ERP・財務会計・経済学

2021/10/10

計量経済学における統計上の根本問題

Rによる計量経済学 第2版を読んでいたら、興味深いことが書かれていたので、考えたことをメモ。

【1】経済学の実証が物理や科学の実験と異なる点は、経済現象は実験室で観察できないこと。
社会や人間をこちらの指示通りに配置したり、再現性があるように何度も繰り返し実験することができない。
採取できた政府の統計データすら、すでにバイアスが紛れ込んでいる。

また、取得できるデータは受け身になっている。
自分たちから積極的にデータを採取することは、昨今のSaaSやSNSのおかげで、大量のデータをビジネスの副産物として採取できる。
しかし、それらはまだ一部に限られていて、世の中にあふれているデータを元に、自分で収集して分析する場合も多い。
すると、それらのデータにはバイアスが紛れ込んでいて、そのままでは使えない。
パネルデータ分析に使おうとするなら、その前提に合うようにデータを精製しなければならない。

Rによる計量経済学 第2版で最も考えさせられたことは、経済現象の分析にあたって、誤差が古典的最小二乗法でおかれる仮定を満たさない場合が多いということだ。
よって、生データのままでは、回帰分析すら行えなくなる。

実際、新聞やネットニュースでいろんな統計データを元にした意見や主張が出てくるが、そもそも古典的最小二乗法を満たさない場合の考慮を踏まえて、正しい推定が行われているのか、疑問に思える場合がかなり多い気がする。
奥村先生のツイートを読んでいると、そう感じる時がある。

【2】古典的最小二乗法の仮定は下記の5つがある。

1・誤差はプラス側やマイナス側に偏らない
2・誤差同士の大きさに関係がない。(自己相関なし)
3・誤差の大きさの平均は一定。(均一分散)
4・誤差と説明変数の大きさに関係がない
5・誤差は正規分布に従う

しかし、経済現象を考えると、この5つの過程を満たさない具体例が簡単に見つかる。

1・誤差はプラス側やマイナス側に偏らない

生産における投入と産出の関係を分析する時に発生する問題。
投入量と産出量には物理的関係がある。
生産プロセスでは何らかのロスが発生するので、物理的生産可能量を基準にすると、回帰分析の誤差はマイナス側だけ発生する。

2・誤差同士の大きさに関係がない。(自己相関なし)

時系列データを分析する時に発生する問題。
データの発生に順番があるので、過去データが直近であるほど現在のデータに影響を与えてしまい、後のデータの誤差に影響を与える。
指数平滑法を連想する。

経済活動では瞬時に終了することはないので、一定期間が必要になる。
そのため、前期のデータが後期のデータに影響し、自己相関の現象が発生しやすい。
経済学では時系列データが多いので、自己相関をいかに排除するか、に注力しているように思える。

3・誤差の大きさの平均は一定。(均一分散)

クロスセクションデータを扱う時に発生する問題。
たとえば、ある国のデータを集めると、大国と小国では規模が異なるので、大国の方が誤差が大きくなる。
つまり、誤差分散の大きさは一定ではない。
経済学では、大国と小国、大企業と中小企業などのデータが混じっていて比較するから、不均一分散の考慮も重要になる。

たとえば、パネルデータ分析では、仮定2と3、つまり、自己相関なしと均一分散の仮定を満たす必要がある。

4・誤差と説明変数の大きさに関係がない

連立方程式体型の経済モデルを扱う時に発生する問題。
市場の分析では、需要関数と供給関数が近郊を決定する時にお互いに影響し合うので、誤差と説明変数に影響が出てしまう。

たとえば、需要均衡など市場で数量と価格が決定される場合など、経済が複数の関数で表現される構造を保つ場合、回帰式に現れる誤差の大きさは、様々な影響を受けて決定される。
その結果、説明変数との間に関係を持ってしまうので、古典的最小二乗法では正しい推定ができない。
つまり、回帰分析に正当性がなくなる。

5・誤差は正規分布に従う

正規分布は左右対称であるが、定性的尺度(働く=0、働かない=1)、比率(耐久財の普及率)ではそのままでは満たさない。

【3】僕は計量経済学の知識不足だが、古典的最小二乗法の仮定を満たさない場合にどこまで推定できるのか、古典的最小二乗法を部分的に満たすような場合はどこまで推定できるのか、を直近30年くらいで研究が進められているように思える。

信頼性革命や構造推定は、たぶんそういう流れの研究ではないか。

経済学は信頼性革命や構造推定により大きく変貌している: プログラマの思索

そんなことを考えると、大量データをクラウドやプログラムで簡単に統計分析できる現在、計量経済学は非常に面白い分野になっていると思う。
IT技術者は積極的にこの分野に関わってもいいと思う。
なぜなら、IT技術者はすでにツールを持っているので、実際の生データを片っ端から分析してみることで、統計学を習得できるからだ。小難しい理論は後から理解すればよい。
具体例をたくさん経験した後で、統計学の本を読み直せば、自分の経験を整理するだけで簡単に理論を生身の知識として理解できるからだ。

今は面白い時代になっているのだろうと思う。

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2021/08/07

様々な確率分布は正規分布のバリエーションに過ぎない

経済数学の直観的方法 確率・統計編 (ブルーバックス) | 長沼 伸一郎 |本 | 通販 | Amazon」で、様々な確率分布は正規分布のバリエーションに過ぎない、という言葉で気づいたのでメモ。
以下はラフなメモ。

【参考】
17-3. 中心極限定理1 | 統計学の時間 | 統計WEB

 「経済数学の直観的方法 確率・統計編」のあとがきに代えて

「推計学のすすめ」「経済数学の直観的方法~確率統計編」の感想: プログラマの思索

統計学の考え方に関する感想: プログラマの思索

経済学は信頼性革命や構造推定により大きく変貌している: プログラマの思索

中心極限定理により、全ての確率分布を集めると正規分布に一致する。
逆に言えば、正規分布からあらゆる確率分布を導き出せる。

正規分布を有限回数の離散分布にすれば、二項分布になる。
1回あたり1万分の1ぐらいの確率分布を数年に渡って眺める場合、正規分布を1回毎の確率と時間を大きくスケール変換すればポアソン分布。

正規分布から、一定のバイアス部分、つまりトレンドだけを抽出すれば、ベキ分布。

正規分布の母集団から、少ないサンプル数で標本を取り出し、平均値を推測するのがt分布。
正規分布の母集団から、複数の標本を取り出し、複数の標本の不偏分散のバラツキを見たのがF分布。
正規分布の母集団から、任意の標本を取り出し、その不偏分散のバラツキを見たのがカイ二乗分布。

こういう理解を元にすれば、目の前にあるデータから、本来の母集団のデータ構造を推測するにはどのように考えたらよいか、を少しは考えやすくなると思った。

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2021/07/18

規模の経済から個人の能力重視へビジネスモデルが変化している

製造業からソフトウェアのビジネスモデル変換の鍵に、規模の経済から個人の能力重視の観点があるツイートを見つけて、なるほどと思った。

akipiiさんはTwitterを使っています 「すごく参考になる。規模の経済から個人の能力重視への変化」 / Twitter

r.ishibashiさんはTwitterを使っています 「この例えは良いな。 https://t.co/xLQjAuij1m https://t.co/17u8ZF9jgM」 / Twitter

(引用開始)
"シスコはスキルがスケール(規模)に勝った唯一の例だと考えていたが、そうではないのだ、と。シスコがうまく活かしているのは、一企業、一産業の枠を超えた大きなうねりなのである。  従来コンピュータや通信機器の分野で成功するには、数十億ドル規模の大型プロジェクトで大量のエンジニアをとりまとめ、さらに大量の労働者を管理して複雑な電子機器を製造することが必要だった。それをやれる能力が備わっていたから、 IBMや AT& Tは繁栄し、日本は技術集約型の成功を収めることができたのである。だが一九九六年の時点では、成功のカギを握るのはソフトウェアになっていた。そしてソフトウェアなら、大企業でなくても、頭の良い連中が何人かそろえば書き上げることができる。規模の経済から個人のスキルへ──これが、大きな変化のうねりだった。戦争の主流が、正規軍の衝突からゲリラ戦に移ったようなものである。"
― from "良い戦略、悪い戦略 (日本経済新聞出版)"
(引用終了)

以前読んだ記事で、スクラムは組織の仕組みで駆動するのではなく、メンバー個人の能力を重視して、個人のパフォーマンスで駆動しようとする内容を思い出した。

アジャイル開発とウォーターフォール型開発の違いについて再考: プログラマの思索

アジャイルとウォーターフォールは文化や価値観のレベルで異なるという話 - たなかこういちの開発ノート

ソフトウェアビジネスが主流になる以前は、設備やリソースなどの資本を集約することで、規模の経済を実現し、コスト削減メリットを活用するのが戦略の基本だった。
一方、ソフトウェアビジネスでは、人月の経験則の通り、プロジェクトメンバーが増えるほど生産性は限界逓減する。
つまり、少ない優秀なメンバーでソフトウェア開発をやり抜く方が生産性が圧倒的に高い。
そのやり方を実現した方法の一つがアジャイル開発であり、スクラムである、と捉えた方が、より真実に近づける気がする。

ブルーカラー労働者主体、事務処理主体のホワイトカラー主体の社会では、設備や人員を大量にかき集めて規模の経済で圧倒する戦略がビジネスモデルの基本だった。
一方、専門技術職のホワイトカラー主体の社会では、メンバー個人の能力をいかに活用できるか、が鍵を握るし、そのための労働環境づくりが大事になってくる、というストーリー。

規模の経済については以前、色々考えていた。
今でも事業を発展させていくと、必ず規模の経済に即した経営戦略を取らざるを得なくなるが、一方でソフトウェアビジネスを生業にする場合は、スクラムのような個のスキルで駆動する開発スタイルを取り入れるべきという考え方も持っておきたい。

ビジネスの基本戦略には規模の経済があるのではないか: プログラマの思索

規模の経済と経験曲線効果のメモ: プログラマの思索

ソフトウェアの複雑性は本質的な性質であって偶有的なものではない: プログラマの思索

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2021/06/20

なぜか2000年代にIT系の良い本が多いと感じる今日この頃

最近、Ciscoベースのネットワーク、組み込みソフトウェア開発・設計のためのモデリング、業務システムやERPを設計・分析するためのデータモデリングや業務フローの本を読み漁っている。
他にも、Matlab・Scilibのようなシミュレーション関係の本も探している。

たとえば、下記の本になる。

【1】「インフラ/ネットワークエンジニアのためのネットワーク技術&設計入門 第2版」「インフラ/ネットワークエンジニアのためのネットワーク・デザインパターン 実務で使えるネットワーク構成の最適解27」は、オンプレのネットワーク設計の解説でピカイチだった。
インフラ担当者なら当たり前の知識なのだろうが、アプリ開発の経験しかない僕にとってはとても新鮮だった。
クラウドやInfrastructure as Codeが何を解決しようとしているのか、について、考えさせてくれた。

なお、この本は2010年代の本だが、ほとんどのCiscoルータ・スイッチの解説・コマンドリファレンス本は2000年代が多い。

【2】「組込みソフトウェア開発のための オブジェクト指向モデリング (組込みエンジニア教科書)」も良かった。
話題沸騰のポットを題材に、ハードウェアのポットを要件定義から、オブジェクト指向設計、C++のソースコードまで落としてくれる。
業務システム設計とは違う観点で、状態遷移図やパッケージ間の依存関係が非常に重要になってくる。
2006年頃の出版で絶版。

【3】「7つの要素で整理する業務プロセス (for Mutual Interest SERIES)」は、業務フロー図の演習本だ。ひたすら、7種類の業務フローのサンプルと解説をしてくれている。
内部統制が導入された頃に、ITに関係ない人が業務フローを使うことになった時に使われたのだろう。
2007年頃の出版で絶版。

【4】しかし、それらの本は2000年代に良い本が多く、2010年代はほとんど出版されていない。
オブジェクト指向モデリング、データモデリング、オンプレのネットワーク、シミュレーションなどの基本的な技術の解説本がほとんど出版されていない。
なぜなのだろうか?

おそらく、IT技術のトレンドが激しく変化してしまい、従来の設計や技術は基盤として埋め込まれて、見えなくなってしまうくらい、当たり前になってしまったからではないか。
実際、データモデリングやオブジェクト指向モデリングも、その概念や考え方は、20年前も10年前も変わらない。

しかし、SOEのWebシステムでも、枯れた業務システムであっても、データモデリングは必須だし、オブジェクト指向モデリングも知っていて当然だろうが、そういう技術を知らずにどっぷり最先端の技術にハマってしまう。
今となっては、最先端の技術から古い技術に遡るしか無いのだろうが、基本的な技術無しで取り組んでいる感じで、何か腑に落ちない時が多いと思う。

2000年代に良い本が多いのに、割と絶版になっていたりする。
すると、それらの本に含まれているノウハウや優れた説明は継承されることなく消えてしまう。

たぶん、ベースとなる技術はもはや当たり前であって、ベースの技術や基盤の上で、次々に新しいサービスをどんどん生み出していくのが普通になっている。
だから、逐一古い基礎的な技術を掘り返すのは手間がかかり過ぎるのかもしれない。

この辺りの理由は色々探りたい。
そして、その悪影響についても考えてみたい。


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2021/06/05

組み込みソフトウェアの根本問題~対象物の状態遷移を記述できれば、制御が可能だ

「組み込みソフトウェアでは対象物の状態遷移を記述できれば、制御が可能だ」という文言をネットで2箇所見つけた。
ラフなメモ。

組み込みソフトウェアのモデリングにおける根本問題とは何だろうか?
業務システムのモデリング、ネットワーク設計の根本問題とは異なる。

業務システムのモデリングでは、業務ロジックをいかにER図に落とし込めるか、という点に集約できると思う。
以前書いた。

業務ロジックをデータモデリングはどこまで表現できるか?: プログラマの思索

その考えから、ビジネスの一連の業務フローが表現されて、データのライフサイクルと使われる帳票が導出されて、最終的にERPになるイメージ。

一方、ネットワーク設計の根本問題は、ネットワークの品質をどのように保つか、という点に尽きると思う。

SDNアーキテクチャの本質は巨大な仮想L3スイッチを実現したことではないか: プログラマの思索

なぜInfrastructure as Codeが必要なのか?: プログラマの思索

ネットワークの根本問題は何か~昨今のIT技術と時代の変化についての考察: プログラマの思索

ネットワークの品質は、耐障害性の観点でのL2・L3の冗長化、セキュリティの観点でL2のスプーフィング対策・L3のパケットフィルタリング・認証、L4層以上のファイアーウォールやVPN、音声や動画やデータの通信品質を保つ観点のQoSなどの技術が使われている。
さらに、巨大で複雑なネットワーク構造を構成管理の配下に置くために、SDNやぜInfrastructure as Codeの技術が生まれた、というイメージ。
特に、昨今は、データモデリングやオブジェクト指向設計よりも、ネットワークの仮想化技術が熱いと思う。
その中にクラウドも含まれるわけだが。

では、組み込みソフトウェアのモデリングにおける根本問題とは何だろうか?


組み込みモデリング - MONOist

(引用開始)
組み込みシステム開発の世界には、大きく2つのモデル<ソフトウェアのモデル>と<制御のモデル>が存在する。
(引用終了)

組込みソフトウェア開発のための オブジェクト指向モデリング (組込みエンジニア教科書)にこんな感想があった。

(引用開始)
殿堂入りNO1レビュアー
kaizen
状態遷移が肝でしょうか。

2008年3月21日に日本でレビュー済み
対象物の状態遷移を記述できれば、制御が可能だという意味で、オブジェクト(対象)指向は有効なのだと思われます。
モデルを作る場合に、対象(オブジェクト)を記述していくのが王道なのだと思われます。
本当に必要な技術と、内容を確かめるために使う技術と、試験のための技術との詳細な説明があるとよいかもしれません。
(引用終了)

勝手な想像では、組み込みソフトウェア設計では、単純に部品をクラス図やブロック図に表現するよりも、そこから、抽象度を上げた対象物の状態遷移を見抜くことが重要ではないだろうか。
対象物の状態遷移を記述できれば、プログラムで実装可能であり、その制御プログラムで機械に作業を指示できる。

しかし、状態遷移は爆発しやすい、という根本問題は以前からある。
だから、状態が爆発的に増えてコントロールできなくなるために、レイヤーごとに分けたり、抽象度を上げ下げしたりして、ソフトウェアの複雑さを制御しようとしているのではないか。

この発想を元に、色々考えてみる。

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2021/06/03

RPAはデータモデリングを復活させるのか

RPAがノーコード開発とみなされることで、野良データを増やして、データを分散させてしまって破綻しそうな話がツイートで流れてた。
また、アクターが3人出てくる企業システム開発は、BtoCのWebシステム開発とは異なるよ、というデータモデリングの記事もあった。
ラフなメモ。

Web世代の皆さん、企業情報システムを見たことがありますか? | 日経クロステック(xTECH)

Windows10でRPAが手軽に使えるようになって、ちょっとしたRPAブームかもしれない。
しかし、RPAをノーコード開発と捉えて、Excelを単に置き換えたようなシステムで作ると、破綻する。
データが正規化されていない、データが一元化されていない、などの問題が噴出するのは誰でも知っているが、データモデリングを知らなくても作れることで、よりその問題が大きくなったのかもしれない。

また、SoEのWebシステム開発だけで経験を積むと、バックエンドの業務も含めたより業務が複雑になる基幹システムまで目が向かなくなる。
昨今のコロナワクチン接種予約システムの件も連想させる。

データモデリング、あるいはオブジェクト指向モデリングも、最近はアジャイル界隈でも聞かなくなった。
10年以上前に終わった感じもある。
しかし、その有効性は今も変わらないのだろうと思う。

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2021/06/01

顧客が本当に欲しいものは何か?

顧客が本当に欲しいものは何か?というイメージが面白かったのでメモ。

[姿勢編]理由無き要求は機能化してはいけない | 日経クロステック(xTECH)

現場は軽トラックで十分なのに、管理職や経営陣は重装備のトラックを要求してる。
しかし、予算は自転車並みなので、出来上がってくるのは人力車とか。
足りない機能は人力の運用でカバーするのが前提。
いかにも、現場が強い日本向けのシステムみたい。

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2021/05/14

日本人の弱点は忖度しすぎること、理論化できないことではないか

4月末と今夜、平鍋さんがアジャイル開発について語る勉強会を聞いた。
日本人の弱点は忖度しすぎること、理論化できないことではないか、という気づきをラフなメモ書き。

【参考】
今こそ必要な実践知リーダーシップとスクラム - connpass

BPStudy#164?アジャイル開発とスクラムの今を語ろう - connpass

【1】野中先生の肉声を初めて聞いた。
86歳らしいので、平成上皇と同い年らしい。
すごくハキハキした口調で、英語の論文にも慣れているのだろうか、知的バトル、とか、割と英単語が出た。

スクラムを生んだジェフがすごいのは、ベトナム戦争で偵察機の経験があったこと。
その経験をベースに、スクラムを生んだ。
ソフトウェア開発の手法は幾多数多あるが、それを理論化できたのはジェフがフィロソフィーを持っていたから。

野中先生の論文でも、スクラムでも、共感ありきで始まる。
欧米の哲学は、デカルト以来、コギト、我思う故に我あり、から始まるが、そうではなく、共感をベースにした。
だから、上手くいく。

一方、日本人は、元々共感力があるので、スクラムをやるのにもっと共感を重視しようとすると、忖度しすぎてしまう。
忖度するのではなく、もっと知的バトルをすべきだ、と。

僕らの頃は、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われていたが、DXの流れに乗れず、今はその面影もない。
だから、またジャパン・アズ・ナンバーワンを目指してほしい、と。

【2】日本人の弱点は忖度しすぎること、理論化できないことではないか、という考えを思い巡らすと、今まで読んできた本のいろんなフレーズを思い出してくる。

【3】「採用基準」「生産性」はマッキンゼーの元コンサルが、日本人や日本の組織に足りない要素2つを書いている。
それは、日本人には問題解決リーダーシップの能力が足りないこと、問題解決の生産性の意識が低いこと、の2つ。

リーダーシップ経験のない日本人が多すぎるから、評論家ばかりで、実際の問題を泥臭く解決していこうとする能力も意識も低い。
リーダーシップとは、自分の意見を持ち、周囲を巻き込んで、リスクを取って、問題を解決していく。
しかし、リーダーシップを発揮する日本人は、出る杭は叩かれる、ばかりに思われるので、たぶん自然に忖度してしまう。

また、生産性をコストダウンの事ばかり考えすぎる。
日本人が得意なプロセス改善の手法は、コスト低減による付加価値を上げる手法の一つに過ぎない。
生産性=付加価値/コストで考えるならば、コスト低減よりも、付加価値を圧倒的に増やす方がはるかに生産性は上がるはず。
しかし、日本人サラリーマンは斜陽産業でコスト低減ばかり経験しているので、ホワイトカラーが付加価値を上げるために、今までの手法を捨てて、全く新たなアイデアや手法を採用して、リスクを取っていく、という発想も能力もない。

【4】「経済数学の直観的方法 マクロ経済学編」では、世界の経済戦争の重心が、製造業の競争力強化から、世界全体の資金の流れを上手く誘導して流す方向に変わってしまった。
しかし、日本は、製造業があまりにも成功したので、マクロ経済学における動的均衡理論を取り入れる機会を逸してしまった。
そして、世界中の中央銀行がインフレターゲット政策を運用し始めた頃、慌てて、動的均衡理論を学習しようとしたが、従来のケインズ経済学とは異なり、解析力学をベースとした高度な数学理論を使うので、とても学習しづらい。

ちょうど、欧米では、これを学んだ人たちが政治経済の中枢に占めているのに、日本では学習し損なった世代がブランクになり、そのギャップを埋めることが難しい状況らしい。

かつて、日本では、ケインズ理論に従って、政府の公共政策による景気浮揚策は良いことだ、という理解が、割と世間の人たちも認識が共有されていた。
ちょうど、その頃は、日本の製造業が無敵の時代だった。
しかし、コンピュータやITが直近の四半世紀でまたたく間に普及して、ITなしでは生活もビジネスも経済も成り立たなくなった。
経済学の主導権もケインズ理論から動的均衡理論に代わったが、日本は追いつけていない。
さらに、世界中の資金を自国に誘導するように、情報や経済理論を整備して発信していく、というやり方に日本は乗り遅れてしまった。
「ミクロでマクロを制する」という発想は、日本人は弱いらしい。

【追記】
平鍋さんが「先生へお礼のメッセージを送ろう」とtwitter 上で平鍋がよびかけ、集まったコメントが公開された。

野中郁次郎先生へのみなさんからの手紙

自分のコメントも掲載されていて恥ずかしい。
今一度読み直すと、日本人には共感力よりも、知的バトル、知的コンバットが必要なのだろう。
つまり、対立することを恐れず、もっと知的論争をすべきであり、お互いにもっと衝突して、その後で握手する事が大事なのだろう。
知的論争に忖度は無駄。


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2021/04/29

デジタル庁で応募中のアイデンティティアーキテクトは昔のDAと同じ役割か?

デジタル庁でアイデンティティアーキテクト、データアーキテクトを応募しているツイートを見つけたのでメモ。
ラフなメモ書き。

【参考】
yoshi sanさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクトなる独立したポジションがあるんだ。」 / Twitter

からくりさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクトってなんだよと思ったけどめちゃまともな内容だった」 / Twitter

Yoshikazu NojimaさんはTwitterを使っています 「デジタル庁のアイデンティティアーキテクト、超重要かつ超高難易度な仕事にしか見えないのだけど、どんなキャリアパスを積んで、どれほどの研鑽を積めば担えるのか想像もつかない。 https://t.co/2iU02v4WLr」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクトとは、昔のDAと同じ役割か?」 / Twitter

からくりさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクト?- 中途採用|デジタル庁創設に向けた準備サイト https://t.co/raIDjeGhb9 めちゃくちゃ楽しそう(発狂しそうなほど大変だと思うけど)」 / Twitter

ミジンコOLさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクト、あの先輩しか思い浮かばない。 ・行政証明書コンビニ交付サービスの開発経験有 ・某メディア企業の大型サービス利用ID統合経験 ・プラポリにも詳しい ・認証・認可詳しい ・IPA上級資格9割持ってる ・泥臭いPJTの中でも爽やか #デ https://t.co/Ue6JVxsyLh」 / Twitter

【参考】
中途採用|デジタル庁創設に向けた準備サイト

『アイデンティティ管理技術解説』システムアーキテクトを志す方のために IPA

【参考1】
アイデンティティアーキテクト?- 中途採用|デジタル庁創設に向けた準備サイト

(引用開始)
募集背景・業務内容
デジタル庁(仮称)においては、行政サービスのデジタル化・ワンストップ化を推進するにあたって、利便性が高く安全な識別・認証の仕組みを構築することにより、多種多様なシステムにまたがった円滑なデータ連携を実現していくことが求められます。

アイデンティティアーキテクトは、各省庁の担当者や専門家と連携して、デジタルガバメントのサービス高度化に必要な、アイデンティティ管理、データ連携の枠組みを構想し、その整備を推進する役割を担っていただきます。

具体的な業務内容は、以下のとおりです。

政府情報システムに関わるアイデンティティ管理の計画策定全般

住民制度、公的個人認証、マイナンバー制度に関わる個人のアイデンティティ管理もしくはGビズID、商業登記電子証明書等に関わる法人等のアイデンティティ管理

行政事務と住民・事業者向けシステム、住民・事業者向けシステム間をつなぐ国のシステムを理解した上での、業務プロセスの見直し、移行計画の立案、変革の推進

国民・事業者向けサービスや各省庁のシステムにおける利便性の高い安全な識別・認証の仕組みづくり

各省庁や地方公共団体の専門家と連携した横断的なプロジェクトの推進
(引用終了)

【参考2】
データアーキテクト?- 中途採用|デジタル庁創設に向けた準備サイト

(引用開始)
募集背景・業務内容
データアーキテクトは、デジタル庁(仮称)において、社会全体のデータの現状と将来像を俯瞰し、データ戦略の策定を主導するとともに、標準やルールに加え基礎データ、プラットフォームなどを整備し、その活用を推進していくことが求められます。また、多数のステークホルダーとの調整を進めながら、デジタル時代の新たなスタンダードを構築していくための強いリーダーシップが求められます。

政府は、多量のデータを保有するデータホルダーとして、またデータプラットフォーマーとして、先導的な振る舞いを期待される立場です。本ポジションは、あらゆる社会・経済活動に不可欠なデータを、国の競争力の源泉とするために、また、豊かな生活を実現する上で不可欠な基盤とするために、中心的な役割を担っていただきます。

具体的な業務内容は、以下のとおりです。

体系的なデータ整備に係る中長期戦略・計画の策定

データ標準・データ連携プラットフォームの整備

政府内におけるデータサイエンスやAIの活用の推進

デジタル庁(仮称)内外のデータに関する人材育成

データに基づいたEBPM(Evidence-Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)の推進

国際機関や関係各国との交渉
(引用終了)

【感想1】
デジタル庁でアイデンティティアーキテクト、データアーキテクトの募集背景・業務内容を読むと、本当にガチの内容だ。
個人的には、一昔前のデータアーキテクトの業務を連想する。

その頃は、テーブルを新規追加したり、カラム1個を追加するのに、わざわざデータアーキテクトに申請して、内容の詳細や対応期限を説明して、開発環境にやっと反映される、みたいな牧歌的な時代だった。
データアーキテクトは、ER図やデータディクショナリの保守担当者みたいなイメージを持っていたので、あまりカッコイイ職種には感じなかった。

しかし、実際の業務システムの要件定義では、データモデリングの技量の違いがその後の設計、開発の室に直結する。
業務フローのようなプロセスばかり書いても、フワフワしていて、テストでデスマーチになりがち。
データ基盤がしっかりしていれば、そこから業務の制約条件をプログラマも読み取れるし、テストデータを作ったり、保守していくのもかなり楽になる。

さらに、データアーキテクトの職種だけでなく、アイデンティティアーキテクトという職種まで応募しているのはとても興味深い。
単に、公共サービスのデータ基盤、データディクショナリを揃えるだけでなく、その根本となる一意な主キーを見出し、それを維持管理していく重要性を認識しているのだろう。
もちろん、マイナンバー制度という国民をユニークに識別する仕組みにも直結する。
国民を一意に識別してデータを管理できる基盤があれば、今のコロナワクチン予防接種の履歴管理に使えるし、今後のワクチンパスポートの発行にも発展できる。
他にも、収入や資産の追跡、税の徴収だけでなく、本当に困っている人たちを特定して補助金を直接届ける、という仕組みも作れるはず。

また、アイデンティファイアの整備は、認証基盤にも直結する。
政府の膨大な公共システムを利用する場合に、利用者の国民が安全に利用できるだけでなく、バックエンドの事務に携わる公務員や保健所の人たちが安全にログインできて、その操作履歴をきちんと管理できる仕組みも必要。
さらには多種多様な利用権限の制御まで考える必要もあるだろう。

つまり、価値ある公共サービスを提供するためにデータ基盤のアイデンティファイアは必須要件だが、人権やプライバシーの保護の観点からアイデンティファイアの認証・認可・アカウンティングの機能要件も必須という、高度なハードルがある。
想像するだけでも、アイデンティティアーキテクトという職種は非常にタフで難儀な内容であるのは間違いない。

だからこそ、こういう職種が必要ときちんと公開して打ち出しているのは信頼が持てる。

【感想2】
最近はITコミュニティ以外にも、官公庁の関係者がオンライン勉強会で登壇して色々話してくれる場が多くなった。

直近で、農林水産省とウーオが語る!林業・水産業をITで変えるチャレンジ - connpassを聞いた時、今の官公庁で最もデジタル化が進んでいるのは、実は農林水産省なんです、という発言を聞いて驚いた時がある。
その時の事例では、ベンチャー企業が、漁港で取った魚と都市部の魚市場のマッチング処理のシステムを開発して、お互いの利益を向上させる、という話だった。
他にも林業で、日本産の木材が、今はコロナなので実は高く売れている、そういう市場をITの力で支援している、という話もあった。

おそらく、楽天、メルカリのビジネスモデルのように、生産者と消費者のマッチング処理を農業や水産業の市場に適用して、両者がWin-Winになるような方向を目指しているのだろうと思う。
そんな話を聞くと、単に業務システムを開発したり、ITビジネスでお金を儲けるだけでなく、IT技術を社会の問題解決に適用し、多くの人達のために社会貢献する方向に進化しているように感じた。

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2021/04/25

ビジネスの基本戦略には規模の経済があるのではないか

戦略の経済学」という本を借りて読んでみて、世の中のビジネスの基本戦略には規模の経済があるのではないか、というアイデアを持った。
結論がなく、ロジカルでないラフなメモ書き。

【参考】
「規模の経済」で読み解く -食品容器メーカーの資材調達担当課長・伊藤の悩み | GLOBIS 知見録

すぐ分かる経営戦略論: チャンドラーモデル

ポーターの3つの基本戦略 | 経営を学ぶ~経営学・MBA・起業~

規模の経済性と経験曲線効果 - 読書遊民

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規模の経済という法則がどの業界の中小企業でも大企業でも働いているのではないか。
最初は中小企業であっても、売上が増えて事業が好調になると、人手や設備が足りなくなるので、営業マンやエンジニアを増やしたり、最新の機械や設備を借金して購入し、事業をもっと拡大させようとする。

事業を拡大するのが良い理由は、たぶん、規模の経済が働くからだろう。
たくさんの商品や製品、サービスを作り出せば、固定費はその分薄まるので、単位あたりのコストは下がって、その分、利益が増える。

たとえば、製造業であれば、大量生産することで、単位あたりのコストを下げるだけでなく、工場労働者の学習能力も上がることで、経験曲線効果も得られる。
つまり、より上手く作れるのでコストが下がり、利益も増える。
自動車であれ、パン屋であれ、酒造会社であれ、たくさん作る方がコストが減って利益が増える重力が働くから、経営者はその方向性に自然に意思決定する。

規模の経済は機械製造業や食品メーカーだけではない。
クリーニング屋、コンビニ、スーパー、ファーストフード、居酒屋チェーン、フランチャイズチェーンなども同じ。
たくさんの店舗で同一商品や同一サービスを大量に販売する方が、コストが減って利益が増える。
特定地域に集中出店するドミナント戦略は、コストリーダーシップ戦略を活用した戦略ではないか。

規模の経済の本質は、固定費が単位当たりの製品単価で下がること。
規模の経済の効果は、たくさんの製品・サービスを同じ手順で量産するので経験曲線効果も得られること。
また、大量仕入れによる発注コスト削減も期待できる。

だから、たぶん世の中の経営者は規模の経済を活用した意思決定を行うことが多いのではないか。
ずっと小さな企業規模であっていい、という判断ならば、社員を増やしたり設備投資したりする動機はないから。

しかし、規模の経済からいつも恩恵が受けられるわけではない。
ある一定量を境にして、逆にコストが増えて、規模の不経済が働くのが普通。
たとえば、装置産業、労働集約型産業ではそうだろう。
たくさんの設備があったとしても、たくさんの労働者を集めたとしても、結局、その重荷を会社が耐えられなくなる。

なぜなら、企業規模、組織構造が大きくなりすぎると、意思決定のための情報を全て集めにくくなり、それに基づく意思決定が遅くなる。
あるいは、企業規模が大きく、組織構造が複雑になりすぎると、企業内で調整するコスト、つまり取引費用が大きくなってしまう。
だから、取引費用を最小限に抑えるという別の重力が働いて、規模の経済を妨げる。

個人的には、規模の経済が組織構造を複雑化させて、コストが増え続けて、その重みに耐えきれなくなって、規模の経済を逆回転させる動きになるのではないか、と考える。

最初は、規模の経済を利用しまくって、規模の経済の逆回転が動きそうになったら、そこでいったん打ち止めして、別の事業に注力していく、みたいな意思決定になるのだろうか。

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