うと便利かもしれない。

astahとPlantUMLを行き来できるastah* PlantUML Pluginが面白い: プログラマの思索

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2022/10/16

クラウド上の開発がJavaに与えた影響は何なのか

クラウド上の開発がJavaに与えた影響は何なのだろうか。
考えがまとまっていないがラフなメモ。
自分はAWSも知らないし、Go言語も知らないので、間違っていたら後で直す。

【参考】
Javaがサーバレスに至るまでの道のり

元JavaエンジニアがGoに感じた「表現力の低さ」と「開発生産性」の話 - DMM inside

Ruby->Go->Scalaという習得順序がエンジニアの爆速の成長に最適である理由 - Qiita

Javaがサーバレスに至るまでの道のりの記事を読むと、いかに軽量のWebアプリケーションを実現するか、に注力しているように思える。

従来のWebアプリケーション開発では、PerlのCGIのようなプロセス指向ではなく、JavaのServletのようなマルチスレッドの方が無駄にリソースを食わず、効率が良いと歌われていた。

しかし、サーバーレス環境では、AWS Lambdaのようにアプリをキックするような仕組みなので、アプリの処理時間だけでなく、アプリのロード時間も短いほど優位だからだ。
サーバーレス環境では、アプリを常駐させて、マルチプロセスで動く。
そして、処理が終わり、無駄に多くなったプロセスはすぐに破棄される。

つまり、クラウドでは、DockerやK8sのようなコンテナのおかげで、アプリ環境を使い捨てにできるメリットがある。
アプリも、負荷分散に応じて必要なだけ常駐プロセスを増やして、不要になれば捨てればいい。

すると、アプリのビルド、デプロイの時間も短い方がいい。
さらに、「起動時間がレスポンスタイムに含まれる」ために、アプリの起動時間も短くできれば、サーバーレス環境ではレスポンスタイムをもっと短くできて、使い勝手が良くなる。

そういう発想がJavaにどんな影響を与えているのか?
クラウド上の開発がJavaに与えた影響は何なのか?

たまたま、Javaのモジュールシステムの話の中で、jlinkコマンドがなぜ必要なのか?という話があった。
JDK9以後は、JREが配布されないので、Javaファイルを実行できない。
そこでjlinkで実行ファイルを作る必要があるという話だったが、さらにもう一つ興味深い話があった。

Java Module System 入門 その1 - YouTube

Java Module System 入門 その2 - YouTube

jlinkコマンドを使うとランタイム専用アプリを作れるが、必要なJDKライブラリだけを読み込んで、Jarファイルを作成する。
すると、jlinkで作られたランタイム専用アプリのサイズは、従来のランタイム専用アプリのサイズよりもかなり小さくなる。
不要なライブラリを除いているからだ。
実際、デモ画面では200Mから30Mまで小さくできた例があった。

つまり、jlinkコマンドを使えば、クラウドのサーバーレス環境でアプリを実行する時、コンパイルしたアプリのサイズを小さくできる。
その分、クラウドのリソースを抑えられるし、アプリの起動時間(ロード時間)も短くできるメリットが出てくる。

すなわち、jlinkコマンドはクラウド上で配布するアプリに適合するように作られたものなのだろう。
Javaもクラウドに特化したアーキテクチャ設計を取り込んでいるのだろう。

そんな話を聞くと、サーバーレス環境のアプリでは、ランタイム専用アプリはバイナリファイルでサイズが小さいほど優位性が高いことになる。
マイクロサービスの実装言語はGoが主流であると聞くが、その理由は、Goで簡単にバイナリファイルが作れて、さらにそのサイズが小さいので、性能的にも優れている点があるのではないだろうか?
そして、Javaもそういう流れの設計手法を取り入れるために、jlinkコマンドのようなアーキテクチャが必要になってきたのではないだろうか?

ここで、クラウド上のシステム設計では、ドメインごとにアプリを細分化したマイクロサービスアーキテクチャが流行していて一般的になってきている。
マイクロサービスアーキテクチャが必要な理由は、普通のWebシステムでもクライアントからのアクセスがブラウザだけでなく、スマホだったりタブレットだったり、色んな端末に対応する必要があるので、公開APIを通じて制御できるよに、色々分割したほうが楽になる点があるだろう。
また、逆コンウェイ戦略のように、システム開発しやすいチーム組織の観点で設計すると、小さなコンポーネントの集まりになるようにシステムを分割して、マイクロサービスアーキテクチャで連携できるようにした方がよい点もあるだろう。

マイクロサービスアーキテクチャのそんな特徴を活かすには、おそらく、Go言語やjlinkコマンドのような実装言語やビルド方法も必要になってくるのだろう。

そんなことを考えると、クラウド上のシステム開発では、フロントWebシステムをRubyやJava、Pythonで作ったとしても、AWS lambdaやマイクロサービスの部分はGo言語やjlinkを使う、といったように、複数のプログラミング言語を適材適所に当てはめて開発する必要性があるのではないか。
つまり、クラウド上の開発は、単にコンテナ部分のアーキテクチャを使いこなすだけでなく、複数のプログラミング言語を適材適所で使い分けるノウハウも必要になってくるのだろう。

この辺りは妄想に近いかもしれないので間違っているかもしれない。
ただ、クラウドというアーキテクチャは、Webリソースをふんだんに使える富豪プログラミングを可能にしたからこそ、それに特化した設計手法がどんどん現れているのだろうと思う。

この発想が正しいのか、これから検証していく。

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