Javaのモジュールシステムの考え方をまとめてみた
Javaのモジュールシステムの理解が深まったのでメモ。
Java初心者のラフなメモ書き。
【1】モジュールシステムはなぜJavaで必要なのか?
異なるJarであっても、同一パッケージ名が衝突する問題があった。
モジュールは、パッケージを区別するための仕組み。
パッケージはクラスを包み込み、モジュールはパッケージを包み込む。
Javaはオブジェクト指向言語なので、機能追加したい場合、開放閉鎖原則に従って、既存クラスは修正せず新規クラスを追加する。
Rubyのオープンクラスみたいなもの。
すると、クラスがどんどん増えるので、パッケージでクラスを分類しようとする。
そして、パッケージをまとめたJarを配布して、開発者に利用してもらうようにする。
しかし、Jarファイルもどんどん増えてしまって、異なるJarなのに同一パッケージで衝突する場合がある。
Mavenでこういう依存ライブラリのJarを管理するけれど、名前衝突が多くなるのだろう。
【2】なぜ、無名モジュール、自動モジュールは必要なのか?
Java9以後はモジュールシステムを使う必要があるが、以前のJara8のJarファイルはモジュールに対応していない。
Java8のJarファイルを利用できるような環境としてモジュールが導入された。
基本は、Classpathにある無名モジュールが一般的だが、modulepathにないので、名前付きモジュールから無名モジュールを読み込めない。
そこで、modulepathにJarファイルを置いて、自動モジュールに変更して、名前付きモジュールから自動モジュールを読み込めるようにした。
実際の現場を見ると、Java8までで止まっているWebシステムは割と多いように感じる。
たぶん、Java9以後のモジュールシステムに対応するように、移植するのは難しい場面があるからだろう。
【3】無名モジュール、自動モジュールとは何か?
無名モジュールはJava9以前のJarで、Classpathにある。
以前のコマンドみたいに、java -cp **.jarみたいに使う。
なお、無名モジュールのJarはclasspathにあるので、名前付きモジュールから読み込めない。
自動モジュールはJava9以前のJarで、ModulePathにある。
java --module-path **.jar とか、java -p **.jarみたいに使う。
名前付きモジュール--> 自動モジュール、自動モジュール --> 名前付きモジュールの両方で読み込める。
なぜならば、modulepathに名前付きモジュールも自動モジュールも両方配置されているから。
なお、無名モジュールも自動モジュールも、パッケージのクラスは全て公開されているから、モジュールシステムのように公開の制限はできない。
無名モジュールはJDK9以前のライブラリ。
module-info.javaもMETA-INF/MANIFEST.MFもない。
ClasspathにJarを配置していると、java --module-path **.jarが使えない。
自動モジュールは、META-INF/MANIFEST.MFにAutomatic-Module-Name属性が指定されている or jarファイル。
JDK9以後は、java -p **.jarで実行する。
自動モジュールはできるだけMETA-INF/MANIFEST.MFにAutomatic-Module-Name属性を指定する。
なぜならば、Jarファイル名は書き換えられやすいので間違いやすい。
META-INF/MANIFEST.MFに記述すれば、Jarファイル名が書き換えられても呼び出されるJarは同じになるので安全。
【4】jlinkはなぜ必要なのか?
専用のランタイム用アプリを作りたい。
JDK9以後は、JREがないから。
さらに、クラウドのサーバーレス環境でアプリを実行する時、コンパイルしたアプリのサイズを小さくできる。
クラウドのリソースを抑えられるし、アプリの起動時間(ロード時間)も短くできるメリットが出てくる。
つまり、AWS lambdaみたいに、イベント駆動で多数のプロセスを並行起動するような場面では、アプリサイズが小さいほど性能も良くなるし、デプロイもやりやすい。
たぶん、クラウドの開発に特化するようにJavaも進化してきているのだろう。
クラウド上の開発がJavaに与えた影響は何なのか: プログラマの思索
【5】jdeps --jdkinternal はなぜ必要なのか?
JDKの内部APIでクラスレベルの依存関係を検索するためのコマンド。
古いJava8のJarファイルがどんなJDKライブラリを使っているか調べるために使う。
Java9以後は公開されていないJDKライブラリは排除していくべきという考え方。
Java9のモジュールへ移行する時や、jlinkコマンドで小さい専用ランタイムアプリを作りたい時に利用できるだろう。
【6】なぜServiceLoaderは必要なのか?
ServiceLoaderは、Java9以前で依存性注入(DI)を実現する方法に過ぎない。
たとえば、Sampleインターフェイスだけ公開して、SampleImpl実装クラスは呼び出さないように実装したい。
META-INF/servicesに、実装クラスを記載したテキストファイルを作って、ServiceLoaderが読み込んで動的に切り替える仕組みにしただけ。
Java9のモジュールシステムでは、ServiceLoaderを利用する場合、module-info.javaにprovides~with~でIFを書いて公開する。
「公開IFの提供」をmodule-info.javaで宣言する => provides 公開IF with 実装クラス(SPIを実装)
「公開IFの利用」をmodule-info.javaで宣言する => uses 公開IF名(SPIとして使う)
ServiceLoaderはJDBCドライバの実装にも使われているので、わりと一般的。
【7】Javaのモジュールシステムは、Javaの進化でどのような意義を持つのか?
モジュールシステムは、Javaをクラウド開発に適用したり、デプロイしたモジュールやライブラリの移植性を高めるために必要なのだろう。
しかし、Javaは過去の遺産が多すぎるために、どんどん仕様が複雑になってきていると思う。
実際、Jarの依存性のエラーメッセージの種類が多くなっているために、問題解決するのは大変だろうと想像する。
Javaのモジュールシステムは複雑性をより増している: プログラマの思索
一方、Javaはオブジェクト指向言語だけでなく、関数型言語の一面も持つ。
実際、OptionalやStreamなどのモナドのAPIはまさに関数型言語そのものだ。
Javaが関数型言語の特徴を持つようになった理由の背後には、クラウド上で多数のプロセスを並行で動かす時に、MapReduceの仕組みがあれば、負荷分散をより活用できるメリットを活かしたいからだろう。
Javaはオブジェクト指向言語ではなく関数型言語だった~「[増補改訂]関数プログラミング実践入門」はお勧めの本だ: プログラマの思索
Javaはなぜ関数型言語になろうとしているのか: プログラマの思索
JavaSilverの感想~Javaはオブジェクト指向と関数型言語の2つの性格を持つ: プログラマの思索
そんなことを考えると、20年前にUMLやJavaを使って、オブジェクト指向設計に熱狂していた時代はもう古くなっている。
そういう価値観はもはや終わったように思える。
そして、時代は更に進化しているわけだ。
一方、その進化はどんどんソフトウェアの複雑性を増やす。
ソフトウェアの本質は複雑性にあるが、その複雑性をどのように手懐けてコントロールすべきなのか?
今も昔もソフトウェア開発はこの問題から逃れられない。
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