経営・法律・ビジネス

2020/11/23

組織は記憶能力を持つのか~トランザクティブ・メモリーという概念

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア」を読んでいて、組織は記憶能力を持っているのか、組織は学習する能力を持つのか、という問いがあった。
内容がとても面白かったのでメモ。

せきねまさひろぐ: 『世界の経営学者はいま何を考えているのか』

「世界の経営学者はいま何を考えているのか」で明かされた9つの意外な事実 | netgeek

【新連載・入山章栄】経営理論は“モヤモヤ”を言語化する武器。「思考の軸」をつくる教養を磨け | Business Insider Japan

「世界の経営学者はいま何を考えているのか」書評と要約:旧・本を聴く日々:So-netブログ

トランザクティブ・メモリーとは | 人事のプロを支援する | HRプロ

トランザクティブメモリーとは?組織の知を最大化する方法 | BizHint(ビズヒント)- クラウド活用と生産性向上の専門サイト

トランザクティブ・メモリー・システムとは何か(村瀬俊朗)|英治出版オンライン

組織のラーニングカーブは存在するのか?
組織は経験から学習するのか?

個人は経験から学習して、個人の能力を高めていく。
人は経験から記憶する。
組織も同じだが、その構造は異なる。

100人がばらばらに学ぶ場合と、100人が一つの組織で学習する場合、組織で得られる知の総量は違うのか?

結果は異なる。
組織は、トランザクティブメモリという、誰が何を知っているのか、という知識を蓄積することで、より多くの専門知識を持つことができる。
つまり、組織内の個人は機能別組織として、その専門性を発揮するが、ばらばらの専門性の知識は、組織内の権限と責任の一致によって、組織内の専門知識に自由にアクセスできる構造を持つ。

組織は、自然に形成されたトランザクティブメモリを持つが、それを新しい組織構造に変換して無理にゆがめると、組織内の軋轢を引き起こし、組織内の記憶力は著しく落ちていく。

このトランザクティブメモリの概念を、ソフトウェア開発に適用するとどのように解釈されるのか?

たとえば、専門性を持つ技術者が集まったチームが生産性を発揮しても、そのチームを一度解体してしまうと、組織の記憶力は低下し、組織の生産性も著しく落ちてしまう。

スクラムではチームを重要視する。
チームはブラックボックスとして扱い、プロジェクトマネージャのマイクロマネジメントは許さない。
チーム内ではメンバーの専門性は最大限発揮できるような環境が提供されている。
つまり、トランザクティブメモリが発揮できるような仕組みをスクラムは開発チームに提供している。
そういうトランザクティブメモリがスクラムチームに自然に埋め込まれているならば、困ったときに、専門性を持つ人に声をかけて支援してもらい、問題解決することが可能になる。

ソフトウェア開発では、長年保守してきたシステムの知見、技術、業務の知識を持つ技術者が非常に重要だ。
そういう属人生を排するような仕組みを組織的に作り出そうと四苦八苦してきたが、むしろ、そういう技術者が能力を最大限発揮できるような仕組みを作り出すほうが重要ではないだろうか?

トランザクティブメモリの豊かな組織では、組織が記憶力を高めて、組織の学習能力を高めてくれる。
ここで、組織の記憶力はあくまでも、専門性を持つ人の情報を共有する点に着目していること。
単に、Wikiで情報共有すればいい、というわけではないのだ。
誰が何を知っているのか、という暗黙知が知のインデックスカードのような役割を果たしている。

トランザクティブメモリのおかげで、知の探索、つまり、試行錯誤しながら新しい知見を蓄積しいていく試みが可能になる。
つまり、アジャイル開発を実践するには、組織にトランザクティブメモリという性質が必須要件なのかもしれない。

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア」には、ほかにも面白い話がいくつかあるので、その内容も別でメモしておく。

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2020/11/07

手段を目的化するのは日本人の病

「手段を目的化するのは日本人の病」という言葉にすごく惹かれたので、メモ。
ラフなメモ。

【参考】
「手段を目的化するのは日本人の病」元最強の会社員・田端信太郎が語る“会社で働く”意味 20’s type - 転職type

(引用開始)
僕は会社って乗り物みたいなもので、会社選びは交通手段を選ぶのに似ていると思っています。目的地を定めて、そこまで最短で行くなら新幹線や飛行機を使えばいいし、寄り道しながら行くならレンタカーが適しているかもしれない。

僕は自分一人では行きにくいところに連れていってもらうための手段として、ある程度まで新幹線で行き、目的地に近づいたらレンタカーを借りて自分の思うように進むような組み合わせが一番いいと思って、昨年末に会社を辞めて独立しました。

とはいえ、今はレンタカーで自由気ままに楽しんでいるけれど、遠方に行きたくなったらまた電車に乗るでしょう。結局はその時々に何がしたいかですよね。

要は自分のゴールと行き先が一致している限りは乗っていればいいし、そうじゃなくなったら降りればいいわけです。例えば東京から奈良に行くのに、新大阪までは新幹線に乗るとする。その時に、乗り心地がいいからって新大阪で降りない奴はバカでしょ?

忘れてはいけないのは、乗ること自体は手段だということ。「なんとなく乗り心地が良いと聞いたから」って動機で就活している人が多いけど、乗ることが目的になってしまうのは寂しいと思うんですよ。それこそコロナショックで在宅勤務になって、グリーン席に座れなくなった人もいるわけだし。

手段が目的化しがちなのは、就活に限らず、日本人の病。就職が全てではなくなり、選ぶのはより難しくなったけれど、本質は「どこに行きたいか」であることは変わりません。それだけは忘れずにいてほしいなと思いますね。
(引用終了)

戦略家ポーターも、日本人経営者には経営戦略の思考がない、みたいな意見があったな。
ソフトウェア開発のプロセス改善、製造業のQCサークルなどを振り返ると、日本人は現場のプロセス改善が大好きだし、すごく向いている。
全体最適よりも、現場での局所最適の方が正確的に向いているのかも。

「選択と集中」による経営戦略は何となく日本企業に向いていない気もする。
むしろ、自社の強みをベースに、既存ドメインの事業を横展開しながら事業を広げてチャンスを伺うという多角化戦略の方が、日本企業の経営戦略に向いているのかもしれない。

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2020/09/02

問題解決アプローチを見極める『クネビンフレームワーク』のメモ

問題解決アプローチを見極める『クネビンフレームワーク』を知ったのでメモ。
結論のないメモ。

【参考1】
akipiiさんはTwitterを使っています 「クネビンフレームワークの説明が参考になった。問題のドメインが時代で変化しているからソフトウェア開発プロセスも変化する。非開発者のためのアジャイル開発入門 by @haradakiro #agile #complex https://t.co/2iCYVDeddY」 / Twitter

More Effective Agile ? “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標|かず|note

複雑な世界を捉えるためのカネヴィンフレームワーク(Cynefin Framework) ? ゲームを用いた企業研修なら| 株式会社HEART QUAKE

(引用開始)
カネヴィンフレームワークは1999年にIBM Global Servicesのデイブ・スノーデン(Dave Snowden)らが提唱したもので、状況・問題を大きく4つのドメインに分類するフレームワークです。(上画像)

1.Simple(シンプル):単純
⇒問題の因果関係・構造が明確

2.Complicated(コンプリケーティッド):煩雑
⇒少し分析すれば、因果関係・構造が明確

3.Complex(コンプレックス);複雑
⇒因果関係が複雑、調査・探索が必要

4.Chaotic(カオス):混乱
⇒因果関係が不明確で、状況や問題を理解することも難しい

その他.Disorder(ディスオーダー):無秩序
⇒直面する問題に適切な解決策がない

さらに、1のSimpleと、2のComplicatedを予測可能な問題、3のComplexと、Chaoticを予測不可能な問題と分類することもできます。
(引用終了)

製造業における製品製造の大量生産方式のビジネスと、エンジニアやコンサルタントなどの知的労働者がプロジェクトで仕事するビジネスは、本質的に何かが違うといつも思っていた。
その理由の一つは、問題解決アプローチが全く違う、という指摘を、クネビンフレームワークは教えてくれる。

クネビンについて講演してきました | サーバントワークス株式会社

(引用開始)
(クネビンフレームワークが必要とされる)背景としては、「正解がない」多様化した問題と現実解に対しての理解を深めることが第一義です。第二儀としては、アジャイルの必然性の腹落ち感があります。
(引用終了)

アジャイル開発が昨今必要とされる背景には、従来の問題解決の手法が通用しなくなってきていて、新しいフレームワークや考え方による問題解決手法が必要とされているのだろう。
「More Effective Agile ~“ソフトウェアリーダー"になるための28の道標」では、アジャイル開発による問題解決の観点はクネビンフレームワークの「複雑(Complex)」に当たるのではないか、という内容があるらしいので、今度読んでみたい。

【参考2】
複雑な世界を捉えるためのカネヴィンフレームワーク(Cynefin Framework) ? ゲームを用いた企業研修なら| 株式会社HEART QUAKE

クネビンフレームワーク Cynefin Framework :臨機応変の意思決定手法 ? I & COMPANY / アイ&カンパニー

カネビン・フレームワークで問題解決策を見極める

クネビンフレームワークを使ったテクニカルサポートチームの行動指針の立案 | Developers.IO

問題の解決アプローチを見極める『クネビンフレームワーク』をざっくりまとめる - コード日進月歩

(引用開始)
これをエンジニアのロールに置き換える広木さんのツイートはすごいなと思ったので参考まで
(引用終了)

広木 大地/ エンジニアリング組織論への招待さんはTwitterを使っています 「CTO/VPoE/TechLead(スペシャリスト)の仕事って一体どう言う役割分担なの?みたいなことを聞かれる。 これはクネビンフレームワークで捉えるとわかりやすい CTO は Chaoticな問題 -> Complex VPoE/EMは Complexな問題 -> Complicated TechLeadは Complicatedな問題 -> Simple 不確実性が減っていく https://t.co/un1FX3QQ53」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています 「クネビンフレームワークでカオスで複雑・複合的な問題を分類する。CTO/VPoE/TechLeadというエンジニアのロールはクネビンフレームワークで整理すると分かりやすいという指摘。 問題の解決アプローチを見極める『クネビンフレームワーク』をざっくりまとめる - コード日進月歩 https://t.co/exz3rCJnfw」 / Twitter


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2020/07/07

ソフトウェアの政治的影響力とは何だろうか

今年になって、台湾の天才IT大臣の記事をチラホラ見かける。
ソフトウェアの政治的影響力を上手に使いこなしているな、と感じたのでメモ。
ラフなメモ書き。

【参考1】
「マジで胸アツ」台湾の天才IT大臣、東京都の新型コロナ対策サイトの修正に自ら参加し話題に

(2) akipiiさんはTwitterを使っています 「時代の変化は速いよね。「マジで胸アツ」台湾の天才IT大臣、東京都の新型コロナ対策サイトの修正に自ら参加し話題に https://t.co/drVTKoZz74」 / Twitter

新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾 IQ180の38歳天才大臣の対策に世界が注目 (1/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾 IQ180の38歳天才大臣の対策に世界が注目 (2/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾 IQ180の38歳天才大臣の対策に世界が注目 (3/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

(引用開始)
タン氏にインタビューした経験がある前出の近藤さんは、こう話す。
「両親の職業がジャーナリストということもあり、彼女は『情報』が人々にどのような影響を与えるかをとても理解しています。
また、現役の閣僚でありながらも特定の政治的立場に立つのではなく、むしろ意見の対立をIT技術で可視化して、解決につなげることを考えている。
入閣した時に『公僕の中の公僕になる』と宣言したとおり、特定団体の利益のために動くのではなく、テクノロジーを駆使して台湾の人々と行政院をつなぐ“パイプ”になっています」
(引用終了)

akipiiさんはTwitterを使っています 「ITによる可視化で政治的対立を消化させる道具にする発想が素晴らしいと思った。Redmineにも通じる。「むしろ意見の対立をIT技術で可視化して、解決につなげることを考えている」新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾IQ180の38歳天才大臣の対策に世界が注目 AERA dot. https://t.co/GORTP5vWb4」 / Twitter

【参考2】
台湾の天才IT担当大臣オードリー・タンに訊く、新型コロナウイルスの先にある未来の国家とは - Engadget 日本版

akipiiさんはTwitterを使っています 「ソフトウェアの政治力を良く知り尽くして活躍されてる事例。参考になる。” 台湾の天才IT担当大臣オードリー・タンに訊く https://t.co/zxSe7tNwVZ」 / Twitter

こーじさんはTwitterを使っています 「>その一方でパニック買いなど、噂による行動は防ぐ必要があります。そこに対しては、インフォデミック(≒情報の氾濫)より面白いユーモアを発信するという対策に取り組みました。 これ凄い面白い取り組みだな」 / Twitter

akipiiさんはTwitterを使っています 「@saba1024 台湾のIT担当大臣は、人々がシステムやSNSを使うと、どんな行動に走るのか、それを遠くまで見通して意思決定している点が凄いです。ソフトウェアの開発力だけでなく、その政治的影響力、行動経済学の知見、社会心理学の知見を知り尽くしてる、そんな気がします」 / Twitter

こーじさんはTwitterを使っています 「@akipii まさに仰るとおりですね! 時代が人を作るのか、人が時代を作るのかというのはよく言われる話題では有りますが、この方は間違いなくこの時代に必要とされる方ですね。」 / Twitter

台湾の天才IT担当大臣の振る舞いをツイッター上で眺める限り、ソフトウェアの調達方法や影響力の行使の仕方をよく理解しているな、と思う。
たとえば、コロナ感染症サイトへのプルリク、マスク在庫サイトの構築方法、記者会見をすべてオンライン化などがすぐに思い浮かぶ。

彼女のやり方で参考になる点はいくつかある。
1つ目は、ソフトウェアの開発はベンダー委託ではなく、オープンソース開発者のコミュニティを使って、アジャイルに開発していること。
公的なソフトウェアの開発は、官公庁の内部調整やベンダーへの委託によるリスク回避など、数多くの組織的な壁がボトルネックになりがちだ。
しかし、本来、公的なソフトウェアは国民全てがその利益を享受できるものだし、その重要性は高いのだから、いち早くリリースして、漸進的にVerUpしながら開発していくべきだ。
しかも、ソフトウェアは請負契約で作ったら終わりではなく、SaaSと同じく、運用しながらどんどん改善していく開発スタイルなので、ベンダーへの一括委託は元々なじまない。
現在のソフトウェア開発の技術革新の場所は、ベンダーではなく、オープンソースコミュニティに移っているのだから、彼らの力を利用して、国民すべての利益にかなうようなソフトウェアを作るべきだろう。
彼女の言動や行動した結果を見ると、ソフトウェア開発の特徴をよく理解しているように思える。

2つ目は、情報を発信すると人々がどのように影響を受けて、どんな行動に移るのか、という事を彼女はよく考えて理解しているように思えることだ。
「現役の閣僚でありながらも特定の政治的立場に立つのではなく、むしろ意見の対立をIT技術で可視化して、解決につなげることを考えている」という記事の言葉から想像すると、行動経済学の知見をよく知っているのではないか、と思う。

実際、コロナ感染が流行している時期にマスクの情報を何の仕掛けもなく公表するとどうなるのか?
本来マスクが必要な人に情報を知らせるにはどうすればよいのか?

皆が混乱している時に、その情報をIT技術で見える化することで、真実を共有し、そこから各人のあるべき行動を促す。
IT技術は本来、そういう問題解決に使うべきものであるはずだ。

そして、単に、マスク在庫のシステムをアジャイルに作るだけではない。
彼女や他の大臣が率先して、その規範を示していることも大事だ。

「例えば、支給マスクの色がランダムで、ピンクが当たった男子生徒が登校拒否になっているという声が届きましたが、その翌日には閣僚の男性陣によるピンクマスク着用のキャンペーンが始まりました。」という記事の通り、大臣自らが率先して見せれば、他の人も自然にその行動変容を受け入れてくれる。

「組織文化は組織のトップが作り出すもの。組織のトップはもっと汗をかくべき」と、とある先生から組織論の授業で習った。
僕が理解するには、人がたくさん集まっても、単なる集団であり、何かの目的を成し遂げるための組織にはなりえない。
トップがリーダーシップを発揮して、共通目的を語り、メンバーの貢献意欲を引き出し、コミュニケーションを活性化して初めて、集団は組織に変わり、人々の行動を変容させる。
また、社会や組織の中にいる人達は、社会的地位が低かったり、経済力がなかったり、政治力がないために、他の力の強い人達の影響を受けやすい面がある。
だからこそ、規範となるべき人があるべき姿や目的を語ることで、人々の意欲を引き出し、人々の行動を変容させる。
つまり、社会に流通する価値観や規範は、そのトップのリーダーシップから生まれるものだ。

そして、昨今の環境では、SNSを使えば、簡単に周知させやすい。
人の気持ちを盛り上げて、意欲を引き出すような言動をリツイートさせることで、人々に行動を変えさせる事が以前よりも格段に簡単に、かつ、その影響力が大きくなった。
その分、この使い方も難しい。
行動経済学が考えているように、人は合理的な存在ではなく、時代や環境に依存したバイアスを持って価値判断を下し、経済効果を生み出す。
そういう考え方を利用する方法もあるだろう。

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2020/06/17

相殺フィードバックを再考

システム思考で出てくる相殺フィードバックをメモ。

【参考1】
学習する組織 - ごろにゃ~の手帳(備忘録)-パーソナルMBA的な

(引用開始)
強く押せば押すほど、システムが強く押し返してくる
よかれと思って行った介入が、その介入の利点を相殺するような反応をシステムから引き出す現象である。
私たちは誰もが、相殺フィードバックに直面するのはどんな感じか知っている。
押せば押すほど、システムが強く押し返してくる――つまり、物事を改善しようと努力すればするほど、 さらに多くの努力が必要に思えてくるのだ。
(引用終了)

【参考2】
組織は「苦労」や「一生懸命努力すること」を美化してはいけない。 | Books&Apps

(引用開始)
MITスローン経営大学院のピーター・M・センゲは著書「学習する組織」においてこの現象を「相殺フィードバック」と呼ぶ。
多くの企業が、自社製品が突然に市場での魅力を失い始めるとき、相殺フィードバックを経験する。企業はより積極的な売り込みを推し進める―それが今までいつもうまく言っていたやり方だ。宣伝費を増やし、価格を下げるのである。
こう言った方法によって、一時的には顧客が戻ってくるかもしれないが、同時に会社からお金が流れ出ていくので、会社はそれを補うために経費を切り詰め、サービスの質(例えば、納期の早さや検査の丁寧さ)が低下し始める。
長期的には、会社が熱心に売り込めば売り込むほど、より多くの顧客を失うことになるのだ。
(中略)
私が見た現象は、サービスの質を改善せず、全員を「テレアポ」と「飛び込み」などの労働集約的な仕事に邁進させる、というやり方だったが、上と全く結果は同じであった。顧客は流出し、人材は会社を辞め、競合にシェアを奪われたのだ。
(引用終了)

相殺フィードバック: プログラマの思索でも書いたが、IT業界は相殺フィードバックによる問題発生が多い。

たとえば、過去に直したバグ修正が、今の障害の発生原因になっている。
たとえば、以前下した判断や意思決定が、今回の問題の発生原因になっている。
その時は良かれと思ったことが、実は場当たり的な対応であって、より一層症状を悪化させた。

僕の経験上、相殺フィードバックという症状は、ソフトウェア開発で非常に発生しがちと思う。
従来のソフトウェア開発の現場では、元請けのPMと下請けのプログラマが混成チームを形成するが、彼らは顧客と切り離されているので、顧客からのフィードバックを得るタイミングが最初と最後のフェーズしかない。
だから、現在の意思決定がどんな影響を及ぼすのか、想像できない。

ソフトウェア開発は自己目的化しやすい: プログラマの思索

相殺フィードバック: プログラマの思索

僕は、相殺フィードバックをなくすには、システム思考に出てくる因果ループ図のような発想方法よりも、ランダム比較化実験を使って行動経済学の知見を導き出す手法の方が効果的ではないか、と直感している。
最初から、相殺フィードバックにはまらないような意思決定を下すのは難しい。
できれば、傷が浅い程度の失敗は許容できる時期に、2つの意思決定をランダム比較化実験で試して、人間の行動や集団行動がその後にどのような影響を与えるのか、を見極めた方がいいと思っている。

以前はそういう手法が使えなかったが、今はWebアプリはクラウド上で即座に作れるし、スマホ経由でランダム比較実験をしてみるのは易しい。
行動経済学の知見をソフトウェア開発やソフトウェア工学に活用するアイデアは試して見る価値があるように思える。


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2020/06/14

SaaSのビジネスモデルがアジャイル開発を促進したという仮説

「ソフトウェア・ファースト」を読んで、改めて、アジャイル開発はSaaSの開発プロセスを発展させたものとみなすのだと考えた。
ラフなメモ書き。

【参考】
ソフトウェア・ファーストの感想: プログラマの思索

【1】「ソフトウェア・ファースト」を読むと、製造業などの一般産業は、SaaSのようにどんどんサービス化すべきだ、という主張が背景にあるのが分かる。

では、SaaSというビジネスモデルの特徴や本質は何だろうか?

この問いに自分なりに考えてみたら、複数の特徴があるように思う。

【2】SaaSはScrumと相性が良い。
たとえば、パッケージ製品ビジネスや大量生産ビジネスでは、たくさん作って販売してそれで終わり。
一括請負契約で作って納品したら終わり。
顧客とメーカーは、クライアント-ベンダー-アンチパターンにはまりやすい。

「クライアント-ベンダーアンチパターン」という根本問題: プログラマの思索

一方、SaaSでは、常にサービスや機能を頻繁にVerUpしていく。
その頻度も1ヶ月に1回ではなく、1日に数十回もざらだ。
SaaSのインターフェイスは、ユーザがスマホやPCで触っているので、すぐにその機能を試してもらえるし、彼らの要望を即座に反映するほど、顧客満足も高まる。
そういうニーズがあるので、頻繁なリリースを実施する動機づけになる。

その場合、社内の開発体制はScrumに似せると開発しやすくなる。
マーケティング担当者や経営者がプロダクトオーナーの役割を担えば、社内に開発チームとスクラムマスターを作れば、即座にScrumが出来上がる。
SaaSの場合、プロダクトオーナーに相当する人が社内に存在し、その能力を持ち合わせている時も多いのがメリットだろう。
その後は、会社の規模やビジネスの規模に合わせて、Scrumをスケールすればいい。

【3】SaaSはDevOpsと相性が良い。
リリースしたら、その後も運用し続けるので、開発と運用保守は一体化すべき流れになる。

一方、普通のSIであれば、インフラチームと開発チームは分離されていて、機能別組織になりやすい。
機能別組織の弱点は、チームや組織ごとに体制の壁ができてしまい、意思疎通が困難になることだ。
コンウェイの法則「アーキテクチャは組織に従う」によって、システムのアーキテクチャは縦割りの複雑な組織構造を反映した形になってしまい、システムはどんどん複雑化してしまう。

もちろんSaaSも、ビジネスが発展すれば肥大化するだろう。
しかし、開発と運用保守は一体化した方がいいというビジネス要求や現場からの要求が出てきやすいので、DevOpsを推進する動機づけになる。

もちろん、技術的にも、SaaSはクラウドと相性が良い。
だから、クラウドエンジニアはインフラエンジニアだけでなく、開発者でもありうるので、事実上、インフラチームと開発チームは一体化しやすい。

また、ここからマイクロサービス・アーキテクチャも実装しやすい。
AWS上でSaaSを運用すれば、LambdaやAurora、AWSの各種サービスを利用することになるだろう。
単に性能改善やスケールメリットが活かせるだけでなく、システム基盤をマイクロサービスとして組み立て直すことにより、SaaSは汎用的なAPI基盤になっていくだろう。
そうすれば、外部サービスと連携できるので、より多種多様な機能を顧客に提供しやすくなるメリットも出てくる。

【4】SaaSはB2Cのプラットフォームビジネスと言える。

アメリカのGoogle、Amazon、Apple、Facebookがそうだし、中国のBATも同様だ。
多数の顧客に対し、プラットフォームを提供することで利便性がどんどん増していく。
そのビジネスの本質は、製造業が持つ規模の経済ではなく、ソフトウェア特有のネットワークの経済という理論が背景にあるはず。
たくさんのユーザが使ってくれるほど、SaaSは重要性を増して、売上を指数関数的増大させていく。
「プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか」を読むと、プラットフォームのビジネスモデルは独占ビジネスなので、その売上は、そのサービスの市場規模と同等になるまで高められる。
つまり、市場規模と同等だから、小さい国家のGDPよりもはるかに大きな利益を得ることも可能。

SaaSはB2Cのビジネスなので、顧客のフィードバックをすぐに取り込みやすい。
ランダム実験やABテストも実現しやすいので、サービスやビジネスモデルを仮説検証しやすい。
つまり、SaaSでは、念入りに考え抜いた計画を作って数年かけてリリースするよりも、仮設を立てたら、複数のサービスを同時リリースして、ランダム比較化実験でその効果を測定した方が速い。

興味深いのは、米国や中国では、SaaSのトッププレーヤーはB2Cなのに、日本の楽天やモノタロウなどはB2B2Cというスタイルで異なる点だ。
もちろん、LINEのように、日本国民の殆どとつながっていて、その連絡先とつぶやきのようなログデータを既に持っている会社はB2Cだ。
しかし、日本で目立つSaaSプレーヤーはB2Bのクッションを通過した後でB2Cを提供するビジネスモデルが多いように思える。
その理由は分からないので、いつか知りたい。

プラットフォーム革命の感想~プラットフォーム企業は新たな独占企業である: プログラマの思索

規模の経済と経験曲線効果のメモ: プログラマの思索

【5】SaaSでは、大量のログデータがビジネスの副産物として採取される。
データはいくらでもある。
そこから、機械学習やディープニューラルネットワークに大量データを食わせることで、優れたAIエンジンを生み出すことも可能だ。
B2Cのプラットフォームビジネスでは、ユーザの個人情報は特定できるし、その購買行動はプラットフォーム上で全て追跡できる。
よって、ペルソナを仮想的に作って、より購買を促すようなプロモーションを打ち出して、潜在ニーズを掘り起こせる。

「告発 フェイスブックを揺るがした巨大スキャンダル」によれば、Facebookで、個人に68個のいいねがあれば、その人物に関する非常に具体的な情報をモデルから予測できる。
70個のいいねで、そのユーザの友人が知るよりも、その人の多くの個人情報がモデルから推測される。
150個のいいねで、親よりも、その人の多くの個人情報がモデルから推測される。
300個のいいねで、パートナーよりも、その人の多くの個人情報がモデルから推測される。
さらにその多くのいいねを見れば、ユーザが自分自身について知っていると思っている以上の個人情報がモデルから推測される。
つまり、個人の大量のログデータを収集できれば、その個人を丸裸にできる。
その個人情報を他人が知っている情報だけでなく、その個人自身が知らない潜在ニーズまで推測できるわけだ。
すなわち、ジョハリの窓という理論は、AIを使えばほぼ完全に実現できる可能性があると思う。

(それを悪用したのが、ケンブリッジ・アナリティカであり、彼らは、どの個人にどんなプロモーションを送ればどんな選挙行動に移してくれるか、を徹底的に研究して、トランプ効果や英国のEC離脱を生み出したわけだが。)

そんなことを考えると、SaaSは機械学習やニューラルネットワークと非常に相性がいい。
だから、テスラみたいに製造業もどんどんSaaSにシフトしているのだろうと思う。

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2020/05/28

ツールを使いこなせる事の重要性が増している

直近2ヶ月のコロ助を経験して、ツールを使いこなせる事の重要性が増している事を感じた。
ラフなメモ。

たとえば、学校の理科の先生がタブレットを使って花壇の花を撮影しようとしたが、写真の撮り方が分からなかった、というニュースが流れていた。
たとえば、塾なども、ほとんどがオンライン授業になっている。

たとえば、スーパーもレジはナイロン幕を張るだけでなく、店員は、客が渡すお金すら、できるだけ触らずにトレイからレジマシンに放り込んでそのまま渡したり、会員カードもバーコードを読み取るだけで手に触れないようにしている。
できるだけキャッシュレスにしようとしている。
たとえば、再開した図書館も、職員は図書館カードをトレイで受け渡しするだけでなく、手袋までしてる。

たとえば、銀行のATMに行って、現金を出して財布に入れることすら、コロナ感染のリスクがある。
銀行振込や引き出しは、オンラインバンキングサービスやモバイルサービスでやるのを銀行自身が推奨している。

たとえば、ほとんどの飲食店や居酒屋は、玄関に「テイクアウト始めました」の看板を出している。
宣言解除前まで、客は居酒屋に入れなかった。

たとえば、IT勉強会やコミュニティ活動は、すべてオンライン配信となり、Zoomで講演を流したり、お互いに議論するのが普通になった。
もちろん、仕事はテレワークとなり、出勤せずに自宅で仕事して、GoogleサービスやSlack、Zoomを使うのが普通になった。

そんな風景が突然現れた。
すると、オンラインでやり取りできるツールに慣れていないと、仕事はおろか、生活することすら不便になった。

スーパーなどの日常の買い物は基本はPayPayやクレジットカード支払い。
飲食店のテイクアウトはスマホで予約して、UberEatで配達してもらう。

勉強会やコミュニティでは、Zoomでやり取りするので、もちろんフレッツ光などの高速な回線がないとやってられない。
仕事もオンラインでやり取りするので、会社ノートPCのセキュリティ担保はもちろん、SSL-VPNを張った時に会社のオンプレサーバーに負荷がかかっても困る。
自宅では、自分も仕事するし、子供もオンライン授業を受けていれば、フレッツ光でも通信速度は落ちてしまい、正直仕事しづらい時もある。
もちろん、子供はPCの操作が分かっている必要があるし、オンライン授業を見ながら自分の理解を深めていくように、自分の学習方法も変えていかないといけない。
先生もタブレットが使えるのは当然出し、自分の授業をオンラインで配信できるように、授業を組み立てて、Zoomも使いこなせる必要がある。

そんな状況を踏まえると、Zoomのようなビデオ会議ツールを使いこなせるだけでなく、キャッシュレスで生活できるようにネットバンキングやPayPayやクレジットカードを使いこなせること、もっと根本的に、スマホでテイクアウトの宅配サービスを受け取れるように使いこなすことが必要とされてきている。

けれど、そういう状況に皆が馴染めたのか、と言われるとそうでもないと思う。
80歳の親を見れば、未だに銀行ATMから現金を引き出し、スーパーでは現金払いだし、スマホをあげても使いこなせない。
何せ老眼なのでスマホは小さくて見にくい。
世の中の情報はテレビや新聞だけから収集している。
スマホからWebを見たり、Youtubeで好きな動画を見たり、SNSから最新の情報を収集することはしていない。
そういう生き方もあるだろうし、今の時代は弱者でも生活できるようになっているので問題はないのだろう。

さすがに年をとって80歳を過ぎれば、過去の人生経験がありすぎて、今までの経験を捨てて新しいツールを使って、新しい環境に馴染むのは辛いかも知れない。
でも、より主体的に生きていくには、新しいツールを使いこなせなければ、欲しいサービスが得られないし、欲しい情報も取得できないし、色んな人達と出会いを求めることができない。

コロ助の影響のため、80歳の親が楽しみにしていたコーラス教室や漢詩教室は無期限延期となり、お隣さんとのやり取りも劇的に減った。
実際に会って話ができる人達は、自宅にいる家族だけ。
たぶん寂しいと思う。

僕も2ヶ月以上、都心部に出てないからリアルに対面で会った知人はいない。
でも、ほぼ毎日、SNSやZoomなどでやり取りしているから、人間関係が劇的に減ったという感覚はない。
人間関係がオフラインからオンラインに変わっただけ、みたいなイメージがある。

そんな経験をふりかえると、新しい環境では、新しいツールを使いこなすことで、以前と同じサービスやコミュニケーションを維持できるんだな、と改めて感じた。
最初は抵抗感もあったけれど、それは生きていくために必要なのだ、と。

「強い者が生き残るのではなく、環境に素早く適応した者が生き残る」という言葉を、今ほど体で経験したことはなかったと思う。

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2020/05/05

After Covid (With Covid)の世界や付き合い方

After Covid (With Covid)の世界や付き合い方について、papandaさんの記事がとても秀逸なのでメモ。
自分が考えていることをラフなメモ書き。

【参考1】
ウィズコロナにおける事業の再定義 (逆ゴールデン・サークル)|papanda|note

(引用開始)
4月が終わろうとしている。コロナを意識する状況が2月から数えると3ヶ月に経過することになる。緊急事態宣言を予定どおり終えるという可能性は低そうだ。こうした状況でも、引き続き事業作りやデジタルトランスフォーメーション事案の支援をしている。

 この状況が始まった当初は「いつ元に戻るか」「戻ったときに備えて何をしておくべきか」という前提を置いて支援にあたっていたが、ここに来て自分が使う言葉が変わっていることに気がついた。「これまでから、どう変えますか」

 仮に宣言を5月末で終えられたとしても、今後第2波、第3波に備える適応が求められるだろう。そこまで続いていくことを考えると、人の生活スタイルは変わらざるを得ないはずだ。生活の行動や思考の変化は、価値観の変容へと繋がる。私達は「戻る場所を失って、次に向かう場所を得る」過程にあるのかもしれない。
(引用終了)

(引用開始)
得てして、自己認識している「対面コミュニケーションこそ、これまで培ってきた強み」(実際に間違っていない)が、次の適応を阻む現状維持の重力になりやすい。ぼんやりと現状に対応し続けていると、手遅れになりかねない。意識的な再定義(redesign)が必要だ。

 なお、この問いの組み立ては、以下の構造をなぞっている。

何をしている?(What) → どのようにする? (How) →意味は何? (Why)
 いつものゴールデン・サークルとは真逆だ。差し迫るような非常時には、適応行動の方が早い(そうしなければ日常が崩壊する)。ただ、急場しのぎの手段になっていることが多いため、そのままの延長ではなく、その適応行動をより効率的に、より効果的にするためには根本的に何が必要なのかを捉え直す。その上で、その行為は何なのか意味づけを行う。
(引用終了)

【参考2】
discordが再定義する「ともに居る場所」|papanda|note

(引用開始)
箱の意味を再定義する
 箱(ワークスペース)は、組織や部署、チーム、プロジェクトなどという単位で作られることが多いだろう。箱は現実世界の組織の写像となる。ゆえに、現実世界の組織にある、内外を分け隔てる強力な境界線がそのまま引き継がれることになる。用もないのに、むやみに人を招き入れることが無いということだ。

 それはdiscordで箱(サーバ)を作ったときは同じだ。ただし、人と人との関係性は、フレンドという箱に依らない方法で形作ることができるため、フレンドを眺めていて、ある人とある人を含めて新たな目的で箱を作るということが簡単にできる。箱(ワークスペース)単位で世界が分断されているslackと違って、discordは新たな場所を作る行為がその枠組み中にビルドインされている。

 これは画期的なことだと思った。
(引用終了)

【参考3】
discordで、同じフロアにいて「ちょっといい?」と話しかけるあの感覚を思い出した。|papanda|note

(引用開始)
いよいよリモートワークが増えてきた。年季の入った組織でも、なし崩し的に(備えなく)、全員フルリモートへ突入、という潮目になってきている。現場、組織運営としてはここから正念場に入っていくことになるだろう。
(引用終了)

今年初めの時点で、リモートワークやオンライン勉強会が普通になるなんて誰も想像してなかったはず。
でも、緊急事態宣言が発令されて1ヶ月以上たった今、皆薄々分かってきたことは、今の変化は不可逆的なことだ。
おそらく、コロナウイルス流行は今後数回発生するかもしれない。
そうなれば、数年は今のような状況が続く。

今は、After Covid (With Covid)について、誰もあるべき世界は知らない。
Twitter、Facebookによるオンラインのつながり、Youtubeなどの情報発信などでグローバルにやり取りできる世界なのに、外出するのはせいぜい、スーパーへの買い物ぐらいで、それ以上遠くに行くことすらできない。
飛行機はもちろん、電車に乗ることさえ憚られる。
オンラインの世界は広いのに、今の時点では、人と対面で会う現実世界の範囲はせいぜい3キロ圏内しかないのだ。
このギャップにたぶん、誰もまだ付いていけてない。

そういう状況を想像して対処するには、リモートワークやそれに付随した仕事環境、生活環境を準備すべきだし、そういう方法に慣れていくべき。

papandaさんの記事で興味深い点はいくつかある。
一つは、Why→What→Howという今までのトップダウン的な考え方ではなく、How→What→Whyというボトムアップ型のアプローチで思考せざるを得ないこと。
実際、誰もあるべき世界を知らないのだから、実際に行動して、それから考えを深めていくしかない。
もう一つは、SlackやZoomよりもDiscordを推していること。
Slackでは逐一、チャットしたい相手を招待する手間がある。
Zoomでも対面で話したい人を招待する手間がある。
しかし、discordには、組織やロールのような概念があるので、招待するというよりも、何らかのグループでまとめて、話をするチャネルを作るだけ、という。
この点は、なるほど、と参考になる。

仕事も生活もオンライン環境になった時、どんな価値観や行動様式が求められるのか?

1ヶ月間のリモートワークやオンライン勉強会を経験して分かったことは、そんなに寂しいという感情はなく、誰かとつながっている感覚を保ち続けることができた。
以前にオフラインで仕事や勉強会で気心の知れている人とは、コロナ事件後でも、オンラインの世界でも何事もなくスムーズにやり取りできる。
この人の発言にはこんな気持ちがあるのかな、とか想像できる。

ゴールデンウイークも全く外出できなかったが、1日でオンライン勉強会をZoomで3回ハシゴした時もあった。
Zoomで話しかけたり、自分の意見を述べたり、チャットで反応したりすることで、全く違和感もなかった。
以前なら、1日の間で、全く異なるコミュニティを3つもハシゴすることはできなかったはず。
でも、オンラインの世界ならば、東京であっても大阪であっても関係ないから、どこでも人につながることができる。
そういう意味では、少しずつこの環境に自分を慣れようとしている。

一方、初めての人との人間関係の構築やチームビルディングは苦労している。
たまたま緊急事態宣言の前に対面で会うことができた人とは、その後のオンラインのやり取りはスムーズにできる。
しかし、初対面の人やチームには、相手がどんな性格や人物像なのか分からないので、どんな言葉をかけたら良いのか、どう進めていけば良いのか、まだ分からない。
手探りでやっている。

今後の課題は、オンラインの世界で初対面の人との関係構築や、オンラインでのチームビルディング技術がある、と感じている。
その課題の解決方法は、今はほとんどの人が知らない。
その課題を解決した後のあるべき世界を知る人はほとんどいない。
だからこそ、試行錯誤することに意義がある。


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2020/04/24

教育における読み書きというアナログの重要性の記事のリンク

教育における読み書きというアナログの重要性の記事をリンク。
オンライン教育に関する主張のないラフなメモ書き。

【参考】
「ノートが取れない」中学生。日本の子どもたちの読解力はなぜ落ちたのか。新井紀子さんインタビュー | Business Insider Japan

読解力不足をどうとらえるか~新井紀子さんの答えをまとめる~: 風にふかれて

一人に一台、タブレットPCを配りますか?(その2) | ICT for Development .JP

オンライン授業でもアナログ感あるデザインで「考えること」を促す|Yoshikazu TATENO | たってー|note

【1】2020年4月時点では、日本の小中高学校はほとんどが休校状態なので、ほとんどの子供は勉強すらしていないだろう。
自ら目標を立てて、自ら題材を探して知識やスキルを身に着けていく、という作業は、大人でも難しいのだから、ましてや普通の子供ができるようには思えない。
そもそも、それができる子供であれば、学校という仕組みがなくても、自立していけるだろう。
とはいえ、昨今ではそういう能力が早い段階から期待されているけれど。

しかも、学校だけでなく対面の学習塾も閉まっているので、オフラインで先生から教えを請うこともできない。
公立図書館、大規模書店も閉まっているので、紙の書籍すら手に入らない。
結局、オンライン教育に頼るしかないけれど、色んな理由でおそらく日本の環境では敷居が高いのだろうと思う。
PCやWifi環境というIT基盤だけでなく、子供の適正に見合った教育方法とか、色々試行錯誤する問題があるだろうと推測する。

響いた言葉を引用しておく。

【2】「読む」「書く」はプログラミング同様に不自然な行為
(引用開始)
4 新井さんの著書を読むと、むしろ読解力を上げるには、板書をするなど「書く」行為をさせること、つまり「昭和的」な教育の方が効果が上がった実例が書かれています。ICT教育を進めて、読解力が上がるとは思えないのですが、どうでしょうか?

①「書く」行為は、そもそも人間にとって不自然な動作であると認識してほしい。「読む」「書く」はプログラミング同様に不自然な行為ですから、その時代と環境と要請に従って、カリキュラムを構築して確実に身に付けなければならない。
②けれども、私たち大人は、自分が子供だった時代に、読み書きを「自然に」身に付けた思い込んでいます。ですから、自分たちの子供の世代も、放っておけば、「それくらい」はできるだろうと信じています。でも、自転車もただ乗れるようになるわけではないのと同じように、字を書くというのは相当に集中力とトレーニングが必要なのです。
(引用終了)

「「読む」「書く」はプログラミング同様に不自然な行為」という指摘は同意する。
学習や勉強は割とアナログ作業が多い、という気はしていたから。
だから、アナログ作業であるがゆえに、それに適した訓練は必要だろう。

ただし、学習は割とアナログ作業が多いという現状は2つの側面があると考える。
学習という作業は、読む・聞く・書く・話す、など五感を使った動作が多いので、身体で覚えるべき部分が多いという点。
一方、日本では高校入試や大学入試がペーパーテストなので、問題を読んで答案に書く、という試験そのものに対応した技術が必要である、という点。

読む・聞く・書く・話すを使った学習を訓練する時、前者と後者のどちらに比重をおく方が効果的なのか、という疑問はある。
個人的には、後者のペーパーテストの為の訓練は不要と思うが、結果的にそれに適合しすぎた人達を生んでいる事象も多いのだろう。

また、プログラミングも不自然な行為、という指摘は同様に思う。
新しいプログラミング言語を覚えて習得していく時、今までとは違った頭の使い方を要求させられる。
AWSやアジャイル開発など新しい技術を習得していく時も同様。

周囲を見ていても、プログラミングの習得が早い人とそうでない人には、雲泥の差があると実感する。
「プログラミングのできる羊とできない山羊を区別する方法」の記事のリンク: プログラマの思索の通り、プログラミング能力は、読み書き以上に、その人の向き不向きが現れやすいのかな、と思う。
プログラマの能力や生産性は10~100倍以上の差が出る、という点は、そういう所に原因があるのかもしれない。

【3】タブレット教育、アクティブ・ラーニングは高度な能力を必要とする

(引用開始)
6 一人一台タブレット政策。小学校からのタブレット導入については、どうでしょうか。

①これは、もう終わりだな、と。特に小学生は絶対タブレットは良くないと私は確信しています。
②先進的に導入した私立学校や家庭で既に弊害が出ています。小学校からタブレットドリルで学ぶと、紙や長文にはもう戻れないのです。意外なことですけど、検索すら自分ではできない生徒が出てくる。学びが常に“消費的”になるのでしょう。けれども、大学や社会で求められる学びは“生産的”な学びなので、タブレットドリルで育った子は立ち直れないほど挫折してしまう。
③タブレット導入で今まで7時間かかっていた授業が2時間で終わり、残りは深く考える授業に当てるというような授業は、麹町中学校のようなある意味「特殊な環境」の学校だけでできることだと思います。それが本当に地方でもできるのかも検証せずに、タブレットという言葉が一人歩きしています。
④しかもローマ字入力ができるのは、小学校5,6年生なので、それまでキーボードは使えません。その間、一体何をやるのでしょう。
(引用終了)

(引用開始)
②日本の公教育以外で格差をなくす平和的な方法はないと思っています。
ちなみに、アクティブ・ラーニングは格差を広げてしまいます。それは戦後最初のアメリカ主導の学習指導要領である、ディーイ式の「生活単元学習」の失敗で明らかになっています。
③小学生のうちは比較的ワイワイやっていますが、中学生になると、出来る子が言ったことに他の子は追随します。だから、授業を全てディスカッションでやることは、現場を見ていない人の寝言に過ぎない。
(引用終了)

昨今流行しているタブレット教育、アクティブ・ラーニング教育を批判する理由が参考になる。
著者の方はおそらく、現場経験が豊富で、数多くの失敗事例も見ているのだろう。

現状では感染症の流行が終わらない限り、オフライン教育は無理でオンライン教育にシフトせざるを得ないだろう。
しかし、そういう指摘の元で、今後のオンライン教育を考えると、子供の成熟度に見合ったオンライン教育の方法を見つけないと、教育を受けられなかった世代や就職できなかった世代を大量に生み出してしまう事になる。
今後、試行錯誤しながらオンライン教育の可能性を探っているしかないのだろう。

残念なことに、日本では、教育現場が最もIT技術が遅れた場所であり、知識だけでなく環境も揃っていないので、数多くのハードルが高いのかもしれない。

【3】オンライン教育の手法は、実は、以前からMOOCなど反転教育の概念で知られていた。
具体的には、自宅でオンラインで講義を受けた後、学校で対面で先生に質疑応答して疑問点を解決していく、というやり方。

サルマン・カーン「ビデオによる教育の再発明」 - YouTube

『世界はひとつの教室』技術、教育、そして世界は動く - HONZ

教育学は人工知能の研究者によるデータ主導で置き換えられつつある: プログラマの思索

知的誠実さの大切さ~Moodleが持つ教育のイノベーションの可能性: プログラマの思索

サルマン・カーンのYoutubeの説明を見た時に、講義の動画配信、子どもたちのテスト結果の採点・集計・分析・フィードバック・理解度確認などのシステム基盤などITを駆使しながらも、「技術を使って、本来の教育をヒューマナイズする(humaizeする)」という彼の言葉がすごく引っかかった。
IT技術を使うことで人的関係を効率化させて、人的介入を減らすのではなく、逆に、コミュニケーションや対面のやり取りの密度や濃度を上げていくのだ、という意見が半常識的に感じたからだ。

おそらく、こういう取り組みも現場で試行錯誤しながら、時間をかけてあるべき姿を探っていくしかないのだろう。

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2020/04/12

行動経済学の面白さを紹介する記事のリンク

行動経済学の記事を読んで、チームビルディングやプロジェクト運営に行動経済学の知見を活用できると面白いだろうな、と思った。
ラフなメモ書き。

【参考】
わずか15年で3件ものノーベル賞を出した「行動経済学」の知見が、仕事の役に立ちすぎる件。 | 識学式リータ゛ーシッフ゜塾

マーケティング活動に活かせる行動経済学の基礎知識5選 | PINTO!

統計学の考え方に関する感想: プログラマの思索

IT企業が経済学者を雇い始めた理由が面白い: プログラマの思索

データ分析の課題はどこにあるのか: プログラマの思索

データ分析の面白さはどこにあるのか: プログラマの思索

【1】上記の記事には下記の例がある。

1.上司への悪い報告は、良い報告とセットで。かつ悪い話は先にせよ。

「終わり良ければ全て良し」のような経験則が人には染み込んでいるので、その先入観を活かす。

2.人材育成は「褒めても叱っても同じ」

(引用開始)
実際は、単に結果がランダムであり、「極端に悪かったら、次回はすこしマシになる」「極端によかったら、次は当然悪くなる」という現象が起きていただけだ。
(引用終了)

そう簡単に人材育成はできない。

3.昇給はできるだけ小刻みに。できる社員にはカネでなく「地位」を。

(引用開始)
具体的に言えば、年収400万円の人が、年収600万円となったとしても、それはたった4年で「慣れて」しまう。
要は「思い切って給料を上げて、従業員を幸福にする」のはコストパフォーマンスが悪い。
(引用終了)

社員への報いは、お金よりも地位を与えた方がコスト面で良い、ということか。

4.成功企業を検証して法則を導こうとする行為は無意味

過去の成功事例は、「ハロー効果と後知恵バイアス」を起こしやすい。

(引用開始)
これは、人間は「うまくいっている企業には、必ずなにか合理的な理由があるはずだ」と思い込んでしまうためによる。
だが実際、データが証明しているのはそれと真逆の結果だ。
分析から導き出した法則の多くは普遍性、再現性がない。「その時」「たまたま」うまく行ったことがほとんどなのだ。
(引用終了)

5.「わかりやすい」だけで、「知的だ」「信頼できる」と認識される

(引用開始)
これは人間の脳が「認知に関しての負荷が低いほど、好ましいと感じる傾向」を有しているいことに由来する。
(引用終了)

プレゼンではこのテクニックをうまく活用すべき。

【2】心理学の知見を使って、人間の言動が人事制度やチーム運営、経営などにどのような影響を与えるのか、を研究して、その経験則を生み出すのは面白い。
こういう行動経済学の学問は、昨今は、従来からの統計学の理論とコンピューティングパワーの強化によってすごく研究しやすくなったのだろうと思う。

【3】個人的には、チームビルディングやプロジェクト運営に行動経済学の知見を活用できないか、と思う。
プロジェクトリーダーがどのような言葉遣いや行動を行えば、チームをまとめて、プロジェクト運営をスムーズに行えるのか?
プロジェクトリーダーはどのような言動を行えば、リーダーシップをより一層発揮できるのか?

ソフトウェア行動経済学のようなものがあっても面白いだろうと思う。

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