物理学の各分野の基本思想
最近、物理学の各分野の本を片っ端から読んでいる。
こういう基本的な考え方が分かっていないから、ずっとつまずいていたんだな、と気付きがあった。
自分の気づきをラフにメモしておく。
間違っていたら後で直す。
【1】電磁気学の基本思想は、マクスウェル方程式の理解にある。
マクスウェル方程式は4つあるけれど、微分形式で表現される法則はわかりにくい。
∇、rot、divなどが出てきて混乱する。
「よくわかる電磁気学」「ゼロから学ぶ電磁気学」なども良い本なのだろうが、僕には直観的でなくて受け付けにくかった。
むしろ「高校数学でわかるマクスウェル方程式」で説明されている通り、積分形式でマクスウェル方程式を表現するほうが直観的で理解しやすい。
線積分、面積分が出てくるので慣れも必要だが、微小な線分、面積、体積に対し電流や電場、磁場がどのように変化するか、をぐるっと合計して、最終的に積分すれば、マクスウェル方程式が出てくる。
微分形式は、積分形式のマクスウェル方程式を微小な空間で考えるだけで十分。
マクスウェル方程式が分かれば、ローレンツ力や特殊相対性理論との関係性も計算して導くことができる。
「高校数学でわかる相対性理論」で説明してくれている。
【2】解析力学の基本思想は、ラグランジアンとハミルトニアンの理解にある。
特にハミルトニアンが重要。
ハミルトニアンの正準方程式、そして、最終的にはハミルトン・ヤコビの方程式まで出せればいい。
「ゼロから学ぶ解析力学」「よくわかる解析力学」を読んで納得した。
【3】流体力学の基本思想では、流線と圧力(揚力)を複素関数で表すことにある。
速度ポテンシャル、流れ関数のいずれも偏微分すれば速度が出てくる。
そこから、オイラーの定理、ベルヌーイの定理、ジッタジェーコフスキーの定理が出てくる。
「はじめての解析学 微分、積分から量子力学まで」では、流体力学では流線と圧力の2つの変数を複素関数として表現することで、障害物の流線を表現でき、最終的に飛行機の翼と空気の流れを計算するという流れになる。
「高校数学でわかる流体力学 ベルヌーイの定理から翼に働く揚力まで」では、障害物のある流速から揚力が生まれる説明を計算式と一緒に丁寧に説明してくれているので理解しやすい。
【4】量子力学の基本思想は、シュレディンガー方程式の理解にある。
電子の位置を知りたいが、実際は確率でしか分からない。
位置を把握する確率は、確率密度関数で決まる。
確率密度関数は波動関数で表現される。
波動関数はシュレディンガー方程式から導かれる。
「はじめての解析学 微分、積分から量子力学まで」では、そういう流れが基本にあって、ハミルトニアンやポアソン括弧、演算子の量子化、飛び飛びのエネルギーが出てくると説明してくれている。
「ゼロから学ぶ量子力学 普及版 量子世界への、はじめの一歩」ではその説明をお約束として前提としている。
「はじめての解析学 微分、積分から量子力学まで」では、量子力学を解析学が最終的に定式化する説明として、最終的に、シュレディンガー方程式とヒルベルト空間が1対1に対応すること、物理量がエルミート作用素に1対1に対応することを説明してくれている。
ただし、量子力学は奥が深いので、これだけでは不十分。
「よくわかる量子力学」で最終的に習得が必要かなと思う。
【5】特殊相対性理論の基本思想は、ローレンツ変換に対し、従来の古典力学の見方とアインシュタインの見方が決定的に異なる点を理解することにある。
「ゼロから学ぶ相対性理論」では、ローレンツ収縮の話は古典力学の観点からも出てくるが、アインシュタインの考え方が独創的である点を丁寧に説明してくれている。
また、ミンコフスキー空間の考え方も独特だが、「ゼロから学ぶ相対性理論」では、ローレンツ変換後の座標をへしゃげる(回転させる・少しだけ潰す)という比喩が理解しやすかった。
【6】統計力学の基本思想は、温度・圧力・熱量のようなマクロな物理量とアボカドロ数もの膨大な数の分子の運動を結びつける時にエントロピーが橋渡しする点にある。
ボルツマンの定理がエントロピーと場合の数を橋渡しする。
「高校数学でわかるボルツマンの原理―熱力学と統計力学を理解しよう」「ゼロから学ぶ統計力学」の説明が丁寧だった。
【7】物理学の本を読んでみて面白いと気づいた点は、複雑な自然現象を単純なモデルとして構築した後、局所的な変化から微分形式を導き、最終的に公式や物理量を導出すること。
単純なモデルと局所的な変化から微分形式、つまり微分方程式を導く箇所は物理屋特有の直観的な考え方がある。
自然現象はこうあるべきだ、という考え方に基づく。
そして、得られた公式や物理量に対し、単なる数式や数値と思わず、物理的にどんな意味を持つのか、を徹底的に考える所が面白い。
そこに物理屋特有の発想がある。
一方、得られた公式や物理量は理論に過ぎず、実験や観測によって最終的には証明される。
理論と実験・観測のアウフヘーベンによって物理学の体系や基礎づけられて強化されるわけだ。
直感と厳密な計算、根気強い実験という相反する能力が要求されている点が面白いと思った。
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