ビジネス・歴史・経営・法律

2023/09/18

ビジネス書の名著はどれ?

山口周さんがお勧めのビジネス名著をリストアップされていたのでメモ。

自分が読んだ経験のある本があったので、共感できた。

経済学をベースにした戦略論、組織論は好き。
人間の意志を超えた次元で、自然法則のように戦略も組織も縛られる。
そういう原則を抑えていれば、悪循環に陥る状態を防ぐことができるはず。
マンキュー入門経済学
戦略の経済学
イノベーションのジレンマ
組織の経済学
組織は戦略に従う

戦略/組織/人事と組織の経済学シリーズを読んでいる: プログラマの思索

組織論一般の理論を解説しているのが分かりやすかった。
組織行動のマネジメント

とても薄い本なのだが、アイデアがどうやって生まれるか解説してくれている。
アイデアの作り方

佐藤さんの解説記事がわかりやすい。
素早く考える能力、じっくり考える能力 : タイム・コンサルタントの日誌から

IT業界の営業戦略、プロセス導入ではキャズム理論が必須と思う。
パッケージ製品の営業だけでなく、新しい開発運用プロセスを導入する時もキャズムの法則に似たような事象が見られるから。
キャズム

キャズムの感想~イノベータ理論とホールプロダクト理論: プログラマの思索

伝記本として読んだ。
スティーブ・ジョブズ I」「スティーブ・ジョブズ II

岩波文庫なので文章は硬い。
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
君主論

自分が弱いのは意思決定、ゼネラルマネジメント、財務会計の分野かな。
全部読み切るには10年ぐらいかかりそうな感じ。

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2023/08/16

営業は顧客の”購買代理人”である

「営業は顧客の”購買代理人”である」というツイートにハッと気付かされたのでメモ。

【参考】
きたざわ/リンゴ農家の経営改善/SUNABACO受講中さんはTwitterを使っています: 「「営業」がマーケティングの下位概念のような語られ方をされることがあるのだけど、どっこい営業の中でも飛びぬけて優秀なセールスは、マーケ的な思考を身に着けている。 【営業は顧客の”購買代理人”である】 野村証券で働いていたころ、トップセールスの方が言っていたことを今でも思い出す。」 / X

きたざわ/リンゴ農家の経営改善/SUNABACO受講中さんはTwitterを使っています: 「顧客自身すら気づいていない課題を見つけ出し、言語化し、「それを解決するためにはどんな商品が必要なのか?」を探し出し、提案する。セールス主導で「商品を買わせる」のではなく、顧客の隣に座って「一緒に解決策を探る」。僕が尊敬している素晴らしいセールスはこれをやってる。 #DX7th #SUNABACO」 / X

現代の営業プロセスは分業化されている~THE MODELの感想: プログラマの思索

ビジネスや営業のセンスが優れた人は、他の分野とは異なるセンスを持っているように思っている。
そのセンスとは何なのか、僕はずっと言語化できないでいた。

以前、「ロジカルシンキングの道具箱」という書籍を読んだ時「あらゆるビジネスは代行である」というフレーズを見つけてストックしていた。
その後、「ビジネスとは、顧客の業務を代行して対価を得ること」と自分なりに解釈して理解していた。

たとえば、昔なら地方の人は自分たちの裏庭の農地から野菜を作って自家消費していたが、都市住民なら自分で作らずにスーパーから提供される野菜を購入することで代用している。
つまり、スーパーはあらゆる食料を顧客に提供する人たちである。
あるいは、小売業者や金融業者は自分たちの業務システムを開発導入するために、ベンダにソフトウェア開発を委託する。
もっと視点を高くすれば、顧客の問題点や課題を解決するサービスをビジネスとして成り立たせて提供するならば、彼は顧客の問題解決の代理人になっている。

その発想から発展させれば、マーケティングに携わる人、顧客の代わりに、顧客の要望を最も叶えられそうな商品を購入する代理人と言えよう。
つまり、マーケティングとは、顧客の顕在化した欲望だけでなく、まだ潜在化されていない欲望も見抜いて、顧客を驚かせることもできるだろう。
そういう人が優れたマーケッターがと言われるのかもしれない。


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2023/05/13

第85回IT勉強宴会の感想~概念データモデルからビジネスモデルを構築すべきという考え方

土曜に開かれた第85回IT勉強宴会で、真野さんがデータモデリングの観点でエンタープライズシステム設計を講演されたのでオンラインで聞いた。
講演内容を知った前提で、感想をラフなメモ書き。

【参考】
概念モデルの効用を知ろう - connpass

概念モデルの効用を知ろう(第88回IT勉強宴会inZOOM/大阪サテライト) | IT勉強宴会blog

第39回IT勉強宴会の感想~花束を作る花屋の業務モデルをT字形ERと三要素分析法で比較する: プログラマの思索

第62回IT勉強宴会のメモ~2人の方法論者によるデータモデリング激レア対談: プログラマの思索

「データモデリング入門-astah*を使って、TMの手法を使う-」はとても良いモデリング資料: プログラマの思索

業務ロジックをデータモデリングはどこまで表現できるか?: プログラマの思索

リソース数がビジネスの可能性に関係する理由: プログラマの思索

【1】講演のメッセージは、DXで新規ビジネスを創出したいなら、概念データモデルを描くことから出発しよう、ということ。

メッセージの背景にある課題は、昨今、IOTやSaaSなどのSoE、既存の業務システムのSoRなど色んなところから数多くのデータがビジネスの副産物として簡単に入手して蓄積できるようになった
そのデータをAIや機械学習に食わせて分析するようにしたい。
しかし、色んな入り口から源泉データが発生し、途中で加工されて雪だるま式に派生データが積み重なり、複雑なトランザクションデータになっている。
そのためにそのデータを利活用しようとすると、派生データを取り除き、源泉データを区別して本来のデータを抽出する仕組みが必要だ、という問題意識。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「我々が扱おうとしているのは、大半が加工・集約された派生データである。データがどこで加工されたのか、出処はどこなのかを探ることが重要。源泉データを突き止めるためにデータの系統図、データの変遷をたどるのが必要。イベントを時系列に並べてリソースを抽出する、ということかな? #benkyoenkai」 / Twitter

そこで、SoE領域、SoR領域などの源泉データからどのように加工されてデータ連携基盤ハブにたどり着くのか、をデータモデルの観点から整理分類し、データクレンジングしたきれいなデータをデータ活用基盤へ連携してAIや機械学習に使ってもらうという仕組みにする。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「源泉データがレガシーなSoRだったり、SaaSのSoEだったり、データレイクからだったり色々ある。そういう風にデータが時系列で加工されていく過程が見える。 #benkyoenkai」 / Twitter

講演では、製造業のサプライチェーン全てをデータモデル化し、コスト最適化の観点でシミュレーションとして使う事例が紹介されていた。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「取引先や原材料、中間加工品の調達関係を描いたデータモデルが必要となる。制約条件は、取引先や原材料、中間加工品の調達関係を描いたデータモデルが必要となること。事業部間のデータ統合ができていることが前提。プロセスの再現だけではデジタルツインは実現できない。 #benkyoenkai」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています: 「デジタルツインでは、データ連携基盤Hubが重要。SoRが源泉データ。SoRからデータ連携基盤Hubを経てデータ活用基盤へデータが流れることになる。 #benkyoenkai」 / Twitter

僕の感覚では、雪だるま式に加工されて複雑化したトランザクションデータを時系列に並べて、マスタ(リソース)をトランザクション(イベント)と区別して抽出し、イベントやリソースをそれぞれ管理する仕組みを作る、というように捉えた。
実際の分析手法では、データモデルの正規化も使うし、クラスとインスタンスを区別することでクラスを抽出しロールとしてポリモルフィックに振る舞わせるように整理する。

講演では、顧客というクラスは、顧客、消費者、代理店、法人客というロールがある例が紹介されていた。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「データモデリングは分類学である、とデータ総研の方は言っておられた、と。顧客、消費者、代理店、法人客などのロールを分類して、特化・汎化のER図で描く。IDEF1Xなのでオブジェクト指向設計と同じ。パーティモデルの概念と同じ。 #benkyoenkai」 / Twitter

【2】データモデルを作る目的は3つ。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「データモデルを作る目的。3つある。ビジネス構成要素や業務ルールを把握する。保有するデータをAI機械学習の入力源にする。新規ITシステム構築に活用する。 #benkyoenkai」 / Twitter

【3】概念データモデルを描くメリットは何か?
メリットは2つある。

1つ目は、ビジネス構成要素を資源(リソース)と活動(イベント)の2種類に整理統合することによって、今後新たなビジネスモデルを生み出す材料として扱えること。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「ビジネスの構成要素は資源(リソース)と活動(イベント)からなる。リソースは普通のマスタ、イベントは普通のトランザクションとみなせるね。羽生さんの本ではイベントに注目するとデータモデルを作りやすいと言っていたなあ。時系列に並べれば自然にDFDみたいなER図が描けるから #benkyoenkai」 / Twitter

データモデルのエンティティをイベントとリソースの2種類に整理するアイデアは、T字型ER(旧)や羽生さんのデータモデリング手法でも出てくる。
羽生さん本では、イベントは必ず日付があること、そこからイベントとリソースを区別しましょう、と言っていた。

「データモデリング入門-astah*を使って、TMの手法を使う-」はとても良いモデリング資料: プログラマの思索

業務ロジックをデータモデリングはどこまで表現できるか?: プログラマの思索

ここで、イベントの数とリソースの数を数えて、もしイベントの数がリソースよりも少ないならば、リソースを組み合わせて新たなイベント(トランザクション)を生み出すことで、新たなビジネスモデルを考える切っ掛けの一つになりうる。

リソース数がビジネスの可能性に関係する理由: プログラマの思索

第39回IT勉強宴会の感想~花束を作る花屋の業務モデルをT字形ERと三要素分析法で比較する: プログラマの思索
(引用開始)
リソースの数よりもイベントの数が少ない場合、リソースの組合せで発生する可能性のある対照表というイベントは、その会社の業務として存在していない事実がある。
すなわち、新しい業務を生成することで、新規ビジネスを作り出す根拠になりうる。
(引用修了)

2つ目は、講演では、プロセス指向設計で使われる業務フロー図では、既存の業務フローで業務を入れ替え・削除したり、担当組織を入れ替える程度であって、BPRや業務改善しかできない。
DXで本来やりたい新規ビジネスモデルを生み出すことは、業務フロー図からでは発想できない弱点がある。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「データモデルの活用例の1つはDXへの適用。経営者、業務部門、IT部門のコミュニケーションツールとして使う。ビジネス創出のためには業務フローアプローチではBPRや業務改善に留まり、新規ビジネス抽出につながらない。順序入れ替え、組織分担変更のレベルにすぎない #benkyoenkai」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています: 「都度受注モデルからサブリスクプション契約モデルへビジネスを変更する。エンティティの置き換えだけでなく、新規イベント、新規リソースの追加が必要になることが明確に分かる。すると、新規イベント、新規リソースを保守管理する組織も必要になるだろう。 #benkyoenkai」 / Twitter

概念データモデルでAsIsモデルを描き、そこからエンティティを出し入れすることで、新規ビジネスモデルを生み出せるはず、と講演では説明されていた。

この部分については、なるほどと納得できる部分もあるが、本当にそうなのかという疑問も生じる。
確かに、講演で例に出た、AsIsの受注契約モデルとToBeのサブスクリプション契約モデルでは、業務フロー図でAsIsからToBeは出てこないだろう。
なぜなら、サブスクリプション契約モデルは誰も知らない初めてのビジネスモデルなので、業務フローをそもそも描くことすら難しい。
どんな業務が必要で、どの組織が業務のどのプロセスを担当して回すのか、そういう具体的な細かい粒度まで落とし込むのは至難の業だ。

しかし、AsIsの受注契約モデルとToBeのサブスクリプション契約モデルでは、概念データモデルを描いてみると構造はかなり違う。
契約エンティティなどの一部のエンティティは同じだが、AsIsモデルでリレーションシップや新たなエンティティをちょっとだけECRSでいじればToBeが出てくる、というのはちょっと無理があると思う。
実際、QAタイムでは、既存のAsIsモデルの概念データモデルでエンティティをECRSで出し入れする程度でToBeモデルが作れるのか、という質問もあった。

概念データモデルで新規ビジネスモデルを描く重要性は理解できるが、具体的なデータモデルを整合性が取れるように生み出すことは、別次元の作業なのだろうと思う。

【4】概念データモデルとオブジェクト指向設計、ドメイン駆動設計の違いは何なのか?

講演で紹介された概念データモデルはIDEF1Xで描かれていた。

ER図 (Entity-relatonship Diagram) | astah* 機能ガイド

IDEF1Xのエンティティ同士の関連線はクラス図と異なるが、多重度を書いたりロールを書いたりするのでクラス図に似ている。
オブジェクト指向設計やドメイン駆動設計が好きな人は、たぶん違和感なくIDEF1Xの概念データモデルを理解できるだろうと思う。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「受注出荷のデータモデルをIDEF1XのER図、DFDで描かれた事例。クラス図に読み替えやすい。 #benkyoenkai」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています: 「受注出荷モデルの例。受注と出荷の関係が1対1、1対多では何が違うか?受注単位の出荷、一括受注して分割出荷。IDEF1XのER図はクラス図に似てるのでドメイン駆動設計が好きな人は読みやすいと思う  #benkyoenkai」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています: 「抽象化したエンティティはロール概念を用いて関連付けることができる。真野さんが説明されるデータモデルはクラス図にそのまま置き換えられるね。 #benkyoenkai」 / Twitter

データモデリングがなかなか普及しない原因の一つは、ドメイン駆動設計が好きな人はデータモデルを読み解きにくい現象が多いのではないか、と推測するので、この辺りは1つのきっかけになるかもしれない。

【4】渡辺さん式データモデルと真野さんの講演で出てくる概念データモデルの違いは何なのか?

真野さんの講演で出てくるデータモデルは概念モデルレベルなので、エンティティ名しか書かれていない例が多い。
一方、渡辺さん式データモデルは、すべての属性を書き出し、関係従属性の意図まで明確に表していて、実際のデータの例も書いているので、より具体的だ。
実装モデルそのものと言っていい。

だから、渡辺さん式データモデルではテーブル仕様書をそのまま出力できるレベルであり、Railsのようなフレームワークを使えばすぐにCRUD画面も作れる。
つまり、どんな画面や帳票が必要で、どんな業務や画面操作でデータが生成されて更新されていくか、というレベルまで全て把握できている。
だから、ローコード開発やノーコード開発と相性がいい。
たぶん、SalesforceやKintoneのようなローコード開発ツールと相性が良いと思う。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「真野さんのデータモデルはIDEF1Xで描かれてるので、渡辺さんのER図とは見た目は違う。個人的には、渡辺さんは関係従属性の意図まで明確にしインスタンスも例示するので、より実装モデルに近いと思う。だからローコード開発と相性がいい。 #benkyoenkai」 / Twitter

しかし、関数従属性やキーの種類の理解が深くないと、データモデルを読み解くのは難しいと思う。

再入門:「正規化崩し」としてのサロゲートキー - connpass

(引用開始)
・候補キー(candidate key):レコードを一意に特定するキー。1テーブルに複数存在することがある
・主キー(primary key):代表として定めた候補キー。項目値の変更は許されない
・単独主キー(single primary key):1項目で出来ている主キー
・複合主キー(composite primary key):2つ以上の項目で出来ている主キー
・自然キー(natural key):業務上意識されている候補キー。単独主キーか複合主キーかは問わない
・サロゲートキー(surrogate key):業務上意識されていない単独主キー。代理キーともいう
(引用修了)

サロゲート単独主キー vs 複合主キーの話、予習編 - たなかこういちの開発ノート

アーキテクトは、データモデルから業務フロー図、画面帳票、組織構成までイメージできる能力を求められる。
たとえば、渡辺さんの本を読めば、ほとんどデータモデルばかりでDFDは少しだけしか紹介されていないので、実際にどんな業務フローが必要になってくるのか、は自力で考えなければならない。
渡辺さんの本に出てくるデータモデルでは、複合主キーや外部キー、特に2次識別子(Alternative Key)が巧妙に使われていて、業務ルールや制約条件を表しているので、注意深く読まなければ割と読み落としやすい。

【5】概念データモデルはどの工程で使われて、どんな役割の人が担当すべきなのか?

講演では明示的な説明がなかったように思うが、常識で考えると、企画フェーズや要件定義で概念データモデルが作られる。
担当者はアーキテクトのレベルの人になるだろう。

作られた概念データモデルの粒度は、講演で紹介された粒度ならば、エンティティ名だけでかなり曖昧。
渡辺さん式データモデルの粒度なら、論理モデルまで落とし込む必要がある。
その場合、そこからすぐに実装モデルに置き換えられるから、ローコード開発ツールを使うことを前提にしているだろう

最近はデータモデリングから離れていたので、講演を聞いてすごくワクワクしながら聞いていた。
改めて、データモデリングのテクニックを自分なりに整理してみたいと思う。

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2023/04/15

令和4年度春期試験のITストラテジスト試験第4問をastahでモデル化してみた

令和4年度春期試験のITストラテジスト試験第4問について、問題文の構造をastahで図式化してみた。
自分のメモ用に残しておく。

【参考】
ITストラテジスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

令和4年度春期試験のITストラテジスト試験

【1】ストラテジスト試験第4問は必ず組込みソフトウェア開発企業のテーマになる。
今回のテーマは「電力自由化や再生エネルギー切り替えの環境変化に対し、電力会社の子会社が局地的な気象予測システムを開発し、親会社と連携することで新規顧客開拓を狙う」事例。

SDGsや二酸化炭素排出削減、環境意識の流れ、EV化などの最近の事情を考えると、よく考えられたテーマと思う。

【2】ストラテジスト試験第4問の特徴はいくつかある。

【2-1】1つ目は、登場人物が非常に多いこと。
今回の事例を3C分析で書いてみるとすごくよく分かる。

St_r4_pm1_4_3c

【2-2】特に、協力者が重要な要素になる。
なぜならば、組込みソフトウェア開発企業は特定のアプリケーションソフトウェア開発には強いが、ハードウェア製品の開発は弱かったり、GISや気象データ、特殊技術を持つソフトウェア企業と連携する必要があるからだ。
自社にない経営資源は、外部企業と提携することで解決するためだ。

この事例では、GISデータを持つ企業、気象測器を製品販売する企業が協力者になる。

【2-3】2つ目は、脅威として法規制や政治情勢、社会ニーズなどのPEST分析が必要になること。
特に、法規制が多い。
人命にかかわるソフトウェアやハードウェアであればなおさらだ。
法規制の要件により、ハードウェア機器もソフトウェアも制限を受けるし、その分、コストがかかったり、ソフトウェア開発の難易度が上がる。

一般に、法規制は国が定めるので、政府や国という登場人物が出たら、法規制に必ず関わることになる。

【2-4】3つ目は、事業戦略の方向性は、新規顧客開拓が基本である点だ。
一般に、今までの既存顧客だけでは売上が減少気味だったり、SSGsなどの環境変化で新たなニーズが生まれている背景があるから、新たな市場へ乗り出さないといけない、という方向性になりやすい。

では、新規顧客開拓に必要な経営資源は何か?
一般には、地域に根ざした営業力、特定の分野に特化した技術力があげられる。
技術力の例には、ソフトウェア開発力もあるし、保守サービス、AIやハードに特化したソフトウェア技術などがある。

すると成長戦略として、今までに培った技術力で新製品や新サービスを開発し、営業力を活かして新たなニーズを持つ顧客へ販売する、という方向性になる。
つまり、かなり積極的な経営戦略になるだろうと思う。

【3】今回の事例をSWOT分析してみたモデルを描いてみた。
モデルを描いて気づいた点は、いくつかある。

St_r4_pm1_4_

【3-1】1つ目は、協力企業と連携する箇所は必ずシステムの機能追加が必要になること。
例えば、気象予測システムに「電力の融通量を計算する情報システム」と外部連携する機能が必要になる。
この外部連携機能により、他の電力会社に局地的な気象情報に基づく情報を連携し、電力の大きな変動に対応して、全国規模の効率化を図ることになる。

たとえば、気象予測システムにGISデータを取り込む機能が必要になる。
局所的な気象は土地の起伏や構成要素に密接に関係するので、GISと連動させる必要があるからだ。
よって、GISの地図データを扱う企業と連携する必要がある。

まあ考えてみれば、協力企業と情報連携するわけだから、外部連携機能は必須になるのは当たり前。

【3-2】2つ目は、政府の方針や法規制にかかわる要件は、システムの機能に埋め込まれていること。
たとえば、気象業務法により、定められた人数以上の気象予報士を雇用する必要がある。
よって、気象予測システムでAI分析したデータは、必ず気象予報士がチェックして、顧客へ広報するという業務がシステムに埋め込まれることになる。

たとえば、政府は電力自由化を促進する必要があり、電力不足を防ぐ必要があるので、電力会社間で電力を融通してほしい思惑がある。
よって、気象予測システムと電力会社が持つ電力量算出システムが連携して対応する必要がある。

つまり、法規制や政府方針に関わる要件は、システムのどの機能で実現するのか、を必ずチェックしておく必要がある。

【3-3】3つ目は、課題の解決や経営資源がシステムの機能と密接に関係していること。
たとえば、局地気象予測システムでは、気象測器を高密度に多数設置する必要があるので通信手段が必要になる。
そこで、親会社の電力会社が持つ通信インフラである有線・無線ネットワークを利用することで解決する。
つまり、経営資源を活用することで、システムに足りない機能や環境を補充することになる。

たとえば、局地気象予測システムでは、気象測器は修理対応や交換を伴う定期保守が必要になる。
しかし、観測成果を発表するには、気象測器は基本は検定合格品を使用しなければならないが、高価であり、製品販売する企業も少ない。
そこで、観測成果の発表を止める代わりに、検定合格しない安めの製品を利用すること、親会社D社の強みである災害時を想定した保守体制を活用して、検定合格しない製品販売のZ社と提携し、予備機の追加や製品修理だけの保守を契約することで対応する。
つまり、投資効果のバランスを取っているわけだ。

【4】ストラテジストの他の問題もastahでモデル化してみると、販路開拓を目指す新規事業とそれを実現するシステム要件がうまく関連していることがよく分かって面白い。
ベンチャー企業も、新規事業を起こしたい大企業も、こういう発想でシステムを開発しようとしているのだろう。
他にも試してみたいと思う。

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2023/04/02

ChatGPTで起きている事象の意味は何なのか

今年に入ってから、ChatGPTによるAIの進展が凄まじい。
ChatGPTで起きている事象の意味は何なのか。

今「深層学習の原理に迫る: 数学の挑戦 (岩波科学ライブラリー 303)」を読んでいる。
全て理解できていないが、気付きが色々あった。
ラフなメモ書き。

【1】ChatGPTのような大規模言語モデルの中身は物理学や数学と同じ。
つまり、過去の数学や物理学の理論をベースに作られている。
ChatGPTの仕組みを知ろうとするとそこまで深掘りすることになる。

【2】ChatGPTの仕組みは、演繹的なのか、帰納的なのか?

(引用開始)
パラメータ数を大きくすることで起きていることは、実はまだわかっていなくて、2つの可能性があるという。
一つ目なら今後"人類がこれまで言語その他の情報の形で書き溜めた知識の総体を学習し切ったところで性能向上は頭打ち"。

二つ目なら"当面は際限なく性能が向上するように見えるだろう。その場合、計算力に関する物理的な制約がクリティカル"で、センサーなどの身体性を持つことで壁を越えることになる。"人類のこれまでの知識の総体」を上限とする理由が無くなり、物理現象の時定数のみが制限として残る"
(引用終了)

僕の直感では、ベースは帰納的で、その後のロジックは演繹的だろうと思う。
大量の学習データを元に訓練して学習モデルを作ると、その後は、得られた特徴量や概念を元に膨大な計算エネルギーを駆使して、演繹的にロジカルに色んなアウトプットを導き出せる。
ちょうど、公理系から定理、系、命題がロジカルに大量に生み出されるのと同じ。

では、そのような大規模言語モデルは、人間のように「意識を持つ」のだろうか?
大規模言語モデルは自我という意識を持ち、数多くの意見を作り出し、行動を生み出すようになるのか?

【3】深層学習の発展は、理論物理学と実験物理学の2つの分野のアウフヘーベンに似ているように思える。

つまり、深層学習の原理にある数学や物理の理論と、実際にプログラムに実装して膨大なコンピューティングパワーを使って膨大な計算量をこなせるような大規模言語モデルを構築することの2つが相互に刺激しあって、より発展していく。

深層学習の原理に迫る: 数学の挑戦 (岩波科学ライブラリー 303)」を読むと、過去の数学の理論では、「深層学習は少ない層で十分な性能が出せる」という普遍近似定理、「膨大なパラメータ数は過剰適合をもたらす」などが既に知られている。
つまり、せいぜい2層程度で、パラメータ数もそんなに多くない深層学習で十分な性能や結果が得られるはず、と思われていた。

しかし、現実は違う。
実際に実装された大規模言語モデルでは、パラメータ数は数億、数兆とか、層も数千、数万とかかなり複雑。
つまり、コンピューティングパワーを使ってプログラムに実装して実験してみると、実験結果と数学の理論に乖離がある。

そういう理論と実験の繰り返しによって、深層学習はさらに進展している。

興味深いのは、過去の物理と今の深層学習の違いだ。
過去の物理学の歴史では、紙と鉛筆による理論と、望遠鏡やビーカーのような器具による実験の相互作用により発展してきた。
現代の深層学習では、物理や数学の理論と、クラウドをベースにした膨大な計算力を持つコンピューティング環境における実験によって進展している。

【4】ChatGPTのような大規模言語モデルはなぜ、ものすごい性能を出しているのか?

つまり、過去の数学の理論では、「深層学習は少ない層で十分な性能が出せる」という普遍近似定理、「膨大なパラメータ数は過剰適合をもたらす」と言っているのに、実際に実装したChatGPTでは、パラメータ数も層も相当に複雑になって、理論と実験に乖離がある。
その真因は何か?

深層学習の原理に迫る: 数学の挑戦 (岩波科学ライブラリー 303)」では、その理由の真因を明確に書いていない。
でも、ヒントは2つあるように感じた。

1つ目は、過去の数学の理論は微分可能な滑らかな関数を暗黙の前提にしていた一方、深層学習では尖った曲線のような非線形な曲線をベースに作られていること。

たとえば、層を増やす時に、シグモイド関数ではなく、ReLU関数のようなわざと非線形にした関数を用いることで、従来の学習モデルの性能劣化を解決した。
おそらく、我々人間が目の前に対処している問題のほとんどは、非線形の性質を持っているからこそ、そういう仕組みを持つ深層学習、つまり多層の深層学習を必要としているのではないか。

2つ目は、深層学習モデルのパラメータ数をあえて増やすことで、学習エネルギーの損失関数を極小化させることに成功したこと。

僕の直感では、複雑な曲線や曲面のくぼみの中で最小値を探すとき、そのままの次元では極小値を探しにくい。
そこで、パラメータ数をあえて数多く増やすと、複雑な曲線や曲面も次元が増えることによって、平坦な曲線や曲面の部分が非常に多くなる。
よって、平坦な部分を全て洗い出した後に、元の次元に戻してからそれぞれの最小値を求めることで、損失関数の真の極小値を導き出せる、と理解している。
つまり、あえて次元数を膨大に増やすことで、損失関数の極小値を計算する手間を省いているわけだ。

そんなことを考えると、膨大な計算力を持つAI基盤を実際に実装できたからこそ、実験して得られた知見を元に、理論へフィードバックされたのだろうと思う。

【5】「深層学習の原理に迫る: 数学の挑戦 (岩波科学ライブラリー 303)」を読んで気づいたのは、我々人間が視覚、聴覚、触覚などの五感で得られた情報は、全て多次元ベクトルに置き換えられること。

これにより、人間が持つすべての情報や概念は、多次元空間の中にあるベクトルという点であり、ベクトル同士の距離を計算することで、似通った意味である判定、特徴量の抽出などにつながっているわけだ。

何となく、ソシュールが言う言語の概念、フッサール現象学に出てくる自我や他我の概念に似ている気がする。

RDRAをAIに載せるために格闘されているツイートを読むと、まさにその考え方と同じ。

(1) akipiiさんはTwitterを使っています: 「なるほど、要件をグラフ構造にすれば行列に置換できるから深層学習に乗せられるわけか。この発想は、他のユースケースきも使えそう」 / Twitter

【6】ChatGPTで起きている事象の意味は何なのか?

ビジネスモデルの観点では、今起きている事象はAI革命の真っ只中であることだ。
そして、AI革命を主導する人たちは、世界最高レベルの科学者やエンジニアを膨大に持ち、クラウドやデータセンターを膨大に持つ米国と米国の一部の巨大IT企業、つまりGAFAMなのだろう。

akipiiさんはTwitterを使っています: 「昨今のAIの急速な発展を目にすると、次の10年も主役は米国の巨大IT企業だと言わざるをえない。AI開発には、世界最高レベルの科学者やエンジニアといったタレント、膨大な計算リソースが必要であり、それを有しているのは米国と米国の一部の巨大企業だけである https://t.co/Y2bXSdOCYR」 / Twitter

AI革命の中で生きている一人の凡人の観点では、「AIは時代の津波」だということ。
99%の人は、東日本大震災の津波のように巻き込まれて、職を失い、生きる意義を見失い、命の危険にさらされるかもしれない。
だからこそ、AI革命の行き先を最後まで見届ける必要がある。

(引用開始)
私はAIは時代の津波だと思ってる。津波だからもちろん止められない。ごく少数はこの時代の津波に乗れるかもしれないけど、殆どの人は飲み込まれる。

今はいかに高台の登るか、いかに泳ぎを極めるか、いかに頑丈ないかだを作るかに集中すべき。つまり生き残るすべを必死に探して身につけるのだ。「AI?よく分かんない。関係ないっしょ」なんて言ってる人はほぼ確実に溺れる。
このレターを見て私はさらに危機感を持った。私は溺れたくない。まずは出来るだけ使ってみる事。そこが第一歩。
(引用終了)



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2023/02/14

ストラテジストとプロジェクトマネージャの役割の違いは何なのかpart1~CSFはWBSみたいなものと捉える

経営戦略企画書やバランススコアカードに出てくるCSFとは一体何なのか?
CSFの使い道は何なのか?
ITコーディネータの先生に教わってようやく理解できた。
気づいたことをラフなメモ書き。

【1】CSFという言葉は知っていた。
CSFはCritical Success Factorの通り、目標達成の成功状態のことだ。
しかし、CSFはどんな時に必要なのか、CSFは何のために使うのか、腹落ちしていなかった。

経営戦略企画書において、バランススコアカードを作る時に、CSFはよく出てくる。
バランススコアカードでは、財務・顧客・内部プロセス・組織と成長のレイヤで、CSFや課題を因果関係や先行後続関係でつなげて戦略マップを作る。
たとえば、研修して人材を育成することで、営業や製造の体制が安定し、業務が効率化されたり、営業活動が活発になったりして、顧客満足度も上がり、原価も削減できて、最終的に売上拡大、利益増大を達成する。
そういうCSFの因果関係ができる。

【2】まず自分が勘違いしていた点は、CSFは成功状態であるから「~できる」という状態表現で書かれることだ。
なぜなら、目標が達成されて成功されたのだから、以前抱えていた問題は解決されて、達成「できた」という状態になるからだ。

一方、問題は「~できない」「~が難しい」という否定表現、課題は「~のために~する」という行動表現で書かれる。
どうやら自分は、経営課題とCSFを混同していたらしい。
本来は、問題に対し、経営課題が抽出されて、経営課題に対応するという対応策を実行すると、最終的に問題が解決されて、目標を達成できた、というCSFに結論付けられる。

他方、CSFは中間目標とも言われる。
最終的な経営目標に到達するためには、いくつかのマイルストーンをおいて、それらマイルストーンを全て通過して初めて最終ゴールに至る。
すなわち、CSFという中間目標は複数個存在するし、CSFの因果関係や前後関係が付けられることで、最終的なゴールへの道筋が明確になる。

すると、CSFの因果関係を元に、複数個のCSFをつなげて時系列に並べると、その図は経営戦略のロードマップになる。

【3】この考え方は、プロジェクト計画書におけるWBSとガントチャート関係と同じ。
WBSはプロジェクト実行に必要な作業全てであり、先行後続関係を付けて階層化された構造を持つ。
そのWBSは、時系列にマッピングさせればガントチャートになる。

同様に、CSFは経営目標を達成するための中間目標であるから、複数個のCSFには必ず因果関係が発生し、それは先行後続関係になる。
CSFの先行後続関係を時系列にマッピングさせれば、経営戦略のロードマップになる。
あるいは、経営戦略企画書のマスタスケジュールとして作られる。

【4】CSFは何のために使うのか?
CSFは経営戦略のロードマップを作成するために使われる。

経営戦略企画書に出てくるCSFは、プロジェクト計画書のWBSみたいなもの
プロジェクト計画書にあるWBSからガントチャートが作成されるように、経営戦略企画書のロードマップ、マスタスケジュールはCSFから作成される。

【5】そう考えると、バランススコアカードに出てくるKGI、KPIの考え方もスムーズにつながる。
なぜならば、経営戦略の最終目標に至る中間目標を達成できたのか、評価するために、KPIという業績評価指標を使って定量的に評価するわけだ。
CSFは「~できる」という状態表現でかかれるので、評価指標に落としやすい。

たとえば、「顧客満足度が上がっている」というCSFであれば、顧客満足度をアンケートで収集して採点して、以前と比較して上がっているかどうか評価すればいい。
「作業時間が短縮して業務を効率化できた」というCSFであれば、作業時間や作業工数を毎日記録して、該当の作業の時間が以前よりも減っているか測定すればいい。

そういう中間目標をブレイクダウンしていけば、組織や人材の観点のようにより低レベルな業務のKPIで測定するし、ドリルアップすることで顧客や市場、財務という観点のKPIが達成されて、最終的には経営目標であるKGIが達成される。

KPIやKGIという定量的な業績評価指標があるからこそ、毎月、四半期ごとに定点観測して業務プロセスを健康診断のように診断できる。
KPIが順調であれば問題ないが、KPIが落ちていれば、その原因を探り改善策を立てて、業務を見直していくことになる。
いわゆるPDCAが自然に行われることになる。

【6】CSFという概念を使いこなすことで、経営戦略のロードマップやマスタスケジュールが生成されて、KGIやKPIで定点観測して評価するという流れがベースにある。
この考え方は、プロジェクトマネージャよりもストラテジストと言われる立場で必要であると思う。

つまり、個別プロジェクトを切り盛りするプロジェクトマネージャではなく、より経営戦略に近い立場にいるストラテジストが常に考えているはずだから。

ストラテジストとプロジェクトマネージャの考え方の違い、役割の違いについては別で考察してみる。


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2023/01/09

農林水産業はITと相性がいい

農林水産業はITと相性がいい事例を見つけたのでメモ。

【参考】
りんご栽培の作業を「見える化」 労働生産性の高い農業を追求【もりやま園株式会社(青森県弘前市)】 | 中小企業とDX | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

記事では、りんご園でりんごの木を1本ずつデータ化して生産性を分析し、そこから労働生産性を低い状況をいかに改善して収益を上げるか、という課題を次々にIT技術で解決していった事例が紹介されている。

僕が興味を引いたのは、2つある。
1つ目は、使ったIT技術は割りと当たり前のテクノロジーであるにも関わらず、農林水産業ではとても強力な効果があったことだ。

膨大な本数のりんごの木をデータ化するには、いくらパートやアルバイトで手作業でやってもとても時間がかかる。
そこで、スマホを使いリンゴの木のデータを登録するシステムを導入してみると、「りんごの摘果の作業に2倍の時間がかかり、しかも収量が3割少ない品種があった。1時間働いて400~800円程度の稼ぎ。これでは最低賃金にも満たない。その栽培のために年間の労働力を何時間も浪費していた。正直、ぞっとした」。
つまり、りんごの木は収益性のバラツキが大きかった。
おそらく、日当たりの良い所、土壌の成分が良い所などの観点で、りんごの木の生育に大きなバラツキが発生していたのだろう。
そういう事実がデータ分析できるだけでも十分に効果がある。

そういう現状が分かれば、生産性の低い木の代わりに他の品種へ変更したり、労働力の配分を変更するなどの打ち手も指せる。
おそらく、農林水産業は労働集約的で無駄なリソースが非常に多いために、IT技術を少し導入するだけでも非常に効果が出やすいのだろう。

特に、スマホ、AI、IOT、ドローンのようなハイテクノロジーを農林水産業のシーンでどう使うと効果的なのか、というテーマは素人でも色んな発想が出やすい。
日々食べる食材で実感があるので、こうしたらいいのでは、というアイデアが出やすいからだと思う。

また、農林水産業の労働賃金は、他業種に比べると非常に安い。
だから、IT技術を使って付加価値をつけて労働賃金を上げる余地は非常に大きい。
つまり、IT技術を使って課題を解決するインパクトは非常に大きいだろう。

2つ目は、IT技術を導入する時に政府の補助金を上手く利用して導入し、そのシステムを他のりんご園にも提供していることだ。

スマホを使いリンゴの木のデータを登録するシステムは、地元の商工会議所が実施したコンテストにソフトウエアの開発を提案して補助金を出してもらい、開発したこと。

また、余計な実を未熟なうちに摘み取るりんごは捨ててしまうしかないが、その未熟なりんごを加工してりんごジュースにする提案をして補助金を出してもらい、加工工場を作ったこと。

つまり、設備投資に政府の補助金を上手く利用していること。
農林水産業では、地方活性化の旗印を作れば公共機関から援助してもらいやすい環境もあるのではと思ったりする。

あるいは、農林水産業の6次化と言われるように、生産加工で付加価値を付けたり、りんご観光などのサービスで付加価値を付けることもできるので、地方の労働者の職を支援する範囲も広がるから、地方自治体にとっても良い影響があると考えてもらいやすいのだろう。

他にも事例があれば調べてみたい。

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過学習に陥った人間や社会の事例は何があるのか

深層学習、機械学習では過学習という罠の事例がある。
では、過学習に陥った人間や社会の事例は何があるのか?
ラフなメモ。

【参考】
学習データに最適化されすぎて本来の目的が達成できなくなる「過学習」と同様の現象はAIだけでなく社会全体で起こっているという主張 - GIGAZINE

失敗の本質―日本軍の組織論的研究の感想: プログラマの思索

なぜ米国企業は90年代に蘇ったのか~日本の手の内は完全に読み取られた~V字回復の経営の感想: プログラマの思索

(引用開始)
Sohl-Dickstein氏は、グッドハートの法則の強力なバージョンは機械学習を超え、社会経済的な問題にも適用できると主張しています。グッドハートの法則の強力なバージョンが当てはまる例として、Sohl-Dickstein氏は以下のものを挙げています。

ゴール:子どもたちをよりよく教育する
プロキシ:標準化されたテストによる成績測定
結果:学校はテストで測りたい基礎的な学問スキルの教育を犠牲にして、「テストに正しく答えるスキル」の教育を進める

ゴール:科学の進歩
プロキシ:科学論文の出版に対してボーナスを支払う
結果:不正確または微妙な成果の公開、査読者と著者の共謀が広まる

ゴール:よい生活
プロキシ:脳内の報酬経路の最大化
結果:薬物やギャンブル中毒になったり、Twitterに時間を費やしたりする

ゴール:国民の利益のために行動するリーダーの選出
プロキシ:投票で最も支持されるリーダーの選出
結果:世論操作のうまいリーダーの選出

ゴール:社会のニーズに基づく労働力と資源の分配
プロキシ:資本主義
結果:貧富の格差の増大
(引用終了)

過学習は人間や社会の方が罠にはまりやすいのではないか。
なぜならば、一度成功すれば、その成功事例や成功パターンに囚われてしまって、成功バイアスから逃げにくくなるから。
成功してしまうと、あえてリスクを選択して、別のやり方を取らなくても成功できると勘違いしてしまうから。

過学習の罠は特に平成時代の日本人や日本社会にすごくよく当てはまるだろう。
昭和の時代に日本が経済No.1になってしまったために、その時の製造業の成功パターンに囚われてしまって、95年から始まったIT革命に乗り遅れてしまって、現在はWebはおろか、クラウド、スマホ、IOT、AIには到底追いついていない。

日本人は「失敗の本質」に書かれているように、第二次世界大戦でも日清戦争・日露戦争の成功体験に囚われすぎて国を破滅してしまったという前科がある。
この前科も過学習という観点で考えれば、とてもフィットするのではないか。

過学習の話で面白いのは、過学習から逃れる手順も既に分かっているいることだ。
具体的には、学習が成功しないようにあえてランダム化して、失敗をある程度許容して、頑健なプロセスを確立することだ。

たとえば、受験勉強に過学習でハマりすぎて、過去問のパターンだけに適合してしまって、新しいテーマの問題に対応できない人であれば、わざと別のテーマを勉強したり、別の分野へ広げるとか。

ある既存ビジネスで成功しすぎた企業であれば、新規事業の種をわざと社内に残し、新規事業を起こせる人たちやチームが活動できるような組織文化をあえて作るとか。

でも、過学習はイノベーションのジレンマと同じタイプの罠かもしれない。
一度成功したやり方でどんどん成功してしまうと、他のやり方を試す事自体がコストがかかるし、現在の成功した状況を危うくしてしまうリスクが大きいからだ。

自分自身も過学習やイノベーションのジレンマに陥っていないか、定期的にふりかえって、我が身を見直すことが大切なのかもしれない。

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2023/01/04

経営戦略とIT戦略をつなぐ鍵は何なのか

経営戦略とIT戦略をつなぐ鍵は何なのか?
考えたことをラフなメモ書き。

【参考】
ITの地殻変動はどこで起きているのか?~今後の課題はソフトウェア事業におけるエージェンシー問題を解決すること: プログラマの思索

【資格】ITストラテジスト試験対策 この時期にすること(BSC) | 三好康之オフィシャルブログ 「自分らしい働き方」Powered by Ameba

【1】外部環境をPEST分析や5Fsで分析し、内部環境をVRIO分析やバリューチェーンで分析できたとしよう。
そして、経営目標が定まり、経営方針として経営戦略が立てられたとしよう。
経営者としては、こういう経営目標を実現するためにこんな経営戦略を実現するんだ、とスローガンをあげる。
では、そこからどうやって、どんなシステムが必要でどんな順番でシステムを構築していくのか?

ITアーキテクトが、経営者から提示された経営戦略を元に、これだけの数のシステムの開発や改修が必要です、と言っても、投資効果がなければ経営者は納得してくれない。
数千万円から数億円、数十億円のシステム開発に投資するなら、どれだけの投資効果があるのか、その説明の根拠が欲しいのだ。

【2】では、経営目標や経営戦略からIT戦略までの枠組みはどんな体系図になるのか?
経営目標を達成するために、こういう戦略が必要で、こういうITシステムが必要なのです、するとこれだけの投資額が必要でこれだけのROIが出てきます、という因果関係を表す流れを説明したいのだ。

経営戦略からIT戦略、個別システム開発までの全体の枠組みはこんな感じになるだろう。

経営目標 --> CSFに基づいた経営戦略 --> 業務戦略 --> 全体システム化計画 --> 個別システム化計画 --> 個別プロジェクト計画

一般に、経営戦略は中長期の観点で作られる場合が多いので、3~5年ほどの期間で組み立てられるだろう。
そういう経営戦略の元に、事業にある各業務プロセスが新規で立ち上がったり、業務の効率化を目指す活動が実行される。
そんな業務を支えるためにITシステム、ITサービスがあるから、それらは各事業を支える裏方のシステムが多くなり、一般に基幹系業務システムが多いだろう。
たとえば、販売管理、発注管理、生産管理、会計、債権管理、顧客管理など。
もちろん、顧客を獲得するためのエンゲージメントに注力したシステムやサービス、たとえばECサイトなどもあるだろうが、それと同じくらいの規模のバックエンドのシステムも必要になるし、そちらのシステムの方がより巨大になりやすいからだ。

【3】こういう体系図はバランス・スコアカードで表現できるだろう。
財務>顧客>内部ビジネス・内部プロセス>組織や人の学習と成長 の観点でレイヤ化できるだろう。

すると、各レイヤは業績測定指標というKPIでモニタリングできることになるので、下位のレイヤのKPIが良いから上位のレイヤのKPIも良くなって、最終的に売上向上になり、利益向上につながります、という因果関係で説明できることになる。

つまり、経営戦略とIT戦略をつなぐ鍵は、こういう業務測定指標の因果関係にあるのではないか、と思う。
各レイヤの業務測定指標であるKPIが階層化されていて、下位のレイヤの業務のKPIを上げることで、最終的にKGIという経営目標が達成できる、という流れになるだろう。

【4】では、財務・顧客・業務・成長の観点でどんなKPIがあって、どんな因果関係で結ばれているのか?

財務の観点では、一般的に経営指標だろう。
ROE、ROA、収益性、効率性、安全性など。

顧客の観点では、一般にマーケティング指標だろう。
新規顧客数、RFM分析の指標、顧客満足度、コンタクト件数など。

業務の観点では、業務の効率性を示す指標だけでなく業務を支えるITの観点の指標も含まれるだろう。
一般にはQCDの観点が多いだろう。
品質なら、不良品率、部溜率、稼働率、ライン停止時間など。
コストなら、製品別原価、作業工数、在庫費用など。
納期なら、サイクルタイム、リードタイム、納期遵守率など。
他に、研究開発費、アフターサービスの問い合わせ対応回数など。

学習と成長の観点では、従業員の能力向上やナレッジ蓄積に関する内容が多いだろう。
従業員満足度、従業員定着数、特許数、など。

これらのKPIを組み合わせると例えば、利益向上であれば、下位レイヤーのKPIに分解できるだろう。

利益=売上ー原価
売上=新規顧客数x販売単価
原価=時間単価x作業工数
新規顧客数∝説明会の参加回数x説明会に参加した新規顧客数x営業訪問率x見積依頼率x成約率

説明会の参加回数、説明会に参加した新規顧客数、営業訪問率、見積依頼率、成約率というKPIをリアルタイムに測定するために、CRMのシステムが必要であると判断し、CRMを導入・開発・運用するコストがこれだけかかるが、これだけの売上が見込めるので投資効果があります、という説明の流れになるだろう。

こういう話を考えると、ECサイトで商品購入に至る導線作りと全く同じ。
たとえば、AARRRという指標でECサイトの購入率を分解して、ECサイトの導線となる画面設計を考えるやり方と同じ。

AARRRとは?サービスを成長させるための基本戦略【テンプレート付】|ferret

AARRR(アー)モデルを活用する上で知っておきたいこと | Urumo!

【5】今の自分が経営戦略とIT戦略をつなぐロジックを考えている時、相手を説得できるだけのロジックがなかなか作れずに悩んでいた。
悩んでいた原因の一つは、経営戦略と業務を支えるITシステムの計画の間で、階層化されたKPIによって最終的に経営目標が実現されるから投資効果がある、という説明ができなかったためだろうと思ってる。
自分なりに考えているけれど、思いつきで理由を作ってそれをつなげているから、色んな突っ込みがあるとボロボロと漏れが出てしまうという感じだった。

KPIというツリー構造で考えれば、各指標は各要素に因数分解されて、各要素は下位レイヤーのKPIになるからさらに因数分解されていく、という形式になる。
つまり、経営目標KGIというトップから、下位レイヤのKPIまで数式として分解されるので、一つのロジックツリーという構造で一覧できる。
そういうロジックツリーの構造があるからこそ、KPIを繋いで説明することは数式をなぞるように論理的に説明することと同一になるので、相手も説得しやすくなる、という流れかな。

KPIツリーという考え方はおそらく、フェルミ推定の発想と同じ。
ゴールを達成するために、ゴールを測定するKGIを設定し、それを公式を使って因数分解し、各要素の数値は推定して仮説を立てて、KGIを推定するという流れと同じ。

おそらく既に理解できている人、実践できている人にとってはとても当たり前の考え方なのだろうが、現場で色んな経営課題に対して解決策を提示したり、経営戦略に基づくビジネスモデルを提案したりする時、こういう手法を持っておかないと短時間にそこそこ高品質な提案や仮説が出てこないのだろうと思う。

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2022/12/23

現代日本人の弱点はリーダーシップ不足と生産性が著しく低いこと、そしてリスク許容度が著しく低いことだ

採用基準」「生産性」を読み返したらいろんな気付きがあった。
ロジカルでないラフなメモ書き。

【参考】
「採用基準」の感想~日本の根本問題はリーダーシップの総量が不足していること: プログラマの思索

DXとは組織論である: プログラマの思索

Slack導入がDXに繋がる話: プログラマの思索

諸問題を組織論に持っていくのは目的を手段化していないか: プログラマの思索

ITの地殻変動はどこで起きているのか?~今後の課題はソフトウェア事業におけるエージェンシー問題を解決すること: プログラマの思索

失敗の本質―日本軍の組織論的研究の感想: プログラマの思索

プログラマとスクラムが社会実装を変えていく #Findy_GovTech: プログラマの思索

デジタル庁が解くべき課題とITエンジニアの役割の勉強会の感想~CTOの役割とは何ですか?: プログラマの思索

みんなのPython勉強会#65の感想~社会変革の鍵はIT技術者にあるのかもしれない: プログラマの思索

マッキンゼーの報告書「2030 日本デジタル改革」が手厳しい: プログラマの思索

【1】最近の日本のIT業界を見ていると、主に2つの現象が目につく。
一つは、DXに向いた組織を作ろう、という組織論の話。
もう一つは、DXを実現するためにアジャイル開発をもっと積極的に導入して運用しよう、という話。

この2つの話の背景には、2つの問題意識が真因として隠れていると思う。
具体的には、組織論の話題、アジャイル開発の話題の背後には、日本人はリーダーシップが不足していること、日本人は生産性の意識も言動も非常に低いことだ。

【2】今のビジネス界隈では、DXがバズワードだ。
DXを実現するには、既存の業務であれ、新規の事業であれ、ソフトウェアでコスト削減、さらには売上の創出が求められている。
DXを実現するには、ソフトウェア開発者、そしてそれを取り囲む組織という基盤が必要だ。

しかし、DXに関する組織論のテーマはすごくフワフワとしていると思う。
命令指揮系統ではなくフラットに風通しを良くしよう、心理的安全性が担保されるような組織風土を作りましょう、という組織文化の話題が多い。
だがそういう甘い言葉の背後には、今までの組織文化や事業スタイルを捨てて、新しい事業や新しい組織の関係を作ろうとする原動力が必要なのに、たくさんの壁にぶち当たる怖さが説明されていないように思える。
だから、何となく、現状を批判するだけで何も変わらない、という現象が出ているように思える。

実際は、既存の組織風土を変えるのは、今までの人間関係や組織との関係を変えることであり、自らリーダーシップを発揮して動いていかなければ何も変わらない。
ものすごく自頭の良い人やできる人に従ってやれば問題解決するわけではない。
自らチェンジ・エージェントになり、たくさんの困難な壁にぶち当たるごとに、一つずつ壁を壊したり乗り越えていくパワーが必要になる。

採用基準」では、問題解決には、問題解決スキルだけでなく、問題解決リーダーシップ(Problem Solving Leadership)が必要と主張している。
たとえば、目の前に起こったいじめの問題に対し、MECEやロジックツリーだと言っても何も変わらないし、実際に解決するように行動して初めて、問題解決の方向に動き出す。
それが本来のリーダーシップ。

すると、このリーダーシップの背後には、「自らリスクを取る」という概念が隠れていることが分かる。
自分の思いどおりに変わらない状況に対し、自分と異なる価値観を持つ人を説得して調整したり、自分が持っていない知識やスキルはそいうう専門スキルを持った人たちに働きかけてチームとして問題解決を図ることが必要になってくる。
そういう行動は、思い通りの結果にならないかもしれないリスクに自らチャレンジすることを求める。

しかし、日本人はリスクを取りたがらないと一般的に言われている。
すべてのリスクを回避してリスクをゼロにすることばかりに専念している。
だから、リスクを取ってリーダーシップを発揮するという行為、選択肢が取りにくい人が日本には多いのだろう。

実際、「採用基準」に記載されている通り、日本人はチームプレーでチームに貢献した成果を問われる経験が極端に少ない。
たとえば、小中高校生なら、受験という行動はその人だけの能力測定試験であり、個人プレーにすぎない。
社会人になっても、プロジェクトリーダーや管理職にならない限り、自分だけの仕事の成果しか問われない。
すると、一般職の日本人は一生、チームでの成果を求められる、というリーダーシップ経験を積まずに終わる人が多い。

そんなリーダーシップ経験のない人は、わがままな振る舞いが多い。
チームで成果を出すためにそれぞれの役割を認識せず、自分が一番成果を出しやすい行動に走ってしまいがちだから。
自分が成果を出しやすい個人プレーに走るのは、自分が苦手な場面に行動するリスクを取らないことにも通じる。

そんなことを考えると、リーダーシップ不足という弱点をごまかして隠すことで、組織論というふわふわしたテーマに流れてしまうのだろう。
そしてリーダーシップ不足という日本人論の問題点は、日本人はリスク許容度が低いことに真因があると思う。

【3】アジャイル開発は20年以上前から提唱されているのに日本ではなかなか導入すらされなかったが、ここ最近になって積極的に取り入れようとする流れが出てきた。

アジャイル開発の本質は一体何なのか?
僕は、アジャイル開発とは時間価値を最優先にしたソフトウェア開発だ、と一言で言えると考える。
WF型開発のように、時間も労力もかけて品質を作り込んで、高品質なソフトウェアをリリースするのではなく、小刻みにいち早くソフトウェアをリリースすることで売上もキャッシュも獲得していく戦略を取る。
1年間で1回のリリースではなく、5回リリースできるなら、5回分のフィードバックが得られて、その分、市場ニーズに合ったソフトウェアへいち早く開発できるようになる。
つまり、リリース頻度が5倍多いなら、ソフトウェアの価値も5倍高まるメリットが生まれる。

では、なぜアジャイル開発は日本で受け入れられなかったのか?
アジャイル開発の源流はトヨタ生産方式と言われていて、日本人にも馴染みがあるのに、なぜアジャイル開発は日本人にフィットしなかったのか?
たぶんその最大の理由は、ソフトウェア開発の生産性が低いことが問題だ、という意識が非常に薄いことだと思う。

官公庁みたいな縦割り組織の日本人は生真面目なタイプが多いので、決められたルールに従う方が重要であり、コストや期間を度外視したり生産性を重視する行動に行きやすい。
また、ソフトウェア開発者派遣のような人月ビジネスでは、たくさんの工数がかかるほど儲かるので、生産性を上げるモチベーションがビジネスモデル上生まれにくい。
今の日本の製造業では生産工程の改善により原価低減による付加価値向上を目指すが、3%の生産性向上よりも30%以上、2倍以上の生産性向上を目指すような、イノベーションを取るような行動が生まれていない。

なぜ米国企業は90年代に蘇ったのか~日本の手の内は完全に読み取られた~V字回復の経営の感想: プログラマの思索

生産性が低い現象が問題だ、と考えて、その問題解決を図ることにより、生産性をさらに大幅に向上させるという正のループを作り出せていない。
特に、3%の生産性向上のようなちょっとした改善ではなく、30%や2倍以上の生産性向上を図ろうとすれば、今までのやり方を捨てて、新たなアイデアを試す、といったリスクを取らなければ実現できないだろう。
しかし、今までリスクを取ったことがない人が、いきなりハイリスクハイリターンの選択肢を取るのは非常に難しいだろう。
なぜならば、仕事でもプライベートでも、そういうハイリスクハイリターンの練習を経験していなければ、実践で試すことは難しいだろうから。

日本人の生産性が著しく低い、という点にも、日本人はリスクを取りたがらない、という現象がその問題の背後に隠れている。

つまり、「ソフトウェア開発のように、時間価値が重要な意味を持つビジネスでは、生産性に比重をおいて時間戦略を取るべきだ」という考え方が日本人も日本企業も受け入れられていないからだ。
その真因には、日本人のリスク許容度が低いこと、土建業界やIT業界に限らず自動車業界においても日本のあちこちの業界で多重請負ビジネスがはびこっていることにあるのだろうと思う。

なぜ米国企業は90年代に蘇ったのか~日本の手の内は完全に読み取られた~V字回復の経営の感想: プログラマの思索

【4】リーダーシップ不足や生産性が著しく低いという現象には、リスクを取らないという日本人の気性が出ているのではないか。
あえてリスクを取ることで、大きなリターンを得る、というハイリスクハイリターンの選択肢を最初から捨てている場合が多いのではないか。

リーダーシップがあり、生産性が高い人は、いろんな問題解決に対してリスク許容度が広いので、かなり大きなリスクを自ら選択することができる。
つまり、リスク対応力とその人の問題解決能力は比例しているのだろうと思う。

【5】組織論やアジャイル開発をテーマにしている人たちは、日本人の弱点である「リーダーシップ不足」「生産性が著しく低い」「リスク許容度が著しく低い」という真因におそらく気づいている。
その真因をいろんな角度から、いろんな言葉で、いろんな手段で解決を試みようとしているのだろうと思う。
そういう観点を持って、今のDXにかかわるテーマを取捨選択して聞いてみたいと思う。

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