ERP・財務会計・経済学

2021/05/14

日本人の弱点は忖度しすぎること、理論化できないことではないか

4月末と今夜、平鍋さんがアジャイル開発について語る勉強会を聞いた。
日本人の弱点は忖度しすぎること、理論化できないことではないか、という気づきをラフなメモ書き。

【参考】
今こそ必要な実践知リーダーシップとスクラム - connpass

BPStudy#164?アジャイル開発とスクラムの今を語ろう - connpass

【1】野中先生の肉声を初めて聞いた。
86歳らしいので、平成上皇と同い年らしい。
すごくハキハキした口調で、英語の論文にも慣れているのだろうか、知的バトル、とか、割と英単語が出た。

スクラムを生んだジェフがすごいのは、ベトナム戦争で偵察機の経験があったこと。
その経験をベースに、スクラムを生んだ。
ソフトウェア開発の手法は幾多数多あるが、それを理論化できたのはジェフがフィロソフィーを持っていたから。

野中先生の論文でも、スクラムでも、共感ありきで始まる。
欧米の哲学は、デカルト以来、コギト、我思う故に我あり、から始まるが、そうではなく、共感をベースにした。
だから、上手くいく。

一方、日本人は、元々共感力があるので、スクラムをやるのにもっと共感を重視しようとすると、忖度しすぎてしまう。
忖度するのではなく、もっと知的バトルをすべきだ、と。

僕らの頃は、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われていたが、DXの流れに乗れず、今はその面影もない。
だから、またジャパン・アズ・ナンバーワンを目指してほしい、と。

【2】日本人の弱点は忖度しすぎること、理論化できないことではないか、という考えを思い巡らすと、今まで読んできた本のいろんなフレーズを思い出してくる。

【3】「採用基準」「生産性」はマッキンゼーの元コンサルが、日本人や日本の組織に足りない要素2つを書いている。
それは、日本人には問題解決リーダーシップの能力が足りないこと、問題解決の生産性の意識が低いこと、の2つ。

リーダーシップ経験のない日本人が多すぎるから、評論家ばかりで、実際の問題を泥臭く解決していこうとする能力も意識も低い。
リーダーシップとは、自分の意見を持ち、周囲を巻き込んで、リスクを取って、問題を解決していく。
しかし、リーダーシップを発揮する日本人は、出る杭は叩かれる、ばかりに思われるので、たぶん自然に忖度してしまう。

また、生産性をコストダウンの事ばかり考えすぎる。
日本人が得意なプロセス改善の手法は、コスト低減による付加価値を上げる手法の一つに過ぎない。
生産性=付加価値/コストで考えるならば、コスト低減よりも、付加価値を圧倒的に増やす方がはるかに生産性は上がるはず。
しかし、日本人サラリーマンは斜陽産業でコスト低減ばかり経験しているので、ホワイトカラーが付加価値を上げるために、今までの手法を捨てて、全く新たなアイデアや手法を採用して、リスクを取っていく、という発想も能力もない。

【4】「経済数学の直観的方法 マクロ経済学編」では、世界の経済戦争の重心が、製造業の競争力強化から、世界全体の資金の流れを上手く誘導して流す方向に変わってしまった。
しかし、日本は、製造業があまりにも成功したので、マクロ経済学における動的均衡理論を取り入れる機会を逸してしまった。
そして、世界中の中央銀行がインフレターゲット政策を運用し始めた頃、慌てて、動的均衡理論を学習しようとしたが、従来のケインズ経済学とは異なり、解析力学をベースとした高度な数学理論を使うので、とても学習しづらい。

ちょうど、欧米では、これを学んだ人たちが政治経済の中枢に占めているのに、日本では学習し損なった世代がブランクになり、そのギャップを埋めることが難しい状況らしい。

かつて、日本では、ケインズ理論に従って、政府の公共政策による景気浮揚策は良いことだ、という理解が、割と世間の人たちも認識が共有されていた。
ちょうど、その頃は、日本の製造業が無敵の時代だった。
しかし、コンピュータやITが直近の四半世紀でまたたく間に普及して、ITなしでは生活もビジネスも経済も成り立たなくなった。
経済学の主導権もケインズ理論から動的均衡理論に代わったが、日本は追いつけていない。
さらに、世界中の資金を自国に誘導するように、情報や経済理論を整備して発信していく、というやり方に日本は乗り遅れてしまった。
「ミクロでマクロを制する」という発想は、日本人は弱いらしい。

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2021/04/29

デジタル庁で応募中のアイデンティティアーキテクトは昔のDAと同じ役割か?

デジタル庁でアイデンティティアーキテクト、データアーキテクトを応募しているツイートを見つけたのでメモ。
ラフなメモ書き。

【参考】
yoshi sanさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクトなる独立したポジションがあるんだ。」 / Twitter

からくりさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクトってなんだよと思ったけどめちゃまともな内容だった」 / Twitter

Yoshikazu NojimaさんはTwitterを使っています 「デジタル庁のアイデンティティアーキテクト、超重要かつ超高難易度な仕事にしか見えないのだけど、どんなキャリアパスを積んで、どれほどの研鑽を積めば担えるのか想像もつかない。 https://t.co/2iU02v4WLr」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクトとは、昔のDAと同じ役割か?」 / Twitter

からくりさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクト?- 中途採用|デジタル庁創設に向けた準備サイト https://t.co/raIDjeGhb9 めちゃくちゃ楽しそう(発狂しそうなほど大変だと思うけど)」 / Twitter

ミジンコOLさんはTwitterを使っています 「アイデンティティアーキテクト、あの先輩しか思い浮かばない。 ・行政証明書コンビニ交付サービスの開発経験有 ・某メディア企業の大型サービス利用ID統合経験 ・プラポリにも詳しい ・認証・認可詳しい ・IPA上級資格9割持ってる ・泥臭いPJTの中でも爽やか #デ https://t.co/Ue6JVxsyLh」 / Twitter

【参考】
中途採用|デジタル庁創設に向けた準備サイト

『アイデンティティ管理技術解説』システムアーキテクトを志す方のために IPA

【参考1】
アイデンティティアーキテクト?- 中途採用|デジタル庁創設に向けた準備サイト

(引用開始)
募集背景・業務内容
デジタル庁(仮称)においては、行政サービスのデジタル化・ワンストップ化を推進するにあたって、利便性が高く安全な識別・認証の仕組みを構築することにより、多種多様なシステムにまたがった円滑なデータ連携を実現していくことが求められます。

アイデンティティアーキテクトは、各省庁の担当者や専門家と連携して、デジタルガバメントのサービス高度化に必要な、アイデンティティ管理、データ連携の枠組みを構想し、その整備を推進する役割を担っていただきます。

具体的な業務内容は、以下のとおりです。

政府情報システムに関わるアイデンティティ管理の計画策定全般

住民制度、公的個人認証、マイナンバー制度に関わる個人のアイデンティティ管理もしくはGビズID、商業登記電子証明書等に関わる法人等のアイデンティティ管理

行政事務と住民・事業者向けシステム、住民・事業者向けシステム間をつなぐ国のシステムを理解した上での、業務プロセスの見直し、移行計画の立案、変革の推進

国民・事業者向けサービスや各省庁のシステムにおける利便性の高い安全な識別・認証の仕組みづくり

各省庁や地方公共団体の専門家と連携した横断的なプロジェクトの推進
(引用終了)

【参考2】
データアーキテクト?- 中途採用|デジタル庁創設に向けた準備サイト

(引用開始)
募集背景・業務内容
データアーキテクトは、デジタル庁(仮称)において、社会全体のデータの現状と将来像を俯瞰し、データ戦略の策定を主導するとともに、標準やルールに加え基礎データ、プラットフォームなどを整備し、その活用を推進していくことが求められます。また、多数のステークホルダーとの調整を進めながら、デジタル時代の新たなスタンダードを構築していくための強いリーダーシップが求められます。

政府は、多量のデータを保有するデータホルダーとして、またデータプラットフォーマーとして、先導的な振る舞いを期待される立場です。本ポジションは、あらゆる社会・経済活動に不可欠なデータを、国の競争力の源泉とするために、また、豊かな生活を実現する上で不可欠な基盤とするために、中心的な役割を担っていただきます。

具体的な業務内容は、以下のとおりです。

体系的なデータ整備に係る中長期戦略・計画の策定

データ標準・データ連携プラットフォームの整備

政府内におけるデータサイエンスやAIの活用の推進

デジタル庁(仮称)内外のデータに関する人材育成

データに基づいたEBPM(Evidence-Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)の推進

国際機関や関係各国との交渉
(引用終了)

【感想1】
デジタル庁でアイデンティティアーキテクト、データアーキテクトの募集背景・業務内容を読むと、本当にガチの内容だ。
個人的には、一昔前のデータアーキテクトの業務を連想する。

その頃は、テーブルを新規追加したり、カラム1個を追加するのに、わざわざデータアーキテクトに申請して、内容の詳細や対応期限を説明して、開発環境にやっと反映される、みたいな牧歌的な時代だった。
データアーキテクトは、ER図やデータディクショナリの保守担当者みたいなイメージを持っていたので、あまりカッコイイ職種には感じなかった。

しかし、実際の業務システムの要件定義では、データモデリングの技量の違いがその後の設計、開発の室に直結する。
業務フローのようなプロセスばかり書いても、フワフワしていて、テストでデスマーチになりがち。
データ基盤がしっかりしていれば、そこから業務の制約条件をプログラマも読み取れるし、テストデータを作ったり、保守していくのもかなり楽になる。

さらに、データアーキテクトの職種だけでなく、アイデンティティアーキテクトという職種まで応募しているのはとても興味深い。
単に、公共サービスのデータ基盤、データディクショナリを揃えるだけでなく、その根本となる一意な主キーを見出し、それを維持管理していく重要性を認識しているのだろう。
もちろん、マイナンバー制度という国民をユニークに識別する仕組みにも直結する。
国民を一意に識別してデータを管理できる基盤があれば、今のコロナワクチン予防接種の履歴管理に使えるし、今後のワクチンパスポートの発行にも発展できる。
他にも、収入や資産の追跡、税の徴収だけでなく、本当に困っている人たちを特定して補助金を直接届ける、という仕組みも作れるはず。

また、アイデンティファイアの整備は、認証基盤にも直結する。
政府の膨大な公共システムを利用する場合に、利用者の国民が安全に利用できるだけでなく、バックエンドの事務に携わる公務員や保健所の人たちが安全にログインできて、その操作履歴をきちんと管理できる仕組みも必要。
さらには多種多様な利用権限の制御まで考える必要もあるだろう。

つまり、価値ある公共サービスを提供するためにデータ基盤のアイデンティファイアは必須要件だが、人権やプライバシーの保護の観点からアイデンティファイアの認証・認可・アカウンティングの機能要件も必須という、高度なハードルがある。
想像するだけでも、アイデンティティアーキテクトという職種は非常にタフで難儀な内容であるのは間違いない。

だからこそ、こういう職種が必要ときちんと公開して打ち出しているのは信頼が持てる。

【感想2】
最近はITコミュニティ以外にも、官公庁の関係者がオンライン勉強会で登壇して色々話してくれる場が多くなった。

直近で、農林水産省とウーオが語る!林業・水産業をITで変えるチャレンジ - connpassを聞いた時、今の官公庁で最もデジタル化が進んでいるのは、実は農林水産省なんです、という発言を聞いて驚いた時がある。
その時の事例では、ベンチャー企業が、漁港で取った魚と都市部の魚市場のマッチング処理のシステムを開発して、お互いの利益を向上させる、という話だった。
他にも林業で、日本産の木材が、今はコロナなので実は高く売れている、そういう市場をITの力で支援している、という話もあった。

おそらく、楽天、メルカリのビジネスモデルのように、生産者と消費者のマッチング処理を農業や水産業の市場に適用して、両者がWin-Winになるような方向を目指しているのだろうと思う。
そんな話を聞くと、単に業務システムを開発したり、ITビジネスでお金を儲けるだけでなく、IT技術を社会の問題解決に適用し、多くの人達のために社会貢献する方向に進化しているように感じた。

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2021/04/25

ビジネスの基本戦略には規模の経済があるのではないか

戦略の経済学」という本を借りて読んでみて、世の中のビジネスの基本戦略には規模の経済があるのではないか、というアイデアを持った。
結論がなく、ロジカルでないラフなメモ書き。

【参考】
「規模の経済」で読み解く -食品容器メーカーの資材調達担当課長・伊藤の悩み | GLOBIS 知見録

すぐ分かる経営戦略論: チャンドラーモデル

ポーターの3つの基本戦略 | 経営を学ぶ~経営学・MBA・起業~

規模の経済性と経験曲線効果 - 読書遊民

規模の経済と経験曲線効果のメモ: プログラマの思索

ポーターの競争戦略の考え方: プログラマの思索

プラットフォーム革命の感想~プラットフォーム企業は新たな独占企業である: プログラマの思索

規模の経済という法則がどの業界の中小企業でも大企業でも働いているのではないか。
最初は中小企業であっても、売上が増えて事業が好調になると、人手や設備が足りなくなるので、営業マンやエンジニアを増やしたり、最新の機械や設備を借金して購入し、事業をもっと拡大させようとする。

事業を拡大するのが良い理由は、たぶん、規模の経済が働くからだろう。
たくさんの商品や製品、サービスを作り出せば、固定費はその分薄まるので、単位あたりのコストは下がって、その分、利益が増える。

たとえば、製造業であれば、大量生産することで、単位あたりのコストを下げるだけでなく、工場労働者の学習能力も上がることで、経験曲線効果も得られる。
つまり、より上手く作れるのでコストが下がり、利益も増える。
自動車であれ、パン屋であれ、酒造会社であれ、たくさん作る方がコストが減って利益が増える重力が働くから、経営者はその方向性に自然に意思決定する。

規模の経済は機械製造業や食品メーカーだけではない。
クリーニング屋、コンビニ、スーパー、ファーストフード、居酒屋チェーン、フランチャイズチェーンなども同じ。
たくさんの店舗で同一商品や同一サービスを大量に販売する方が、コストが減って利益が増える。
特定地域に集中出店するドミナント戦略は、コストリーダーシップ戦略を活用した戦略ではないか。

規模の経済の本質は、固定費が単位当たりの製品単価で下がること。
規模の経済の効果は、たくさんの製品・サービスを同じ手順で量産するので経験曲線効果も得られること。
また、大量仕入れによる発注コスト削減も期待できる。

だから、たぶん世の中の経営者は規模の経済を活用した意思決定を行うことが多いのではないか。
ずっと小さな企業規模であっていい、という判断ならば、社員を増やしたり設備投資したりする動機はないから。

しかし、規模の経済からいつも恩恵が受けられるわけではない。
ある一定量を境にして、逆にコストが増えて、規模の不経済が働くのが普通。
たとえば、装置産業、労働集約型産業ではそうだろう。
たくさんの設備があったとしても、たくさんの労働者を集めたとしても、結局、その重荷を会社が耐えられなくなる。

なぜなら、企業規模、組織構造が大きくなりすぎると、意思決定のための情報を全て集めにくくなり、それに基づく意思決定が遅くなる。
あるいは、企業規模が大きく、組織構造が複雑になりすぎると、企業内で調整するコスト、つまり取引費用が大きくなってしまう。
だから、取引費用を最小限に抑えるという別の重力が働いて、規模の経済を妨げる。

個人的には、規模の経済が組織構造を複雑化させて、コストが増え続けて、その重みに耐えきれなくなって、規模の経済を逆回転させる動きになるのではないか、と考える。

最初は、規模の経済を利用しまくって、規模の経済の逆回転が動きそうになったら、そこでいったん打ち止めして、別の事業に注力していく、みたいな意思決定になるのだろうか。

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2021/04/10

SQLは画面や帳票のインターフェイス層に相当する

下記の記事で、データモデリングではSQLは画面や帳票のインターフェイス層に相当する、という点に気づいた。
ラフなメモ書き。

【参考】
顧客も技術者も不幸になる人海戦術に終止符を、実データで設計を吟味せよ | 日経クロステック(xTECH)

杉本啓さんはTwitterを使っています 「これを読むと、データ中心アプローチの人々がサロゲートキーを嫌う理由がよくわかるよね。サロゲートキーを使ったDBでは、ユーザーがこんな風に気軽にデータをいじれない。 サロゲートキーは、ユーザーを「データベース=帳簿」から隔離して、技術的な存在にしまう。」 / Twitter

【1】僕はSQLは好きだ。
下手にExcelでデータをこねくり回すくらいなら、RDBに入れたデータをSQLで自由自在に抽出したり集計する方が楽だから。
一方、データモデラーではSQLは重視しない点にちょっと違和感があった。
しかし、上記の記事で、SQLは画面や帳票のユーザインタフェースに相当する事に気づいて納得した。

実際、正規化されたテーブルがあれば、欲しいデータはSQLで取ればいい。
その欲しいデータは、画面にあらわれているデータであり、帳票として印刷されるデータそのものだから。

よって、モデラーが業務の制約条件を上手くテーブル設計に反映しておけば、ユーザはSQLで好きなようにデータを抽出できるはず。

一方、訓練された設計者であれば、ER図を眺めれば、そこから業務フローや帳票、画面をイメージできるだろうが、外部設計フェーズで画面設計や帳票設計に注力してしまい、DB設計は単にデータベース定義書を作るだけ、という考えでいると、複雑なシステムになってしまい、失敗しやすいのだろう。

【2】サロゲートキーで統一されたテーブルでは、Webシステムは作りやすい。
Railsが典型的な例。
URLとメソッド、テーブルが1対1に関連付けられるので、URLベースで設計すれば、そのままプログラミングできる。

一方、DOAでモデル駆動開発を推進したい時、サロゲートキー中心のデータモデルでは、テーブル間の関係が判別しにくい。
テーブルを結合したり、入力データの制約がすぐに見えないからだ。
よって、業務を知るユーザがSQLを駆使して、テーブルを結合して、欲しい帳票を得る手法が取りづらくなる。
だから、データモデリング主導の開発では、サロゲートキーは廃止して、明示的にテーブル間の関数従属性を可視化できるようにしておきたい欲望がある。

【3】業務フローからテーブル設計するのはPOA。
本来のデータモデリングでは、AsIsの業務で手元にある帳票からER図を洗い出せる。
これは「楽々ERDレッスン」と同じ考え方。
やはり、既存の帳票はデータモデルの源泉になるから。

他方、あるべきデータモデルから、業務フローや画面構成を想像することはできるか?
これができれば、業務の要件定義がやりやすくなる。
これをやるには、個人的には、T字型ERの手法がやりやすいと思っている。
なぜなら、リソースやイベントのテーブル同士のリレーションシップは一定の法則で決定づけられる、という方針なので、初心者には使いやすいから。

「データモデリング入門-astah*を使って、TMの手法を使う-」はとても良いモデリング資料: プログラマの思索

業務ロジックをデータモデリングはどこまで表現できるか?: プログラマの思索

候補キーと2次識別子に関する概念: プログラマの思索

リソース数がビジネスの可能性に関係する理由: プログラマの思索

2次識別子を使ったデータモデリング: プログラマの思索

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2021/04/08

プロジェクトのリスクはコストの増減で管理する

「プロジェクトのリスクはコストの増減で管理する」のであり、「コスト管理と課題管理は同じではない」。

【参考】
コストマネジメント(コストコントロール体系) | イノベーションマネジメント株式会社

プロジェクトリーダーのレベルではなく、事業部長や複数プロジェクトを取りまとめる組織の長の観点では、各プロジェクトのリスクをどのように軽減したり、回避したりするか、に注力するようになる。
リスクを完全にゼロにすることは、お金もリソースも使い過ぎるので、現実的ではない。

各プロジェクトでは、計画時にプロジェクト特性に応じて、リスクを洗い出す。
プロジェクトリーダーは、プロジェクトのキックオフ後、実行中では、リスクがどのように変化して、増大して手に負えなくなるか、事前に防げるか、に注力していく。

一方、事業部長や部課長の観点では、どこかのプロジェクトで火を噴くリスクがあると考えて、事前に各プロジェクトのリスクをコストで予算化しておく。
そういう予算は、プロジェクト外費用ならコンティンジェンシー予備費だし、プロジェクト内費用であればマネジメントリザーブ(マネジメント予備費)になる。
そして、実際に火を噴いたら、マネジメント予備費を使うし、更に足りなければ、コンティンジェンシー予備費を投入してでも、火を消すようにする。

一般に、マネジメント予備費を使う権限は、プロジェクトリーダーの采配と組織の最末端の管理職である課長の采配の2つで決まるだろう。
マネジメント予備費は契約時に、利益やコストを見込んで、契約金額に上乗せして積まれている。
マネジメント予備費を使うほど、利益は落ちるので、プロジェクトリーダーの権限ですべてを使っていいわけではなく、最低限の利益ラインを超える場合は、課長の承認が必要になるだろう。
普通は、一旦プロジェクトが火を噴けば、際限なくコストは膨らんでいく。

そして、コンティンジェンシー予備費は、事業部のトップである事業部長の承認で決まる時が多いだろう。
コンティンジェンシー予備費を使う段階まで来ると、経営陣にもその使途理由を問われるので、社内では相当な噂になりやすいだろう。

駄目なプロジェクトでは、プロジェクト計画時にリスクをそもそも洗い出せておらず、単なる課題一覧に過ぎない。
適当に解決するだろう、という期待を含めた課題管理に陥っている。
だから、リスクが顕在化して手に負えなくなると、肝心の予算がなく、単なるデスマーチ案件となってしまって、会社のお金や人員を無尽蔵に浪費していってしまう。
元々、リスクに対する予算などの手当がないので、何の戦略もなく、ズルズルと状況に押し流されるだけになる。

本来は、リスクの内容に応じて、影響度や深刻度、重要度に応じて、そのリスクが発生した場合にかかる費用を見積もり、それらの合算をコストとして予算として見込む。
もちろん、全てのリスクを洗い出して合算したら、途方もない金額になるから、ある程度のリスクは許容することで予算化しないことになる。
あるいは、コストが掛からない対策があれば一番良いが。

PMOの仕事をしていると、プロジェクト運営という観点だけでなく、プロジェクトの採算やコスト管理まで見るようになってきた。
その時に、駄目な会社では、ISO9001を運用していると標榜しながらも、プロジェクト計画書に記載されたリスク一覧が単なる課題一覧に貶められている風景を何度も見てきた。
本来、リスク管理とは何だろうか?という疑問があったが、リスクはコストの増減で管理するという発想が必要と分かり、ようやく腑に落ちた。


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2021/03/24

会計システムにパターン言語の導入を試みた記事

会計システムにパターン言語の導入を試みた記事があったのでメモ。
関西IT宴会のメーリングリストでの議論の方が非常に参考になる。
記事とメーリングリストでの議論を理解した内容を書く。
浅はかな理解なので後で直す。

【参考】
事業報告と会計の分離 - 会計システムパタンランゲージ

akipiiさんはTwitterを使っています 「会計システムにパターン言語を適用する野心的な試み。確かに一般業務である情報流と会計業務である商流は、要件定義でも明確に分けるのが普通なので共感できる。事業報告と会計の分離 - 会計システムパタンランゲージ https://t.co/AkBfaASNTV」 / Twitter

【1】杉本さんも渡辺さんも、事業管理システムと会計システムを分離しようとする。
しかし、その分離方針の考え方が微妙に異なる。

渡辺さんの考え方では、「データモデル大全」のように、企業システムの論理構造は、事業管理システム・財務管理システム・会計システムなどのように分けられる。

事業管理システムは、受発注や在庫管理、売掛金・買掛金の管理などが含まれる。
財務管理システムは、ファイナンシャルや資産管理。
会計システムは、事業管理や財務管理などのシステムと連携し、その仕訳を取り込んで、BS・PLを出力したり、その会社特有の管理会計を行う。

個人的には、渡辺さんの分離方針はすんなり理解できる。
物流、情報流とお金の流れである商流を、システム上分離して、連携させる考えは、プログラミングの分割統治に似ている。

一方、杉本さんの考えでは、簿記の歴史を踏まえた観点を付け加える。
元々、中世イタリアの商人が海外貿易で得た利益を、出資者に分配する仕組みとして簿記が生まれた。
そこでは、事業報告が主体であり、事業報告に会計報告も含まれていた。

しかし、その後の歴史では、事業がどんどん複雑になるにつれて事業報告も複雑になり、会計報告もBS・PLの正当性を示す財務報告の観点を強めたことにより、事業報告と会計報告は分離された。
つまり、事業報告としての会計報告と、制度会計としての会計報告は分離すべきだ、という意見。

僕の理解では、この分離方針は、売上や原価をどの時点で検収すべきか、という観点で分けられるのではないか、と思う。
たとえば、日々の事業で得られる売掛金や在庫、人件費は毎月検収すべきだが、建物やソフトウェア資産、証券などの固定資産は年1回、その評価額を踏まえて検収すればいい。

そういう考え方もあるのは参考になった。

【2】では、外部ベンダーへのソフトウェア開発の一括委託費用はどのように原価計上すべきか?
完成基準であれば、ベンダーがソフトウェアを納品して、その検収がOKであれば、検収した時点で一括計上する。
たぶん、メーカーのような普通の請負契約では当たり前。

しかし、完成基準では、検収まで原価が発生せず、検収時点で大金が原価計上されて初めて赤字が判明するリスクがある。
よって、進行基準を適用して、ベンダーの作業進捗に応じて毎月、原価計上して、その経緯を見れるようにする、とか。

【3】僕が知りたいのは、世の中にあるいろんなビジネスモデル、具体的には事業について、何らかの観点で分類して理解することはできないだろうか、という点。

製造業のビジネスモデルでは、生産プロセスを部品表の観点で分類することで、その特徴を明確に洗い出すことができる。
その考え方は、「BOM/部品表入門」に書かれていた。

BOMのトポロジー類型~MRPとBOMの関係: プログラマの思索

部品表と工程表と製造指示の関係: プログラマの思索

たとえば、部品を組立加工して最終製品(自動車、家電製品)を作るA型、1つの原材料(石油、食肉など)から多種多様な連産品が作られてしまうV型、最終段階の加工フェーズで多種多様な製品(化粧品、プラスチック製品)を作り出すT型、複数の原材料を化学反応させて製品を作るが副産物(酒粕、おから)が作られてしまうX型(化学、酒造業)、とか。

部品表と生産プロセスは密接に絡んでいるから、生産プロセスで作られる最終製品や副産物をどのように在庫管理や調達管理して販売するか、はビジネスモデルに直結する。

同様に、世の中の事業の主活動プロセスをバリューチェーン(生産プロセスと対比)とみなし、そのバリューチェーンを支えるデータ基盤(部品表と対比)を分類することで、あらゆるビジネスモデルを分類して、その特徴を見出して、理解を深めるやり方はないだろうか?

上記のようなパターン言語が、ビジネスモデルを分類する観点をもたらしてくれないか、期待している。

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2021/03/21

「データモデル大全」は良い本だ

渡辺さんの本「データモデル大全」を読んだ。
いろんな気づきがあるので、ラフなメモ書き。

【参考】
業務ロジックをデータモデリングはどこまで表現できるか?: プログラマの思索

渡辺式データモデリングの復習: プログラマの思索

第39回IT勉強宴会の感想~花束を作る花屋の業務モデルをT字形ERと三要素分析法で比較する: プログラマの思索

第62回IT勉強宴会のメモ~2人の方法論者によるデータモデリング激レア対談: プログラマの思索

第66回IT勉強宴会の感想~データモデリングに数多くの流派が発生している理由: プログラマの思索

関西IT勉強宴会の感想~コロナワクチン接種管理システムのデータモデリング: プログラマの思索

【1】「データモデル大全」のデータモデリングは多分かなり高度なので一般でないと思うけど、後で、なるほどと気づく。

たとえば、動的参照関係で、複数のテーブルのビューがあれば、外部キーの参照関係が生じるが、普通のER図では表現できない。

たとえば、「データモデル大全」のデータモデリングでは、ツリー構造のモデルが特殊。
ヘッダーと明細のテーブル二つに親子階層を持たせて、親テーブルにLLCという階層最小値を持たせて、ツリー構造を表現する。
再帰構造ではない。
たぶんこのデータモデルであれば、PLSQLのバッチ処理が書きやすいのだろうと想像する。
他方、Redmine ならば、チケットの階層構造は、入れ子構造のデータモデルで実現できてる。
こっちの方がプログラマは書きやすいだろう。

【2】「データモデル大全」のデータモデリングで最も特徴的なのは、2次識別子を使って、参照関係や連関テーブルを表現してる事。
製品の入出荷履歴などの沢山のテーブルは、受払履歴テーブルに集約させるが、その時に、取引管理番号を各テーブルで2次識別子に持たせる。
そうすれば、最初はNull値でも、後からデータ更新できるので、一意制約を持たせられる。

データモデル大全」全では、他に、逆に、入出荷指示明細テーブルから受払予定、受払履歴、売上履歴などのテーブルへばらすモデルを作り、指示を出したら、売掛金の履歴や在庫の履歴が見れるテーブルを用意してる。
この辺りは本当にすごいなと思う。

【3】惜しむらくは、データモデルしか記載がないので、どんな業務フローになるのか、どんな画面遷移になるのか、が分かりにくい事。
せっかくなので、このデータモデルからRailsで画面を自動生成して、簡単な画面遷移が作れると良かったのに、と思う。
そうすれば、データモデルの威力が分かるはず。

たとえば、データモデルからイメージできるのは、注文ヘッダ・注文明細の親子関係タイプと注文明細・商品情報の参照関係タイプがあれば、それらは一つの帳票を表す。
よって、データモデルから、本質的な帳票がいくつあるのか、を見抜けば、帳票を保守する画面数やバッチ処理本数を算出できる。

たとえば、データモデルから時系列の順序を導くのは、T字型ERの考え方を使って、トランザクション系テーブル同士に参照関係があれば、1:Nの関係があるので、先トランザクションテーブル:後トランザクションテーブル=1:Nとみなすことで、導ける。
よって、時系列に帳票が作成される順序を考えれば、業務フローが描けるはず。

この辺りのイメージはまたまとめてみる。


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2021/03/02

プログラマとスクラムが社会実装を変えていく #Findy_GovTech

今夜、ガバテックの話をZoomで聞いていた。
話は面白かったが、色々考えさられた。
考えたことをラフなメモ書き。

【参考】
経済産業省デジタル化推進マネージャーと弁護士ドットコムが語る!行政にエンジニアが関わる意義 - connpass

【1】政府行政をエンジニアが関わって、DXを推進していくのがガバテックと言えるかもしれない。
パネラーが言うように、今まさに旬のテーマ。
デジタル庁ができるし、ITエンジニアがより政治に関わっていくこともできる。

パネラーは、エンジニアリングで社会実装を変えていく、と言っていたが、話を聞いていたら、僕は「プログラマとスクラムが社会実装を変えていく」という意見を持った。

理由は2つある。

【1-1】1つ目は、プログラマが政府行政のIT化で活躍できる場がすごく多く、昔から受け継がれる問題、今まさに直面している問題に対し、プログラマしか解決できないテーマが多すぎるから。

たとえば、コロナワクチン接種管理システムの構築もそうだし、コロナ不況で失業したり、緊急事態宣言でビジネスを制限された人達に補助金を出すシステムもそう。
こういうシステムが必要とされているのに、インフラ構築できない、Webシステムを構築できない、業務要件をデータモデリングでまとめられない状況にある。
政府行政にいる人達は、ITの専門家ではないのだから、そういう技術に詳しくないのは当然だ。
だからこそ、ITエンジニアがより深く関わるチャンスがあるし、それによって、社会を変革していく道筋も生まれる。

ハンコ押印を使った各種申請、税金の支払いが楽になるだけでなく、より積極的に、ITという手段を通じて、政府を通じて世の中をより良くしていく、という活動にコミットできるわけだ。

【1-2】2つ目は、プログラマが政府行政のIT化に関わっていく場合、組織体制はスクラムに即した体制にならざるを得ない印象を持ったから。
パネラーが言うには、政府行政で、パネラーに協力してくれる人達は、事実上、プロダクトオーナーの役割を担ったり、色んな部署と調整したり、逆にパネラーのようなITエンジニアを守ってくれるような活動をしてくれたらしい。
パネラーのようなITエンジニアと政府行政の人達の間に信頼関係が構築できたことで、より深くコミットすることもできた、と。

そういう話を聞くと、まさに、そういう組織体制はスクラムで実装することになるだろう、と思う。
なぜならば、スクラムを適用すれば、スクラムの3つの役割にピッタリ当てはまるからだ。

【1-3】国民の公共サービスの利便性を提供するようなサービスを提供するケースを考えよう。
すると、そのような業務要件を考えるプロダクトオーナーが必要であり、政府行政の業務や法律に詳しい、政府行政の人達自身が担当する。
インフラを構築したり、システムを実装したり、セキュリティ対策を考える人達は、各分野のITエンジニアがチームを形成する。
そして、外部から雇い入れたスクラムマスター、または政府行政の人でファシリテーションが上手い人が、プロダクトオーナーとチームの間で調整する役割を担うだろう。
結局、そのようなプロジェクトチームをシステム毎にたくさん作り、スピード感を持って政府行政のDXを推進していくしかないだろう。

【2】しかし、政府行政のDX推進を妨害する問題は、内製開発できずにベンダーに発注してベンダーロックインになってしまうことだろう。

現状は、政府行政の中の人達が、ITプロジェクトをマネジメントする能力が不足しているし、発注者として、プロダクトオーナーの役割を果たす能力も不足している。

【2-1】本来のあるべき姿は、政府内部で公共サービスを提供するシステムは、全部自前で開発できると一番いい。
リリース後も常に保守する責任を持つし、サービス利用者の声を集めることで、次々に新たなサービスを提供して利便性を高めて、世の中をより良くしていくことができるはずだ。

そういう内製開発が政府内で実現したならば、SaaSベースの開発スタイルになるだろう。
文字通り、ソフトウェアでサービスを提供するわけだ。
理由は、「ソフトウェア・ファースト」の本に書いてある通りと全く同じ。

そして、そのシステム開発のプロセスはスクラムで行われるのが自然だ。
政府行政内の人がプロダクトオーナーを担当し、その業務要件がプロダクトバックログで表現され、サービス利用者が使いやすいように、業務フローやデザインは、ストーリーテリングのように数々の利用ストーリーを踏まえたもので作られるだろう。

【2-2】しかし、現状はギャップが大きすぎる。
パネラーも言っていたように、いきなりデジタル庁で解決するわけではないだろう。
おそらくは、デジタル庁のメンバーは発注者のプロジェクトマネージャーの立場がまず求められて、そういう仕事から現状の問題をこなしながら、今後のあるべき姿へ地道に変革していくことになるのではないか。

【3】しかし、政府行政のIT化の根本問題は、個人のプライバシーとどのように折り合いをつけるべきなのか、があると思う。

【3-1】実際、確定申告のWebシステムであれ、コロナ接触管理アプリCocoaであれ、国民全員に10万円をばらまいた補助金であれ、全て、国民1人が持つプライバシーをどのように扱えばいいのか、に苦慮している。

そもそも、中国のような監視社会であれば、個人の行動履歴、購買履歴、所得や資産情報、医療情報も全て、政府が把握できているのだから、本当に困っている人達に特定して補助金を配ることもできるし、特定した感染者を強制隔離することで、世間の人達の健康を守ることもできる。

だが、政府の公共サービスでは、個人のプライバシーが他人に悪用されるリスクや脅威がとても影響が大きいために、セキュリティ面の対応によって、機能は複雑化し、業務フローもとてもややこしくならざるを得ない。
たとえば、確定申告のeTAXは、なぜあんなに、スマホでもPCでも使いにくいのか、とみんな思っているのではないか。

しかし、過去の歴史を踏まえると、政府に個人情報を預けると何をされるか分からないという、命に関わる危険性をみんなが持っていたし、政府を信用していないから、プライバシー保護という名目で、今までこの問題を放置してきた。

コロナ感染という特別な状況が、その問題が自分たちの生活に直結するぐらい重要である、と分かってきたのではないか。

【3-2】一方、今回のコロナ不況で薄々分かったことは、我々自身も、政府の行動が信用できるならば、自分の個人情報を預けてもいい、と考えているのではないか。

実際、現在の政府の公共サービスは全て申請主義なので、サービスを受けたければ、自分たちからたくさんの書類を集めて、大量の文書を書いて、提出後は長く待たないといけない。
本当に困っている人達に、給付金を直接渡すべきなのに、政府から困っている人達を特定できないから届けることもできない。
よって、失業者が溢れたり、犯罪者や自殺者も増えたりして、社会自体が重苦しく、不便なものになっていく。

だからこそ、そうならないように、例えば、本当に困っている人達に給付金を配ったり、あるいは、コロナワクチンを接種すべき人達を政府自身が特定すべきだし、それらを一括管理できるようにすべきだろう。

【3-3】他方、プライバシー保護のグレーゾーンや法律のグレーゾーンに積極的にリスクを取って関わっていくことで、新しいビジネスを生み出すことの重要性も分かってきたのではないか。

たとえば、テスラは電気自動車を単に提供するだけでなく、販売した電気自動車の走行ログをもとに自動運転技術をより強化させている。
また、走行ログというビッグデータをもとに、自動車損害保険ビジネスに乗り出す、とか、Uberのような配達ビジネスに自動運転をミックスしたビジネスも生まれるだろう。

アップルも、アップルウォッチを提供することで、個人の健康情報を収集することで、ヘルステックという新たなビジネスを生み出そうとしている。
個人の健康情報のログをもとに、医療サービスや保険サービスの新たなビジネスが生まれるし、健康に関わるスポーツビジネスも生まれるかもしれない。

【3-4】つまり、個人情報の保護がグレーゾーンであっても、それに関するビジネスにソフトウェアが決定的に重要な役割を果たし、大きく社会を変えている状況では、この流れに乗り遅れると、もはや国自体が衰退するしか無い。
実際、コロナ感染の社会状況において、日本の大臣は、日本はデジタル敗戦だ、という発言もした。
すなわち、日本はソフトウェアでビジネスを変革するだけでなく、ソフトウェアで公共サービスや社会を変革していくことすらも、他国から大きく遅れてしまった。

米国は、多くのベンチャー企業などが法律のグレーゾーンをものともせずに、ソフトウェアで新たなビジネスを生み出した。
中国は、一党独裁の統制社会を維持するために、ソフトウェアを上手く利用して、インターネット規制やネット検閲、監視カメラなどによる監視体制などを利用してきた。
もちろん、BATのようなIT大企業も生み出しているが。

EUもプライバシー保護や民主主義を掲げてGPDRとか色々作ってきているが、結局、米国や中国のソフトウェアビジネスやソフトウェアの変革の波から乗り遅れているのではないか。

【3-5】そんなことを考えると、プライバシーはもちろん重要だが、各種申請や税金支払、補助金受け渡しのような公共サービスの利便性を求めたり、コロナ感染のように公共性を重視すべき場面では、ある程度のプライバシーは政府に委ねる方向性に今後進んでいくような気がしている。

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2020/10/07

経済学は信頼性革命や構造推定により大きく変貌している

最近、図書館から借りている「経済セミナー」という雑誌が非常に面白い。
経済学は信頼性革命や構造推定により大きく変貌している。
10月号では、「変貌する経済学:実証革命が導く未来」の特集号が非常に面白くてためになった。
気づきをラフにメモ。

実証革命?経済学が会計学に影響を与えるもの|上野 雄史|note

「予想よりも早かった」ノーベル経済学賞(會田 剛史) - アジア経済研究所

伊藤先生は、「データ分析の力 因果関係に迫る思考法」の本でも知っていた。
伊藤先生いわく、日本の高校生が踏み絵を踏まされる「文理選択」は廃止すべきだ、と言う。
高校生の頃、数学が好きだったが、化学や生物は興味が持てず、むしろ社会科学に興味があった。
だから、文理のどちらに行くか悩んだ、という言葉は共感する。
僕も、数学は好きだったし、日本史や世界史や地理はとても好きだったが、物理や化学は正直好きになれなかった。
結局理系に進んだけれど、今でも、歴史の本は好きだからよく借りている。
数学と社会科学の興味の両方を活かせるのが経済学。

経済学は信頼性革命や構造推定により大きく変貌している。
特集記事で曰く。
現代の経済学は、ルーカス批判、信頼性革命、構造推定の3つによって、実証革命が起こり、経済学が公共政策やビジネスに非常に役立つようになった。

僕の理解では、ルーカス批判は、モデルは説明変数とその変数の変化率の2つで考えるべきだ、というもの。
「経済数学の直観的方法 マクロ経済学編 」にも書いてあった。
信頼性革命は、ランダム比較実験で意思決定の結果の良否を説明付けられる、ということかな。
構造推定は、モデルにおける2つの変数の因果関係を明確に説明付ける、ということかな。

相関関係と因果関係は全く違う。
相関関係は、2つの変数に何らかの関係がある事実しかない。
因果関係は、要因→結果という一方向のロジックまで特定する。
このレベルまで経済学が理論付けられるとしたら、すごいことだ。

伊藤先生は学生指導で、既存研究の仮定を疑って検証する発想を持て、とよく言うらしい。
そう、この発想は、自然科学でも文系の学問でも同じだな、と思う。

伊藤先生の博士論文では、消費者が実際に見ているのは限界価格なのか、平均価格なのかを電力市場のデータで検証したらしい。
これはまさに、電力会社のように固定費が高く寡占市場になりやすい市場において、社会厚生を最大にするには、平均費用価格なのか、限界費用価格なのか、という政策論争につながる。

伊藤先生の研究スタイルは、まずは社会にとって自分にとっても大きな問いを立てて、その問題が経済理論でどのように整理できて、どんなデータ分析手法で検証できるか、を考えていく。
この話を読んで、研究者として王道のスタイルだなあ、と思った。
偉大な学者は、とてもシンプルかつ根源的な問題を持っていて、その問題を解くために、色んな方向性から考えたり、レベルを落としたり、寄り道したりして、その過程で数多くの研究成果を残すが、常に根本的な問題を持ち続けている。

経済学の面白い点は、IT革命でコンピューティングパワーが強化されて、大量データの収集と膨大な計算が簡単になったことだろう。
つまり、経済現象を分析するツールが揃ってきた点が、最近面白い点になるのだろう。
そういう背景を踏まえて、信頼性革命や構造推定などの考え方が組み合わさって、経済現象を理論化できたり、政府の政策やビジネスの意思決定に役立てる応用もできているのだろう。

実際、補助金や公共投資はどんな政策であれば効果的なのか、とか、どのようなインセンティブを市場に与えると社会全体として経済効果が波及されるのか、など色んな事例に対して、経済学を適用することができる。

個人的には、経済学の発想をソフトウェア工学に適用したら、どんなことができるのだろうか、と妄想している。


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2020/08/29

機械学習で反実仮想や自然実験が作れる

経済セミナーなる雑誌をたまたま手に取ったら、「機械学習で反実仮想を作れる」「機械学習は自然実験を作り出す」という記事があって、刺激を受けた。
妄想したことをラフなメモ書き。

akipiiさんはTwitterを使っています 「図書館で棚をふと手に取ったら「機械学習で反実仮想を作れる」「機械学習は自然実験を作り出す」という記事にすごく痺れた。こんな発想があるなんて面白すぎる! 経済セミナー2019年12月・2020年1月号 通巻 711号 機械学習は経済学を変えるのか? | |本 | 通販 | Amazon https://t.co/EXnNd5dm2L?」 / Twitter

【1】記事では、何らかの機械学習アルゴリズムに従って、意思決定や選択が行われた場合、そこから生成されたデータには、常に自然実験の状況が含まれているのではないか、という意見があった。

【2】たとえば、アメリカで刑事裁判の被告が犯罪しそうか否かを教師学習で予測し、その結果に基づいて有罪か無罪を意思決定するとする。
すると、ある基準値を超えると有罪に突然ジャンプする。
つまり、閾値の前後の人達のセグメントや属性はそんなに変わるはずがないのに、その閾値の前後で意味が大きく変わる。
すなわち、実質的には、回帰不連続デザイン(RDデザイン)と同じだ。

これが意味することは、WebのABテストのように、膨大なデータを均質なセグメントに分けて、刺激を与えたらどんな反応が返ってくるか、ランダムにテストする手法をわざわざ取らなくても良いことだ。
その分、手間もかからずに実験できる。
つまり、回帰不連続デザインによって自然実験がなされている、と分かる。

他の例として、Uberが需要と供給の均衡から、価格弾力性を需要に応じて変更する時に、閾値で四捨五入すると価格が大幅に変わってしまう時の回帰不連続デザインの話があった。
ここでも、閾値付近では、ドライバーも乗客も、似たような場所で似たような季節などの属性がほぼ均質であれば、閾値付近でABテストが実施された、とみなすことが出きる。

この方法が使えるならば、国勢調査や各種の一次データなど公開されているオープンデータを使って、ABテストの代わりに推定や検定が使えるようになる。
よって、経済学のモデル構築に役立てることが出きる。

【3】機械学習と計量経済学は元々観点が全く違う。

経済学では、因果関係の推測に力点を置く。
そこから、モデルを生み出し、経済学は理論を打ち立てる。
つまり、仮説検証のために統計学を使う。
経済学では、モデルを組み立てる特徴量の選択が重要であり、その特徴量がなぜ必要なのか、という理由も知りたい。

なぜならば、経済学は社会科学である限り、何らかの規範を打ち立てるべきものだから。
つまり、経済学は何らかの価値観を世の中に提供して、世の人に役立てるべきもの。

一方、機械学習や深層学習では、特徴量をデータから自動的に抽出する。
仮設を立てて選んだ特徴量ではない。
だから、機械学習で得られる特徴量は、その選択された意図が分からないので、ブラックボックスになる。
そこが気持ち悪い。

経済学のデータ解釈はモデルベース。
経済学では、政治家や官僚が選んだ経済政策が有効だったのか、仮説を検証したい。
しかし、経済学のモデル表現を固定すると、機械学習の強みである柔軟な特徴量設計と相反する。
機械学習では、特徴量の自由度が重要な特徴だからだ。

特徴量はモデルによる分析と相性は悪い。

しかし、この方面の研究も進んでいる。
機械学習が抽出した特徴量を人間の理解に繋げる方法として、特徴量を可視化する。
あるいは、複雑な特徴量をさらに簡潔なモデルで近似して変換することで、特徴量を理解しやすくする。

【4】機械学習と計量経済学は似て非なるもの。

目的が異なる。
計量経済学の目的はパラメータの推定と仮説検証だ。
一方、機械学習の目的は予測だ。
だから、機械学習では予測誤差を最小化する点に力点を置く。

方法が異なる。
計量経済学はパラメトリック法。主にデータの母集団の確率分布を仮定し、推定や検定を行う。
一方、機械学習はノンパラメトリック法。確率分布を予測せず、データの潜在パターンを発見する。

データの利用方法が異なる。
計量経済学では、全てのデータを用いて、推定や検定を行う。
その統計的性質は、母数が大きいほど確からしいことになる。
これを漸近性と呼ぶ。

一方、機械学習では、交差検証のように、本番データと検証データを分ける。
予測が目的なので、データの特徴を丸暗記してしまうと過学習になりやすい。
モデルの性能と汎用性にはトレードオフがあるので、過学習を防ぐ罰則(ドロップアウト、正則化)などの工夫がいる

【5】反実仮想とは、もし現実にこんなことが起きていたら、という実際には起きなかった並行世界をデータから復元するもの。
たとえば、政府の公共政策、企業のマーケティング戦略や意思決定など、実際に行った施策とは異なる施策を行ったら、世界はどう変わったのか、を想像する試み。

反実仮想は、英語の仮定法の発想にとても良く似ているように思える。
実際は発生していないのに、こうだったらああだったのに、みたいな言い分。

反実仮想のコンセプトは、元々は医療や農業で、新しい医薬品や新しい農法の効果を知るために、それが導入された世界と導入されなかった世界を比べてみよう、という問題意識から生まれた。
この発想が、経済学などの社会科学、ビジネスの意思決定まで普及している。

最近面白いのは、教育政策への適用だろう。
学校入試制度の改革が人々の生活や行動にどれだけ影響を及ぼすのか、政府のデータを元に、自然実験を行ってみるわけだ。
つまり、実際はABテストできないけれど、得られたデータが自然実験になっていれば、そこから有意義な結論が得られて、こうあるべきだ、という価値観を提供できるわけだ。

【6】「機械学習で反実仮想や自然実験が作れる」発想が面白いけれど、それには理由があるのだろう。

本来、経済学は100年以上の歴史を持ち、過去に沢山の理論を蓄積してきている。
しかし、統計学の手法が不足、コンピューティングパワー不足で、経済理論の検証が難しかった。
集計されたデータも国勢調査やGDPぐらいしかなかった。
だから、当時の経済学は限られたデータを元に抽象的思考を行うしかなく、必然的にきわめて低次元で、理論に依存せざるを得なかった。

しかし、コンピューティングパワーの増大やオープンデータのおかげで、モデルのパラメータをあえて増やし、人間には分からないパラメータはデータに語らせてしまってその特徴量の意味や因果関係を言えば良い、という方向に加速した。
機械学習では、高次元データを次元圧縮して意味ある特徴量を抽出できるので、そういう手法をどんどん計量経済学に適用していいけばいいわけだ。

【7】最近、行動経済学と統計学が相性が良いと知ったけれど、その理由は、経済学は理論を出発点にトップダウンで研究するのではなく、実際にある大量のデータから因果関係を抽出して、その意味を抽象化して理論を打ち立てるボトムアップの研究手法が確立されたためだろう。
今は機械学習などの技法を使えば、いくらでも大量データを処理できるので、ボトムアップの研究スタイルの方が力任せにやりやすいのだろう。

そういう意味では、プログラマであることは非常にメリットがある。
たとえ理論を今知らなくても、道具に詳しいのだから、理論を勉強する時に、道具を使って、片っ端から理論を実際にデータで語らせてみればいい。
そうすることで、理論が本当に有効なのか、とか、データと理論の相性を知ることもできるだろう。
面白い時代だ。


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